浅瀬でぱちゃぱちゃ日和

全部日記です。大学院でいろいろやってました。今もなんだかんだ大学にいます。

夏油の気持ちがわかり始めるこの8月:新書『大学職員のリアル』読みました

ぅも!! 夏が名目上の終わりに近づく今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。名目上は、もう明日から秋ですよ、名目上は!! まだまだ暑い日が続きますので、色んなことに気をつけながら生きていきましょう。特に電気代とか。電気代とかな......

 

8月が終わりますね!! 皆さん!!

 

あっというまでございました、、、 僕としては地味に、人生史上初「夏休みのない8月」でした。そしてこれからも、二度と夏休みはないのだと思うと、なんだか感慨深いですね。

かつてRADWIMPS野田洋次郎は「君のいない世界など、夏休みのない8月のよう」と歌いましたが、これからの僕は、野田洋次郎の言うところの「君のいない世界」を生き続けることになるんだなと思います。まあ、だいたいみんなそうだけどな。この歌詞だと、続けて「君のいない世界など、笑うことのないサンタのよう」と歌ってますが、笑わないサンタはそれはそれで面白そうな。ジャンプ+の読み切りでありそうですよね、『笑わないサンタ』。

そんなDoでもいい話は置いといて。今日は「今月の振り返り記事」となります。夏休みのないこの8月、僕が何をやっていたかというと、やはり「お仕事」ということになります。あとちょっと読書もした。今日はそういったことを振り返ります。

で、今回は、最近読んだ本の感想紹介と、当月の振り返りを、もう一緒にやってしまうことにしました。どっちもお仕事の話になるので、まとめたほうがよいかなと。そんなわけで今日は、初の試みとなりますが、読書感想&近況報告です。どうぞお付き合いいただけますと幸いです。。

 

*最近もう「月末の振り返りぐらいでしかブログ更新してなくないか?」というご指摘も、あるかと、存じますが、逆に、考えてみてください。毎月一回は必ずこのように更新を行っている、その継続力こそが称賛に値する美徳なのだと。そういうことにしてください(ネタ切れ気味なんです)。

 

夏油の気持ちが分かり始めるこの頃

中公新書ラクレ『大学職員のリアル』読みました。

倉部史記・若林杏樹『大学職員のリアル 18歳人口激減で「人気職」はどうなる?』(2023,中公新書ラクレ)

最初に読書感想から。『大学職員のリアル』。こちら、今年の7月に出た新書となります。本屋に行ったら平積みされていました。まあ、読むわなという感じで、8月中旬はこの本を読んだりしていました。

皆さん、大学職員という仕事、どんなものか気になりますか? 大学の外部にいる人からすれば「なんかホワイトと聞くけどどうなん?」という感じかもしれないし、大学の内部にいる人からすれば、あのポンコツどもの生態はどうなっているんだ事務職員の皆様方は一体どのように働いているのだろう? という感じかもしれません。実際、大学職員は就職・転職市場では結構人気らしく、年々志望者も増えているのだとか。僕も大学職員として働いているわけですが、就活をしているときにはまあ「人気なんだなあ」と実感したこともあります。

で、そんな人気職になりつつある大学職員、どんなイメージを持たれているかというと、キーワードは次の3つです。すなわち、「楽で」「安定していて」「高収入」。こう言われているからこそ、就職市場で人気になったりしている、というのが著者の見方で、僕も同じようなことは感じています。ただ、果たしてそれは本当なのか? むしろ、そういう誤ったイメージが先行しているせいで、不幸になっている人もいるのではないか? というのが、本書『大学職員のリアル』の切り口になっています。

実際、ウェブやSNSなどを見ていても、大学職員は一部で関心を集めているようです。

「大学職員は40代 で年収1000万円以上」

「夏休みは3週間以上」

「残業もなく、ボーナスは〇〇万円以上」

といったことを紹介するブログ記事などが少なからず存在しますし、それらがアクセスを集めている様子も伺えます。「楽で稼げる仕事ランキング:といったテーマの記事で、上位に大学職員が挙げられている例もありました。本書を手に取ってくださった現役大学職員の皆さんの中には、いま「そんなわけあるか」と思った方も少なくないはずです。(本書p17、強調は引用者)

僕ももちろん、「そんなわけねえだろ」と思った人間の一人です。ただ実際、こういうことを喧伝するブログは存在していて、だいたい、「民間企業で社畜ライフを送っていた俺、大学職員に転職したらまさに天国だった」的なブログが多いです(なろう系のタイトルか?)。この記事とか、「大学職員は誰でも年収1000万」ということがマジに書かれていますからね。こういうブログは、本書でも指摘されている通り、ESの添削を請け負ったり、転職サイトへの誘導を行ったりと、就職市場と絡めて何らかのお金を稼ごうとしているのが特徴です(金儲けが悪いわけではないが、その分、真偽の怪しい情報で釣る傾向が強いので注意) 

で、最初に挙げたキーワード、「楽で」「安定していて」「高収入」ということについて、これは必ずしも正しくないよということを伝えています。「楽」かどうかについては、大学や部署によってまちまちだし、一部の大学ではトップが独裁化して大変なことになっているところもあります。あと、職員と違う論理で動いている”教授陣”との調整を行わなきゃという大変さもある。

「安定している」ということについても、18最人口が減り続ける中、多くの大学が入学者の募集停止や経営統合に走っているし、日本の研究力も落ちる一方(国からのお金も減り続けている)。かつ、年収についても、今の大学はどこも人件費の削減に熱心で、たとえ年収1000万の例があったとしても、それが「誰でも」ということはありえないし、かつ、20年後の状況は全く違ったものになっているだろうということが言われています(p183-184など)

「楽」「安定」「高収入」ということについて、まだまだ働きはじめて5ヶ月のPayPayの私めから実感を申し上げますと、「楽」というのは確かにそうかもなとは思います。例として残業時間を挙げると、僕自身の平均がだいたい月10~20時間(今月は12時間だった)。ただ、周りの同期6人に聞いたところ、全くの0時間が3人、5時間以内が3人でした。新入職員ということを考慮しても、一般的な民間企業に比べて、だいぶ少なめなんじゃないかな〜と思います。10時間ちょいの僕が「多い」と言われるぐらいなので。

「安定」ということについても、自分のところは国立なので、まあ安定はしてるかな? という感じ。たとえ日本の大学が一つずつ滅んでいくとしても、割と最後の方まで残っているのではないかと思います。ただ、これは完全に大学に依るので、自分の経験を最も一般化しにくいところですね。

で、最後、年収1000万ということについてですが、正直な話、自分が1000万プレイヤーになる未来は1mmも見えないです。この前もTwitter(Xか)で、京大教授の年収が1000万行かないということが話題になっていましたが、教授で行かないのにいわんや事務職員をや、ですよ。学長とか理事になればそれは話は別だろうけど、ああいうのは大学職員というより多くは文科省からの出向勢なので、自分とはあんまり関わりのない話だなあと思ってます。

そんなわけで、この頃大学職員が注目を集める理由「楽」「安定」「高収入」ということについて、「楽」以外は必ずしもそうではないかな〜〜という見方をしていますが(楽なのも今だけかもしれんけども)、じゃあ逆に、真の魅力はどこなのか? というところですよね。大学職員として働くことの、どこがよいのか。

そこはやはり、大学という場に関われることだと、個人的には思っています。本書でも、そのようなことは言われていて、「教育を支援できること」をやりがいとして挙げている人は多いとのことでした。次の一節は印象的です。

大学を取り巻く社会状況はこの20年で一変しました。職員の仕事やキャリアのあり方も、20年前と同じではなくなってきました。「大学職員は楽で高給」といった、20年前を前提としたような話を鵜呑みにしてしまうと辛い思いをするかもしれません。でも「20年後の大学」で働きたいと思える方なら、職員人生を楽しめるはずです。(p194、太字引用者)

20年後の大学で働きたいか、、、これは結構いい言い回しですよね。僕はまだ働き始めて5ヶ月だけども、この「大学で働けている」という事実に助けられている部分は大きいです。図書館とか自由に使えるし、研究の支援みたいなこともできているし。そういうところは、この仕事のやりがいを感じる部分というか、明確にメリットだと思えるところです。

 

夏油の気持ちがわかるこの頃

で、ここまでは前フリと言いますか、こんな綺麗事を言いたくてブログを書いているわけではないんですよ。この頃は、ある種「大学職員ならでは」の悩みも感じています。「決して楽ではない」とか「安定しているとは限らない」とか、そういう類の不満ではなくて、もう少しあるある系の不満です。

話は変わりますが、皆さん、呪術廻戦はチェックしていますか? この頃、アニメの2期もやっていましたね。

jujutsukaisen.jp

僕は基本漫画派ですが、映像が綺麗とのことでアニメも少しチェックしていました。で、そこで、漫画のときにはスルーしてたけど、改めて見ると印象に残った話があります。29話「玉折」の、夏油と九十九由基の会話です。

一応、呪術廻戦を知らないよ、という方に向けて説明しますと、呪術廻戦は呪霊という化物に、呪術師と呼ばれる者たちが対抗していく物語になります。呪霊は、人間の負の感情(呪力)から生まれます。呪術師は、逆にこの呪力を使って、呪霊と戦っていくわけです。

で、このアニメ29話では、呪霊発生のメカニズムについて、ある事実が明かされます。それすなわち、呪術師から呪霊は生まれないということ。そもそも呪霊は、人々の呪力が漏れ出した結果生まれるものだが、呪術師は、自らの呪力をコントロールできます(だから戦える)。ので、呪術師は呪力が漏れ出すこともなく、よって呪霊も生み出さないとなります。

図にすると次のようになります。

暇なので作った。

この話で示唆されるのは、全員が呪術師になれば、そもそも呪霊は生まれない、ということです。呪術師はパンピー(非術師)を守るために戦いますが、当の敵(呪霊)を生み出しているのは、実はパンピーたちであるという事実。じゃあもう、最初からパンピーたちがいなくなれば、呪術師も誰かを守るために戦うこともなくなるんじゃね?(そもそも敵が生み出されない)というのが、夏油くんの気付きでした。

力のある者が、力のない者たちによって生み出されたものから、当の力のない者を守るために命を賭して頑張らなければならないという、そのしんどさがテーマになっていると思います。

これがですね、この頃ですね、僕も仕事で実感していることとなります。まあほんと、例を出すとExcelなんですが、Excelを使えない者によって生み出された業務(呪霊)を、Excelを使える者が処理し続けるという、そういうところはあるように思っています。

ここでもう一度、『大学職員のリアル』に戻るんですが、本書でも、大学職員はとにかく「ザ・お役所仕事」であることが指摘されています。典型的な縦割りで、色んなことが変えづらく、何をするにも「前例があるか」「該当する規定があるか」が重視され、かつ、「事なかれ主義」「出る杭は打つべし」系な職員が多いことが指摘されています。

例として、本書で書かれていることをいくつか引用すると、

  • 自分の仕事を増やすことを極端に嫌う職員が少なくない(p31)
  • 問題解決しようという姿勢を持つ職員が極めて少なく、事なかれ主義、減点主義の組織風土(p118)
  • 学生のためを考えた結果として、マニュアル化されていない対応や、慣習として引き継がれてきたこと以上の支援を学生に行ったという職員は多くの大学にいます。そのとき、「前例から外れる対応はダメ」と上司や同僚に注意されたり、「あいつは困った奴だ」という評判が部署内で広まったり、さらには人事評価で他より低い評価を受けたりする例が残念ながら存在するようです(p102)

このあたりは、まだ働き始めの新米の僕でも、分かる〜〜という感じです。とにかく、前例を変えられない。何かを変えようとすることが「仕事を増やす」ことだと直観的に判断されて、猛反発を喰らう。マニュアルにないことは一切通らない...... そんな空気は常々感じています。

これもね、若造がいきなり大胆な提案をしたとかなら分かるんですけど、そうではないことも実感としては多いです。身近な例で言うと、部署内にタスクを管理するためのスケジュール表があって、それがExcelで作られているわけですが、それがですね、A列に「月」を入れて、B列に「日」を入れて、C列に「曜日」を入れるような形で、カレンダーが作られているのです。だから、8/31(金)を示すところは、A列に8、B列に31、C列に金と書かれているわけです。そんなExcelの使い方があるか????

で、Excelのマクロなり、Power Automateで自動化を試みようとする人からすれば、この形式は非常にやりづらいわけです。素直に、A列に日付表式で表示してほしいと思う。ただ、ただですね、この形式を変えることができない...... 視覚的にわかりやすい(?)からなのか、ずっとこうしてきたからなのか、誰も「変更する」というリスクを背負いたくないからかは分からないけれど、こういうちょっとしたことですら、本当に変更するのが難しいです。

その結果として何が起こるかと言えば、呪術廻戦と似ていると思います。呪術廻戦で起こっているのは、呪力を持たない者により、呪霊が生み出され、呪力をコントロールできる者がそれに対処する、という事態。かつ、全員が呪力をコントロールできれば、そもそも呪霊なんて生まれない、ということです。全員がExcelを使えれば、そもそもこんな業務は生まれないのに、Excelを使える者がその対処にかかりっきりになっている....... こんなことを最近、実感することが多いわけですね。

僕は下っ端なので、面倒な作業を任されることが多いですが、「せめてもうちょっと、皆がExcelのスタンダードを身につけてくれれば、こんな作業自体生まれないのに.......」と思うことが、無きにしも非ず、、、という話でした。

 

 

愚痴ばっかりですみません。

 

まだまだ夏油の如く「結論、猿は嫌い」とは至っておりませんが...... 「夏油もこんな風に考えたことがあったのかな?」と思わなくもないこの頃でした。ただ当然、危険思想ですからね、この考え方!! 五条くんに殺されたくなかったら悔い改めましょう。最後に、最後に一つだけ言うと、「削除する、書き換える、この繰り返し。皆は知らない、この作業の虚しさ。吐瀉物を処理した雑巾に嘔吐するような...... 誰のために」というのは、この頃頭をよぎるセリフです。

そんな感じです。

今日はこの頃の、仕事への不満を口にする回となってしまいました。マジで申し訳ありません。呪力はお前からこそ漏れ出てるぞって話ですよね。

ただ同時に、呪術廻戦って、結構現代人が陥りがちな病も扱っているんだな〜〜と関心もしました。僕は単行本派ですが、最近も結構面白いです。 皆さんも読んでみてはいかがでしょうか。

近況報告については以上です。これからも、闇オチしない程度に頑張っていきたいと思いますので、応援よろしくお願いします。

(ちなみに、『大学職員のリアル』は大変面白かったので、現大学職員の方、大学職員を目指している方、ぜひ読んでみてください)。

 

 

今月のプレイリスト!!

毎月恒例、今月のプレイリストのコーナーです。つまり皆さん、もうブラウザバックしてよいということですね!! ここは毎回、僕が僕自身のためにやっているコーナーなので。

今月、僕が聴いて「よいな〜」と思った曲たちを紹介します。

 

 

8月は全13曲です。ちなみに、このサムネの写真、めっちゃよくないですか? 入道雲が2つ並んでいて、まさに「夏」って感じですね!!

 

よくない?

今月聴いた中でよかったのは、断トツで、ClairoAmoebaとなります。


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ちなみに、これは完全にマンスプレイニングですが、Amoebaの読み方は「アメーバ」ですよ!!  アメーバピグが「Ameba」表記なせいで一瞬わからなくなりますね。

 

ちなみに、Amoeba繋がりで言うと、The Doozersの「Amoeba」もいい感じの曲なので、ぜひ聴いてみてください。ドライブの時に聴きたくなりますよ(前にも紹介したことがあったかも)


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以上!!

 

今日は重ね重ね、愚痴が多くなってしまって本当にすみません...... そういう日もあるよね? ということで、お許しいただけますと幸いです。

あと!! 7月の振り返りの時に、8月は「ゆっくり動画を出す」ことを示唆していましたが、あれは嘘になりました!! すみません。最近ね、『ファスト教養』という新書も読んでいて、ああいう動画を出すこと自体どうなんだろうな〜〜とか考えている次第です。まあ、その話題はまた今度ということで。

 

この頃は、更新自体が少なく、また話題も「大学職員ライフ」に偏っていること、大変申し訳なく思います。本当にすみません。ただ、これからも、自分の興味を積極的に発信していきますので、ぜひ見守っていただけますと幸いです。闇オチしたらちゃんと止めてください。よろしくお願いします〜〜。

 

 

 

 

7月の仕事と読書の報告:皆さん、夢を抱いて生きていますか?

も!! 脳みそとろけるような暑さが続いておりますが、皆さま変わらずお元気でしょうか。暑すぎますね!! ただ、この暑さはもはや異常気象ではなく、むしろこれからの「スタンダード気象」になるんだという話を、方々で目にしております。マジか?? 地球、どうなるんだ。終末の日が近いのか。

この例外的な暑さを異常だと思うのは簡単だが、絶望的なことに、気候変動の結果、記録を更新するような高気温が普通になっているのが真実だ。

そんな今日は、毎月恒例、当月の振り返りとなります。7月、僕らは酷暑に文句を言いながら、自分は一体何を成したというのだろうか....... そんなことを振り返ります。

ちなみに、特に近況に変わりがないので、正直あんまり書くことがないです。仕事の話や読書の感想を語りつつ、あとは今月のプレイリストを紹介するぐらいですね。そんなに気合い入れて書いてないので、暇な時にサクッと付き合っていただければ幸いです。

 

仕事について 〜皆さんの心に夢はありますか?〜

まずは仕事の話。僕は働き始めて4ヶ月となりましたが、相変わらず、大学職員としてぼちぼちやっております。とはいえ「大学職員としてぼちぼち」というのがどういう状況なのか、一般読者の皆さんにはよくわからないはずなので、いずれその辺も詳しく書いてみたいですね。でも、職場にバレるのが怖いから多分やらないな。

今月の仕事の近況についてですが、テーマは”夢”となります。

先月も少し書きましたが、7月現在、仕事のやり方を覚えるという段階は過ぎ去ったように思います。どちらかというと今月からは、「新しいことも試してみる」というフェーズに入っておりました。例えば、マクロを作って作業効率化を図ったり、Power Automateを使って業務の自動化を進めたりとかですね(Power Automateとは?)。先月までは、仕事中に暇な時間ができたら、経理の仕事なので)会計規則を読んだりしていました。が、今月はその時間を使って、自動化ツールの開発を進めていた感じです。伝票起票の自動化プログラムを書いていたりだとか。こう書くとなんかすげえ奴に聞こなくもないけど、実際は初めて触るツールとじゃれていただけです。半分遊んでいたと言っても過言ではない。

で、少し話は変わりますが、最近はお仕事をする上で、多少思うところも出てきています。というのもですね、皆さん、ちょっとお尋ねしたいのですが、あなたの心の真ん中に"夢"ってありますか? いきなり何なんだという話ですが、近頃思うのは、やっぱり人間、なんだかんだ言っても、「夢」を抱くのは大事なんじゃないかということです。

なぜそんなことを考えているのかといえば、さっきの自動化の話が関わってきます。自動化のツール、作ったところで、ぶっちゃけ「効率化」という観点では微妙なんですよね。まず、自分の異動のサイクルが2~3年なので、ツールを開発したところで、使える期間が割と短いというのがあります。一生懸命作っても、何年も使うわけではなし。あと、ツールを安定して動かすためにはそれなりに試行錯誤の時間が必要なので、トータルで見ると、そこまで「効率化」されてないのでは? と思ったりします。半分ツールで遊んでるだけの時間もあるしな

もうひとつ、今の自分の自動化作業は、あくまで現行のシステムに合わせて作っているというのがあります。ただ、実はこのシステムがちょくちょく変更したりする。大学のポータルって、なんかデザインが変わったり他のシステムに置き換えられたりしませんでしたか? あれと同じです。元のシステムが変わったら、それに合わせてツールも変えなきゃならないので、メンテナンスの手間も多く、やっぱりそれほど効率化になってないんじゃないかと思ったりします。

で、じゃあ、自動化の意味って何なの? という話になりますが、僕はそこで、ツールを色々触ったりすることが、それ自体、自己研鑽・自己投資の意味合いを持つのだ、ということは言えそうに感じてます。マクロを様々試してみたり、新しいツールに触ってみたりというのが、業務の効率化という以上に、自分のスキルアップ(ITツールへの精通)につながっているのだと。一見遊んでいるように見える時間も、そういう意味では無駄ではないように思います。実際、そのおかげで、以前よりも自動化作業については詳しくなりました。「自己投資」という言葉は正直あんまり好きじゃないけど、この側面は確実にあるはず。

そうなるとですね、次なる問題も出てきます。その問題とは、じゃあ結局、そういう自己研鑽なるものをして、自分は一体どういう人間になりたいのか? ということです。「君たちはどう生きるか」(大ヒット上映中)。仕事で色々試していることが、実際はそんなに作業能率を上げておらず、最終的には自己研鑽や自己投資という意味合いのものに落ち着くとするならば、ですよ。そのときの問題は、「じゃあそういう自己研鑽を積んで、自分は何になろうとしているの?」ということだと思います。もっと言えば、俺の心に宿っている"夢"ってなんだ? という話になると思います。え? ならない? ならないかもしれないですね。

そういうことを最近は感じていて、何か長期的な夢や目標を持っていないと、「今していることが何になるのか」とかが、よくわからなくなるんですよね。これはまあ、新卒なら誰しも思うことかもしれません。そんなわけで、この頃は「自分はどうなりたいか」というのを考えております。

今のところの結論は、自分の関わる領域で、しっかり誰かを支えられる人間になる..... というところでしょうかね。「誰かを幸せに」とまでは行かなくとも、「誰かの支えになる」ということぐらいは、しっかり強い意志と力量を持って実現したいところです。僕は特に、研究支援系のところに興味があるので、そういうところで「誰かをしっかり支えられるようになる」というのが、当分の夢というか目標です(あと、単著を出すという夢もある)

で!! ここからが本題ならぬ副題ですが、やっぱりですね、夢の話、しづらい!! 当たり前か! 特に、当職場では、よほどのことがない限り「俺の心には、夢が宿っていてね......」という話はできないです。

その理由として、なんというか、未知の力が働いているのがあります。その名も「志を低く持とう同盟の力」と言いますか、何らかの「下に引っ張る力」が働いているように感じます。

一例を挙げると、英語能力ですね。僕の職場ではよくある光景なんですが、例えば英語を話せる人間がいたら、その人をやたら持ち上げるというのがあります。「英語話せるの!? すごーい!」「私には絶対無理」「だよねー」「英語のことは全部あなたがやって!」「なぜなら私たちには、英語を話すなんて絶対無理だから」という具合に、できない者同士で徒党を組んで、できる人間から最大限距離を置こうとするあれですね。こういった光景、皆さんは見覚えないでしょうか....... 決して「あなたはできるんだ、じゃあ私も頑張る!!」とはならず、むしろできない者同士を見つけてきて、そこで同盟を組むことで自身の停滞を維持するような、あの感じです。これを僕は勝手に「志を低く持とう同盟」と呼んでいます(が、もうちょっとちゃんとした通称がありそうな気はします)

この同盟による力が、現在の僕の日常では、だいぶ強いように感じます!! 大学院にいた頃は、こういうのはほとんど感じられず、むしろ「志を高く持とう同盟」の方々が多かったです。あの人はあんなにできてる、自分ももっとやらなきゃ...... という感じですね。あれはあれでね、自分の弱さや能力の低さと向き合わねばならんので、大変なところはあるんですが、ある種健全ではあるように思います。淀みに留まろうとするなかれの精神ですね。

今の周りの環境では、英語にしろ自動化にしろ夢を持つことにしろ、何かしら意識高そうなことをやっていると、急激に距離を置かれるのが若干あれですね。もっとこう、一緒に頑張れるような「ライバル」的なものが、正直欲しいなとは思っています(そういう競争がないところが職場の魅力というのも、勿論分かるのですが......)

そんなわけで、7月の仕事の振り返りは、夢を持つことの意義と、その夢を語ることの難しさについてでした。夢については、近頃よく考えているけど、それを話せる相手がいないのがやはり寂しいですね。だから、皆さんも是非、心に夢を持ってみてください。心に、でいいですからね。別にTwitterのプロフィールに書いたりしなくていいんですよ!

仕事の振り返りについては、こんな感じになります。次は7月に読んだ本を簡単に紹介します。

 

 

7月、読んだ本たち

6月の振り返り記事では、7月の目標として本を3冊読み切るというのを掲げていました。実際のところは、1冊はしっかり読み切り、1冊は途中で読むのをやめて、もう1冊はかつて読みかけだったのを読み切った、という感じになります。全然目標達成できてないですね。どんな本を手に取っていたか、紹介していきます。

1.村上靖彦『客観性の落とし穴』(2023,ちくまプリマー新書

1冊目は、村上靖彦『客観性の落とし穴』。今年の6月に出た本です。安定のちくまプリマー新書。「とりあえず流行ってる新書を読んでおきたい」というときには、内容が軽めなので手に取るようにしています。

こちらはですね、途中まで読んで「うーーーーーーーーーん」となって挫折してしまった1冊です。客観性ばかり重視する現代の風潮を批判する、という感じなんですが、ちょっと肌に合いませんでした。

一般的に考えれば、主観に対する「客観」てかなり大事だと思うんですよね。裁判が主観ばっかりで行われてたら、当然誤判や冤罪だらけになるだろうし、偏見や迷信や疑わしい信仰をそのまま押しつけかねない。ので、客観的なデータや証拠が必要だ、というのはかなり真っ当な議論だと思います。で、そこから始めて、「客観性の大事さは認めつつも、でも過度な信奉はよくないよね?」という風に話が展開されると思っておりました。

ただ実際は、客観性を重視することそのものについて、疑義を投げかけているように読めました。あんまり、我々が客観性を重視することの「良さ」を拾っていないというか。そんな感じで、客観性全体を批判していくわけですが、その議論の仕方があまり丁寧ではないというか、それこそ「客観的」ではないように思います。一箇所引用しておくと、学校や職場におけるリスクヘッジのルールを批判して、次のように述べているところがあります。

医療現場においてのみ、リスクが息苦しさをもたらすわけではない。学校や会社といった組織、そして社会全体は、リスクを予防するという視点でメンバーの行動を決め、行動を管理し、しばりつけようとする。「そんなことしたら危ないよ」という注意を子どもの頃に受けたことがない人は少ないだろう。学校の生活はさまざまな校則でしばられていることが多いが、これらは大人が外部からなにか非難を受けないために、生徒をあらかじめしばりつけるものである。子どものためと見せかけて、大人が自分の不安ゆえに子どもの行動を制限しようとしている。リスク計算は自分の身を守るために他者をしばりつけるものなのだ。

村上靖彦. 客観性の落とし穴 (ちくまプリマー新書) (pp.39-40). Kindle 版. 

「子どものためと見せかけて、大人が自分の不安故に子どもの行動を制限しようとしている」とまで言い切るぐらいなら、何かそういうことを示す客観的な証拠は、1つぐらい提示するべきだと思うんですが、どうでしょう? まあそれこそが客観性の落とし穴かもしれませんね、、、 そんな感じで、ちょっと論証の粗さが肌に合わず、挫折してしまった1冊でした。

 

2.関口正司『J・S・ミル ——自由を探求した思想家』(2023,中公新書

2冊目。こちらは読みきった本です。上記の村上本でミルが批判されていたので、逆に読んでみたくなりました。面白かったです。

中公新書ということもあり、ある程度は上級者向けに感じました。「ミルのことはそれなりに知っていて、『自由論』とかも読んだことがある人」がメインターゲットな気がします。そういう人からしたら、「こういうのが欲しかったんだよ、こういうのが」という感じかもしれません。

まあやっぱり、ミルは熱くていいですね!! この社会をよりよくしようと真剣に考え抜いたモラリストだったということが、本書を通じて伝わってきます。ミルの心には”夢”が宿っていますね。素晴らしいことだと思います。夢を持つことを肯定してくれています。

本書のネタバレ的になるので、明言するのは避けるんですが、一番最後の「ミルが死の間際に言ったセリフ」というのが、個人的に非常に感動的でした。僕もこんなセリフを放って死んでみたいものです。意外と、本書の他の部分がこのたった一行のためにあったという見方もできなくはないと思うので(さすがに無理か?)、そういうドラマ的に読むことも可能ではあると思います。

短いけど、本書についてはこんな感じ。細かいミルの思想解説パートについては、ちょっと難しいところも多いので割愛。僕としては本書は、ミルの”熱量”が感じられるというところで非常によかったです。

 

3.リック・アンダーソン著、宮入暢子訳『学術コミュニケーション入門:知っているようで知らない128の疑問』(2022,アドスリー)

3冊目はリック・アンダーソン『学術コミュニケーション入門:知っているようで知らない128の疑問』。こちら、昨年の10月に訳が出版された本で、ちらちらと読み続けていたのですが、ようやく読み切りました。前にもブログで紹介したことがあったかもしれません。

betweeeeeen.hateblo.jp

↑ここで紹介してた。

この本、今年読んだ本の中で一番面白かったです。学術出版や大学図書館、オープンアクセスなどの動きについて解説した1冊ですが、自分の関心がこういうところにあることもあり、大変興味深く読めました。内容的にも面白かったし、訳もすごく読みやすかったと思います。「なぜ研究者は論文を発表するのか?」「ジャーナルの”権威”とは何なのか?」「大学教授は印税で儲かっているのか?」「著作権侵害剽窃の違いは?」「電子化が進む中で、大学図書館が果たすべき役割とは?」といったトピックに、少しでも関心のある人なら、大変楽しく読めると思います。おすすめ!!

僕は前述の通り、大学職員をやっているわけですが、7月は「学術支援系の仕事をしたい人向けの研修」などがありました。そういう関心に合わせて、本書をこの期に読み切った感じです。学術支援というと、今ではURA(リサーチ・アドミニストレーター)というのが有名だったりするわけですが、結構なかなか、目指すには険しい道のりだなと感じました。現職の研究者(助教など)や何年も経験を積んだベテランがやっていたりするわけで、自分もそこに至るには、越えねばならぬハードルがたくさんあるなと。まあでも、それも「夢」の一つなので、そこに向かって頑張っていきたいなと思います。今日、夢の話ばっかだな!

本書については、結構トピックがたくさん分かれていて、そのどれもが面白かったので逆にかいつまんで紹介するのが難しいです。ただ、どの章も面白いということは、一冊通読しなくても楽しめるということで、是非今大学で研究とかやっている人には少しでも手に取ってみてほしいなと思いました。「論文を書く」「文献を探す」「図書館を使う」ということを通じて、自分たちがいったい何をやっているのか、実感しやすくなるのではないかと思います。なんかこの本、まだ全然有名じゃないみたいなので、もっと色んな人に読まれてよいように感じます。読むべし!!

 

本の紹介については、こんな感じです。手短ですみません。7月は実は、他にちょっといろいろやっていたので、読書の時間も少なめでした。何をやっていたかはまたいずれ紹介します。

 

 

君のプレイリストに僕を加えてよ 〜今月のプレイリスト紹介〜


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お待ちかね!! 毎月恒例、僕が7月に聴いてた曲の紹介です。7月はちょっと控えめですね。

サムネは、スタバで勉強していた時の写真。割と休日はスタバに行って勉強していたりします。偉いな!! このときは、試飲で新作のフラペチーノを出して貰ったりしていた(死ぬほど甘かった)

おすすめは、ひとつ挙げるなら、Summer Saltというバンドの「Campanita」でしょうか。インディー感が溢れていて、めちゃくちゃよいと思います。


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プレイリストの紹介は、以上。特筆することがあんまりなかったです。皆さんも是非、その月に聴いていた曲をまとめてみたりしてみてください。そして僕に紹介したりしなかったりしてください。僕も聴いたり聴かなかったりすると思います。

 

 

以上!!

今月の振り返りについては、こんな感じです。いかがでしたでしょうか。

毎月、「今月こそ、本当に書くことがないな」と思いながら書き始めていますが、終わってみると、意外と7000字近く書いていたりします。逆に長すぎるか?? 日々、いろんなことを思いながら生きているということかもしれません。それはとても素晴らしいことですよね。

7月は、本を3冊読み切るという目標を立てていたにも拘わらず、実際は全然でした。8月の目標は、このリベンジで、本を2冊読み切るとしたいと思います。それともうひとつ、8月については、やりきりたいことがあったりします。それはまあ、のちのお楽しみということで、、、 8月の目標は、本を2冊読むことと、「やる」ということになります。何をやるんでしょうか?? 今はまだ秘密ですよ!!

まだまだ猛暑の日々が続きますが、暑さに負けず、頑張っていきましょう。しかし、この暑さに人類が勝てるのか?? 地球を大切にしなければなりませんね......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

↑ 作ってます。8月、公開できたらいいなと思ってます(期待値は低めでお願いします)。

 

 

 

 

6月は、雨と自動化の季節...... :今月の振り返り!!

も!! じめじめと湿度の高い今日、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

梅雨、もうちょい続きそうですね。蒸し暑い日々が続いております。僕はといえば、職場に着ていく用の長ズボンを4着買うも、実際履いてみたら全部暑すぎてボツという日々を繰り返しています。皆、夏用の長ズボンどこで買ってるの?

 

あじさいが、きれいな季節だったな......

 

さて、そんな今日は、毎月恒例、当月の振り返り記事となります。6月の僕らは、雨に打たれ、空を見上げ、いったい何を想っただろうか..... そんな詩的なことは一切していないけれど、ともかく、この6月がどんなものであったかを振り返っていきます。最後には皆さんお楽しみ「今月のプレイリスト」もあるよ!!

 

仕事について

今月の振り返りと言うことで、まずは僕の仕事の話から振り返っていきます。働き始めて3ヶ月となりました。早いものですね。今月は、夏のボーナスもちょっとだけ出て、「お金が増えるって本当に幸せなことなんだな」と実感しております。世の中、何をするにも、お金がかかりすぎだ......

仕事の方は、だいぶ慣れてきたように思います。どれぐらい慣れてきたかというと、職場外(取引先)に連絡を取る際に、ccに一切、上司のアドレスを入れなくなってきました。4月、5月はまだ、ひとりでやるには不安だったので、何をするにも上司をccに入れていたけど、もうそういう段階ではなくなりました。それなりに1人で、仕事を進められております。ただこういうの、自分の職場以外の人の話を聞く機会が滅多にないので、どれぐらい「当たり前」のことか、よく分からないです。皆さん、ccに誰をぶち込んでいますか? ccマナーというのもあるらしいですが、全然全くよく分からないですね、、、

そんなわけで、最近は仕事にある程度慣れてきたので、ハマっていることがあります。それが自動化です。

 

自動化とchatGPT師匠

皆さん、chatGPT、使ってますか? これ本当に、世間のインチキ専門家の方々や偉大なるインフルエンサーの方々がおっしゃられているとおり、マジですごいですよ。本当に日々助けられています。

何がすごいのかといえば、Excelpowershellの使い方を、聞けば何でも解説してくれるところです(僕の職場はPythonのインストールができないので、powershellを使っている)。「こういうことがしたい」というのを尋ねると、瞬時にコードを書いてくれたり、やり方を解説してくれたりする。こういうの、知っている人からすれば「今更そんなことで騒いでるんの?」という感じかもしれないけど、でもこれ、本当に「なんでもやってくれる」んですよ。自分の知識がほぼゼロでも、やりたいことを伝えるだけで、その方法を教えてくれる。

例えば、あなたが大学院生だとして、次のような問題を抱えたとします。

 

まあぶっちゃけ、どっちでもいいとは思う。

こういうのは、一つ一つ手作業で直すのは大変です。

ので、こういうときこそchatGPT様にお願いしてみると、

 

すごくない??

chatGPTというと、お話を書かせたり漫才をさせたりが人気ですが、こういう単純作業こそ、シンプルに力を発揮するなとは思います。

で、これをお仕事で使う上で、何がよいかというと、、、 圧倒的なのは、全然分かってなくても質問していいということだと思います。これが本当に、シンプルながら最高の強みですね。

「分からないなら、人に尋ねろ」というのは、新人研修でもよく言われることで、それはその通りだと思います。聞かないままだったら、永遠に分からないままなので。ただ、同時に、こういうとき、「人に聞くなら、まずは自分で調べてから」とも言われます。何も知らないうちから、「こういうことってできないんですか〜?」と闇雲に尋ねるのは、失礼に当たるという話ですね。だから、実際に質問する段になると、いろんな遠慮が生まれます。

ただ!! そんな風に、上司に対しては遠慮して聞きづらいことも、chatGPT先生には遠慮なく尋ねることができるんですよ!! これが本当に、素晴らしいことだと思います。こっちが何一つ理解してなくても、怒られない。かつ、分かんなかったときに、100回聞き返しても、怒られない。毎回丁寧に解説してくれる。「こんな理想の上司いるか??」と思えるほど、6月にはお世話になった存在でした。

もちろん、質問できる事項は限られていて、主にExcel・Wordの使い方などです。ただ、そういう単純なものこそ、上司には尋ねづらく、自分でぽちぽちとやらざるを得なかったりするもので、何の遠慮も要らずに質問できるというのは、非常にありがたいです。かつ、回答の質も結構高い。本当に、僕は全くのパンピーながら、これはまさに「革命だ」と感じる日々です。皆さんも、どんどん日常に取り入れていくべきではないでしょうか。

ちなみに、仕事で使うもうひとつのメリットとして、暇な時間が増えるというものがあります。というのも、例えば一仕事終えて、ちょっと暇になったので、chatGPTさんに自動化のためのコードを依頼します。例えば、「メールの内容を自動でExcelに転記して、かつそこから作業フォルダを自動生成するマクロを作って」とか(これは実際に今日作ってもらった)。で、こういうのができると、次からの作業が早くなるので、また暇な時間が生まれます。その暇な時間で、また別の自動化マクロを作ってもらって、そこで生まれた時間でまた自動化をお願いして..... となると、ひたすらに好循環が生まれます。これがね、ハマるとね、気持ちいいのよ

そんなわけで、6月の僕は自動化にハマり、ひたすらchatGPTとお会話をしておりました。職場によっては、chatGPTがNGのところもあるらしいので、誰もができるというわけではないけれど...... ただ、本当に日々の作業を助けてくれる、実に素晴らしい存在だなと思いました。

 

読書!!

6月に読んだ本を紹介します。漫画も読んだよ。

源川真希『東京史 ——七つのテーマで巨大都市を読み解く』(2023,ちくま新書)

こちらの新書、読み終わりました。東京の歴史について、いろいろな角度から読み解いた本です。こちら、大変面白かったです。読んでるときは、そんなに「おもしれ〜〜」という感覚はなかったけれど、読み終わってから東京のあちこちに行ってみると、「あれって東京史に書いてあったやつじゃん!!」となります。進研ゼミと同じ使い方ですね。そこが本当に、きょーよーが深まって面白い。

内容の紹介については、今回は割愛します。ただ、東京に身近に触れている人でないと、「なんのこっちゃ」となりそうな内容も多いので、東京に住み始めたぞ〜〜という人にこそおすすめかもしれません。

 

 

久保憂希也『経理以外の人のための日本一優しくて使える会計の本』(2010,ディスカヴァー・トゥエンティワン)

こちら、アマプラ会員なら無料で読める本。僕が財務の仕事をしている都合上、ここ最近は会計系の本を読んでいることが多いのですが、大抵どれも難しくて、第2章ぐらいで挫折してしまっております。ただ、↑の本は結構分かりやすくて、今まで読んだ中では一番読み進められています。

会計とか経理とか、自分が仕事で関わるまでは何の興味もなかったけど、結構奥が深くて面白いなと思います。何が面白いのかと言えば、人間の経済活動って、複雑すぎて本当にカオスの極みなんですよね。誰々から○○円借りて、他の人からも××円借りて、最後には□□円にして返さないとだが、その前に△△円売り上げたからひとまずはよくて、でもそのお金が振り込まれるのは◆◆日後だから...... というのが何重にも何重にも重なって、本当に訳がわからなくなりがちです。お金のやり取りは、実態がなくて訳分からん。

で、会計というのは、その複雑さを縮減する試みなのだなと思いました。本来なら訳がわからないものを、「数字」という理解可能な存在に置き換える。何が何でも置き換える。そこが醍醐味なように感じます。ぶっちゃけ、そこには色んな技術・技巧が関与していて、素人には到底理解できないのだけれど、ただ「カオスをコスモに戻そう」というその心意気は、なんかよいなと感じます。

↑の本は、諸々の難しい話を抜きにして、まずは基本を押さえようという感じなので、僕でも理解できるところが多かったです。しかもアマプラ会員だから無料という。「これから会計の世界に興味を持ってみたい」という方は、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

 

漫画

吉沢潤一『アタックシンドローム類』(2022,ビッグコミックス)

個人的に、今かなり熱い漫画です。2巻までしか出てないけど、めちゃくちゃ面白い。「なんかテキトーに、Kindleとかで漫画買って読みたいんだよね〜」というときにおすすめです。

令和ニッポン“孤独のファイトクラブという煽りが付いているけれど、まさにそんな感じで、暴力に生きる男の話ですね。ファイトクラブ同様、現実にむしゃくしゃしていて、その捌け口として、暴力があるという感じです。ただ、ファイトクラブとは違い、主人公は結構過酷な環境にいるので、そこが「令和ニッポン」的だなと思いました。

この瞬間だけは全てをわすれられる...

この瞬間だけは不浄のない命の姿なんだ...

って言いながら、現実に苦しむ青年が拳を振るってくるんですよ...... マジで最高なので、現状とても好きな漫画です。

 

big-3.tameshiyo.me

↑第一話がここから読めます。

 

読んだ本については、大体こんな感じです。会計の本ばかり読みがちだったので、あんまりここで紹介できることがないですね。ただその割に、会計の知識はほとんど身についていないので、「まあ、まだまだだな、、、」という感じです。

 

6月のプレイリスト

6月はあんまり、音楽を聴きませんでした。全7曲で27分。思い入れのある曲も少ないです。

↑のは洋楽をまとめたプレイリストだけど、邦楽なら、6月にヘビロテしていた曲があります。それは、CUPSULEというバンドの「RGB」です。


www.youtube.com

CUPSULE、全然知らなかったけど、いい感じですね。邦楽はあんまり聴いてないけど、もし聴くならこういう感じがよいな〜〜と思いました。

↑の曲で言うと、「何もかもが足りなくても  すべてあるような気がして  遙か都会の空を見上げてる」という歌詞とか、シンプルながら素敵だなーと思います。こういう雰囲気の曲があれば、ぜひ教えてください。何卒!!!(近いので言うと、800 cherries とかあるなと思います)

プレイリストの中から一曲挙げるなら、ジェイソン・ムラーズの「Lucky」かなあ。


www.youtube.com

これ、スタバに行ったときに流れていた曲で、スタバでかかっている洋楽、だいたい良いなと感じます。

豆知識を言うとスタバだけに、スタバで流れている曲は、ちゃんとプレイリストとしてSpotifyにまとまっています。聴きたいときはいつでも聴ける。

ので、スタバに行きたいけど、行けないから気分だけ味わいたいという方は、このプレイリストを聴いているといいかもしれません。そんなことしてる奴いたら正直怖いけどな。

 

 

 

以上!!

ちょっと短いけど、今日はこんなところで。正直、6月、あっという間過ぎてあんまり書くことがなかったです...... 毎月書いている都合上、そういう月が出てくるのも、仕方なし。

これから夏ですね!!! 最近気付きましたが、夏が過ぎると、あとは段々と寒くなって日が短くなって1年が終わるだけなんですよね。こんな悲しいことがあるか? 何を当たり前なことを、と思うかもしれないけど、夏はやっぱり1年のピークなんですよね。そのことを忘れないで過ごしたいです。

......そういえば、僕は6月の目標として、ブログを3本投稿するというのを挙げていました(前回の記事を参照)。一応、今日でその目標を無事に達成できたので、7月の目標も、この場で書いておきたいと思います。

7月の目標は、、、

 

本を3冊読み切る

 

です! シンプルだけど、意識しないと達成が難しい課題。これを7月は頑張ります。

皆さんは、日々、目標を持って生きていますでしょうか? よければこの期に、当月の目標を立ててみるとよいかもしれません。そして、一緒に達成に向けて頑張りましょう!! いつもながら、こんな記事を最後まで読んでくれた方には感謝です。僕とお前はもう「相棒」だよ。一緒に夏に向かって頑張っていきましょう!!!

 

 

 

 

よいコミュニケーションとは何なのか? を考える初夏:新書を2冊読みました

 

 

 

新卒3ヶ月目に読む本ってもうこれしかねーから!!!!

 

 

という冗談はさておき、、、(僕の職場はみんな優しくていい人です)

 

今日は読書感想になります。最近読んだ新書の感想です。

2冊読みました。

 

1冊目:村田和代『優しいコミュニケーション:思いやりの言語学』(2023,岩波新書

 

2冊目:津野香奈美『パワハラ上司を科学する』(2023,ちくま新書

 

期せずして、どちらも「コミュニケーション」関連の本となりました。『優しいコミュニケーション』は言うまでもなく、『パワハラ上司』についても、コミュニケーションに関する内容となっています。よきコミュニケーションの反対側、つまり悪しきコミュニケーションの典型として、パワハラがあるという感じですね。そんなわけで本日は、「よきコミュニケーションについて考える」回となっています。

......皆さん、「よきコミュニケーションとは何か」、日々考えておりますか? 最近はこういうのね、chatGPT師範代に聞けばスラスラと答えを出してもらえるようになりましたがね、まあ自分で考えるのも当然大事と思います。

というわけで皆さんもこの問題、一緒に考えてみてはいかがでしょうか!!

 

実際に聞いてみた。

まあぶっちゃけ、今回得られる結論も、これと大して変わらないです。

 

 

感想:村田和代『優しいコミュニケーション』

www.iwanami.co.jp

まずは村田和代『優しいコミュニケーション』から、簡単な内容紹介と感想になります。岩波新書で、2023年5月に発売された、割と最近の本です。940円+税(最近は新書も高いね!!)

 

内容紹介

......日々のコミュニケーションを観察していると、気持ちがほんわりと温かくなる、人の思いやりが垣間見える瞬間に遭遇することがあります。そんなとき、「これが優しいコミュニケーションなのかな」と感じます。そういった言葉のやりとりに、何かしらの共通点はあるのでしょうか? あるいは、どうしたら、多様な言葉のやりとりの中に「優しさ」を見つけることができるのでしょうか?(本書はじめに、i 頁)

本書は、これが「優しいコミュニケーションです」といった明確な解答を提示するものではありませんが、社会言語学のカギ概念や理論から、「優しいコミュニケーション」を考える上でのヒントやその糸口、エッセンスを見いだせるのではないかと考えます。(本書はじめに、ⅳ 頁、太字は引用者)

上の引用にあるとおり、「優しいコミュニケーション」というものについて、社会言語学の立場からアプローチするものとなっています。社会言語学って何? というのは本書の第1章で紹介されていて、引用すると、「言葉を社会との関わりで観ようとする言語学の一分野」(2頁)とされています。人々が使用する言葉について、その社会との関係から分析する...... という感じでしょうか。「『生きていることばやコミュニケーションの有様』を研究するのが『社会言語学』なのです」とも言われています(3頁)

で、そこからどう「優しいコミュニケーション」にアプローチするのかというと...... 社会言語学の先行研究で言われている理論を紹介したり、実際に会議や会話を分析した研究を紹介したり、という感じです。例えば、「ビジネス会議を始める前の雑談が、会議でのコミュニケーションにどう影響を与えたか」といった事例が紹介されるなど。こういったものを通じて、「優しいコミュニケーションって、もしかしたらこういうのかもしれんね!!」というのを探究するものとなっています。

 

キーワード① 聞き手意識

読んだ感じ、本書のキーワードは2つあるように思いました。あくまで僕の読みではという話ですが......

その一つ目が、聞き手意識です。これは本当にもうキーワード。キワキワのキワード(は?)。「聴き手を意識して話すこと」、そして「聴き手として意識すること」が繰り返されています。第3章のタイトルとか、「大事なのは『聞くこと』」ですからね。そのままですね。

コミュ力」というものについて、皆さんどう考えますか? これはしばしば、 ”伝える力” のことだと言われているように思います。うまく情報を伝達する力だとか、聴衆を引き込む力だとか......

とはいえ、本書でも言われるように、コミュニケーションのパワーとは、必ずしも話すパワーだけなのか? 否、当然「聞く力」も重要になってきます。コミュニケーションが、相手との双方向的なものである以上、当然「聞く」姿勢も大事になってきます。

学生たちが頻繁に口にするのが「コミュ力(コミュニケーション能力)つけたい」という言葉です。「じゃあ、コミュ力ってどんな能力?」と聴くと、返ってくるのはたいてい「自分の意見を相手にわかりやすく伝える力」「わかりやすく伝えるプレゼンテーションの力」「論破する力」といったように、「話し手」の視点に立った表現ばかりです。
コミュニケーションは、話し手から聞き手に伝えるという一方向的なのでしょうか?(23頁、太字は引用者以下同じ)

「コミュニケーション能力をあげたい」「相手を論破したい」「自分の意見を相手にきちんと伝えたい」という発言において、視点は自分(話し手)にありますが、逆転の発想をしてみてはいかがでしょうか? コミュニケーションは、ことばのキャッチボールです。会話相手が受け取れるボールを投げていますか? 受け手に配慮した投げ方をしていますか? 聞き手は誰なのか、聞き手が理解しやすいようにするにはどのようなボールを投げればいいのか? 皆さんの日々のコミュニケーションでは、このようなポイントを取り入れているでしょうか?(93頁)

この飲用箇所は、改めて意識すべし点だなーと思ったところです。コミュ力とは、一方的に話す力に非ず。ゆめゆめ忘れるべからず.....

こんな感じで、話し手側だけではない、「聞き手として」そして「聞き手を意識した」コミュニケーションについて説かれています。具体的にはどういうことかというと、まず聞く姿勢として、相手の表情をちゃんと見たり、相づちを打ったりとかですね。そして、聞き手を意識するということについては、しっかり相手の立場や苦境を慮った発言をする、ということが挙げられています。本書の第4章では、コロナ禍での政治家の発言を分析して、どの政治家がこうした実践をできていたが比較されているので、結構面白いです。

 

キーワード②:ファシリテーション

キーワード2つ目は、ファシリテーションと思います。「聞き手意識」については、章のタイトルになるぐらいはっきり言われていたけど、この「ファシリテーション」についてはどっちかというと隠しテーマですね。まあ隠しというか、僕が勝手にキーワードと感じたというだけの話なんですが。

ファシリテーションとは何か、というと、ザックリ言えば「話し合いや会議の在り方をデザインすること」となると思います。皆が話しやすいように場を整えたりだとか、進行の在り方を工夫したりだとか。そして、それを行う者(進行役)がファシリテーター。著者である村田さんは、地域のまちづくりワークショップなどで、このファシリテーターを務めているようで、本書はそうした視点からの分析が結構豊富です。

で、なぜこれがキーワードだと感じたかというと、このファシリテーション(会議設計)というものが、社会的実践につながりやすいからというのがあります。著者の村田さんは最初の方で、自身の研究の「社会貢献」ということについて言及しています。

筆者は、一貫して、言語・コミュニケーション研究の社会貢献というテーマに取り組んできました。実際に、現場のフィールドワークやコミュニケーションの観察、現場の方々への聴き取りも進めてきました。コミュニケーション研究を通して、人に優しいコミュニケーションのエッセンスや、価値観や利害の異なるひとたちが「共生」し、「創発」が生まれるようなコミュニケーションデザインを見いだせると考えています。(はじめに ⅴ 頁)

この他にも、研究の社会実践を志向している箇所は数多く見受けられます。

で、この「社会実装」「社会貢献」への志向というのが、本書の割と大きな特徴のように思います。単に、優しいコミュニケーションとは何だろな? と考えるだけではなく、その社会実装に向けて試行錯誤していくという、そこが個人的に、読み応えのあるところでした。かつ、その際の「社会実装の担い手」として、ファシリテーターが位置付けられているように感じたので、これをキーワードと思った次第です。

本書の最後の方では、「<つなぎ・ひきだす>ファシリテート育成プログラム」と言う者を紹介して、そのまとめとして、次のように言われています。

本プログラムの実施を通して、筆者自身が痛感したことは、コミュニケーションは双方向であるということです。「話し合い」は誰かが一方的に「話す」ために行うのではありません。「話し」「合う」のです。そして、話すこと以上に、他の参加者の意見を「きく(聞く・聴く・訊く)」ことが大切なのです。

文部科学省も、主体的・対話的で深い学びの実現を教育目標に掲げています。これからの社会を担う人材には、話し合いができる能力は必須です。市民参加のまちづくりをさらに進めていくためにも、話し合いリテラシーを身につけることが、今後ますます求められるのではないでしょうか。(162頁)

これが結構、本書のまとめそのものに近いかな、と思いました。かつ、やはり個人的には、後半部分が大事なように感じます。「話し合い」のスキルの向上を目指して、社会をよりよくしていこうということですね。そうなると、本書はより教科書的に、「よきコミュニケーションとは何か」を明示していく必要も、いずれは出てくるんだろうなあと思いました。

 

逆に難点

というわけで、ここまでが内容紹介で、引用多めにしたので著作権的に怒られないか不安ですが、次は個人的な感想もちょっと書いておきたいと思います。

上記の通り、面白いなと思った点は、コミュニケーションにおける「聞き」の役割を強調しているところです。そして、社会実装的なところを志向しているのも面白かったです。

ただ、逆に不満というか難点的なところを挙げると、ちょっとふわっとしすぎかなと思いました。厳密さを欠いているというか...... 基本的に、著者が行った研究・調査と、そこからの感想(主観)がベースになっているように思います。あんまり客観的な数字が提示されないというか...... まあ、客観的な数字ばかりではない、主観的な「語り」やナラティブが大事という話もわかるんですが、ちょっと個人的には、ふわっとしすぎて満足度が低いところがありました。岩波新書にしては、だいぶライト層向けかな〜〜って(しかし、この「岩波にしては」という決めつけが、今日も誰かを苦しめているのかもしれない......)

例えば、同じく言語についての分析をしている、前々回の記事で紹介した椎名美智『させていただくの使い方 日本語の敬語のゆくえ』(角川新書)は、逆にデータたっぷりでゴリゴリの分析だったんですよね。本書(村田本)も、椎名本と同じくポライトネスの話とかしているけど、全体的に分析の緻密さは、椎名本の方が圧倒的なように思います。椎名本は角川だけど、こっちが岩波の方がよかったんじゃないか? という偏見がまた今日も誰かを.......

と、不満を申しましたが! ただですよ!!  若干メタ的なことを言うと、逆にそれが「優しい」コミュニケーションなのかもしれません。本書でも、「やさしい日本語」というのが紹介されていて(22頁)、これはシンプルな単語で構成された、外国人や障害のある人にとっても理解しやすい日本語だそうです。そう考えると、「厳密さに欠ける」「ふわっとしてる」というのも、決して欠点とは限らず、むしろ”優しい”のかもしれない、、、? どうなんでしょう?? まあ結局のところ、読み手・聞き手をどのように想定するか、という話のようにも思います。新書(とりわけ岩波新書を読もうとしている読者にとっては、「優しさ」よりも「厳しさ」に価値があるかもしれません。「優しさだけじゃ生きられない......」ってミスチルも言ってたからな。社会人になってから、前よりミスチルが面白く聴けるようになりました。そんなゴミみたいなまとめでどうでしょうか。

 

2冊目:津野香奈美『パワハラ上司を科学する』

www.chikumashobo.co.jp

優しさだけで生きていたい.......

前節の最後、「優しさだけじゃ生きられない」とミスチルtomorrow never knowsを引用しましたが、しかし、同時に「優しさだけで生きていたい」とも思います。特に、チクチク言葉ばっか言ってる上司が「優しいだけじゃ 生きられないからね!!」とか言ってたら、思わず顔面に噛みついてしまうかもしれません。人間の最後の武器は『歯』ですからね。

そんなわけで、今度は津野香奈美『パワハラ上司を科学する』(2023,ちくま新書の紹介です。こちら、今かなり話題なので、知っている方も多いかもしれません。色んな人が書評やコメントを書いています。僭越ながら、僕も、この場を借りて、感想を書かせていただきます、、、大変恐縮ですが。

 

パワハラ上司にならないために

この本、「今読んでるんだよねー」と言うと、必ず「パワハラに遭ってるのか??」的なことを言われますが、逆です。本書はどちらかというと、パワハラ上司にならないために読む本です。特に、第5章が「パワハラ上司にならないためにはどうすればよいのか」という、そのまんまの章タイトルです。ので、自分が”そっち側”になるとはつゆも考えていない人ほど、本書を読むべきかもしれません(ただ勿論、パワハラを受けた人がどうすべきか・何ができるかについてもたくさん書かれています)

で、そもそもパワハラとは何か? というところで、本書ではまず「改正労働施策総合推進法」を引いて、パワハラの3要素というものを紹介しています。すなわち、

  1. 優越的な関係を背景とした言動であり、
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
  3. 労働者の就業環境が害されるもの

の3つです(本書、17頁)。この3つが全て満たされたとき、「改正労働施策総合推進法」で言うところのパワハラに当たります。これだけだと少しわかりにくいですが、本書では「罵声を浴びせたり人格否定したりする精神的攻撃」や、「相手が不利になるような噂を流したり恥をかかせたりする行為」などとも書かれています(29頁)。あとは単純に暴力の行使なども挙げられますが、こんな具合に、全く適切ではない手段によって相手を傷つけ、労働環境を阻害する行為が該当しています。

で、恐ろしいのは、人格否定や精神攻撃ですね。殴った蹴った、目に激辛カレーを塗ったというのは(あの事件本当に恐ろしいですよね)、端から見ても暴力と判断できるけど(「冗談のつもりだった」とか弁明するのはあるかもだが)、人格否定や精神攻撃は、気付かぬうちにやっていることも大いにあると思います。「厳しいことを言うのも指導の一環だ」とか、「叱咤激励のつもりだった」とかね。これについては言った本人だけでなく、言われた側としてもどっちか判断がつかないこともありそうです。そうなったら結構悲惨。

そんなわけでですね、本書を通じても、「よきコミュニケーションとは何か」について、たくさん考えることが可能です。自覚的にせよ無自覚的にせよ、他人を害したり、自らの特権にふんぞり返ったりしないためにも、よきコミュニケーションとは何か、それを考え是非身につけよう、という話になります。

かつ!! これは単なる僕のこじつけではなくて、本書には、その良きコミュニケーションのためのヒントがたくさんあるなと思いました。そういうところをかいつまんで紹介できればと思います!

 

パワハラ上司とは?

パワハラ上司にならないためには、まず「パワハラ上司とはこういう奴だ」というのを知っておく必要があるでしょう。そんなわけで、本書に沿いつつ、まずは「パワハラ上司とは何か?」について触れておきます。

*ちなみにこれは、就業環境におけるパワハラだけでなく、サークルや研究室など、「自らの優位性を利用した人格毀損行為」が発生しやすい場所にも、当然当てはまるはずです。ので、各自自分事として考えるのが可能であるはず。

で、本書では、パワハラを行う上司を、3つの類型に分けています。それぞれ、リーダーシップの行使の仕方に着目して、「脱線型」「専制型」「放任型」の3つとなっています(100-101頁)。それぞれ簡単に紹介します。

脱線型は、役職は上だけど自分のことしか頭にないタイプで、「傲慢で自分のことしか考えていないので、部下をうまくまとめたり、組織に対して本当の意味で貢献したりできない」人物とされています(166頁)。上司へのゴマすりは惜しまないけど、部下のことは「お荷物」や「競争相手」のように扱う、ちょっと古い漫画に出てくる嫌な部長タイプですね。別に仕事熱心というわけでもないので、部下だけでなく組織にとっても破壊的な最悪のリーダーとされています。

対して、専制型は、むしろ組織の目標達成には貢献したりしているけれど、部下への叱責が激しすぎたり、職権を乱用しがちなタイプの上司です。「典型的なパワハラ上司のリーダーシップ形態」であるとされています(107頁)。自分の期待水準に達しない人に対して「なんでこんなこともできないの?」と言ったり、すぐカッとなったり、自分こそが正しく、反発してくる輩は”間違っている”と見なしがち、という特徴が挙げられています。これの厄介なところとして、耐えかねた部下がパワハラを訴えたとしても、「いやあの人は仕事熱心だから、ちょっと部下にも厳しいところがあるだけだよ」と擁護されがちなことも言われています(110頁)

最後に、放任型は、これはその名の通り「自分でやれ」というタイプで、自分に判断や決断を求められることを避けるタイプの上司とされています。日本ではやっぱり多いらしいですね...... 組織の内部で揉め事が起きていて、自分は結構大変な思いをしているのに、上の人に相談しても何もしてくれない、むしろ「俺を巻き込まんでほしい」的な態度を取られるというのは、僕もけっこう覚えがあります。人生で2回は確実にあった。そしてそのときはツラかった、、、 こういう現状放任型は、責任の所在が曖昧で、誰に解決を求めればいいかも分からず、ただただ自分の孤立感だけが深まっていくので、本当によくないと思います...... 書いてて色々思い出しツラくなってきたぞ! 本当によくない、、、 STOP!! 放任型上司!!!

いずれにせよ、どの類型でも、、、 相手を思いやる気持ちだったり、相手の苦しみに共感する気持ちが欠けているところが共通ですね。上司として権力のある立場に立ったり、組織の目標達成・部下や後輩の育成という大義名分を得たりすると、余計にそうなりがちとも言われています。権限が広がり、お給料も上がり、過去の努力がついに実ったという感覚も生まれるはずなので、「俺は今、正しいことの白の中にいる!!!」とポルナレフばりに思い込んでも、まあ仕方ないっちゃ仕方ないのかもしれません。単に個人の性格の問題だけではなく、パワハラを誘発させやすい「環境」の話も本書では触れられていて(177頁)、色んな要因の元に、我々は「よきコミュニケーション」を失いがちなのだと思います。

 

じゃあどうすんのよ!!

で、もちろん「仕方ないよね」では終わらせず、本書では「そうならないための方策」も論じられています。個人的に、めっちゃ大事だなーと思ったのをいくつか紹介します。

 

① 別の思考オプションを用意する

人は、一度「あいつはだめ」「あいつはできない」「あいつは生意気」等とネガティブな印象を持ってしまうと、無意識のうちにその印象に合致した言動をさらに探してしまい、「やっぱりあいつはできない奴だ」等と決めつけてしまう性質があります。そしてこれが、さらなるイライラの原因になってしまうのです。

それを防ぐために有効なのが、別の思考オプションを予め用意しておくことです。「あの人はだめな人だ」「仕事ができない人だ」と思うことがあったら、次回からこう思うようにして下さい。「あの人はだめなのではない。①(その仕事の)やり方を知らないか、②(その仕事が)苦手なのか、③何か事情があるのだ」と。(209頁)

こちらは、「感情の自己抑制」すなわち怒りの制御として紹介されています。何か怒りの湧くことがあったら、すぐにこの思考オプションに切り替えて、①やり方を知らないのかもしれない、②苦手なのかもしれない、③何か事情があるのかも知れない、と考えるようにすべしということですね。

これは本当に、個人的にも大事だと思います。まず、「思いやりを持ちなさい」とかのふんわり提言よりも、実践として具体的ですね。「こう考えるようにしなさい」というのが明確なので。かつ、経験上、頭に来る事例のうち、実際に多くのことがこの3つのどれかに当てはまるので、真理としても重要であると思います。

僕も以前、図書館でカウンターのバイトをしていたときは、本をぶん投げるように置いていったり、完全無視対応を決め込んでくる利用者に会ったときは、キイィッーーッーーっとなったりしてました。ただ、前者についてはともかく、後者については、留学生でそもそも言葉がよく分かっていないということも多々あり、そのたびに「何か事情があるのかもな」と思うようにしようと反省してました。こういうのは、単に怒りを静めるだけでなく、自分が見ようとしなかった真なる事実に気付けたりもするので、大事な取り組みだなと思いますただ、スプラトゥーンをしている時は我を忘れ、味方を無能集団と罵っています

 

② ちゃんと聴く・黙って聴く

傾聴のスキルを上げるためには、訓練が必要です。まずは部下の話を五分間黙って(相槌だけして)聴く練習をしてみて下さい。その際、実際に時間を計測してみるのがいいでしょう。たった五分間なのに、何度も口出ししたくなったことに驚くはずです。同時に、五分でもかなりの情報が得られることにも気付かれると思います。(217頁)

「聴くスキル」を上げようという話も出ています。これはさっきの村田本と共通の話題ですね。これも本当に、大事だなあと思います。

実際、これは僕も身に覚えがあるのですが、「後輩の話を聞いてあげた」「相談に乗った」と言いつつ、実際はただ自分が持論を披露して気持ちよくなってたってだけのこと、往々にしてあると思います。本当に、これは、よくないね、、、 だからこそ、上記の引用のように、「五分間黙って聞く練習」というのは、非常に大事だなと思いました。かつ、実践として具体的だとも思います。こうやって数字を出すことで、実際にどれだけ自分が「聞」に徹していられたか可視化できるというのは、なるほどなあという感じでした。多分5分は絶対無理だな、、、

 

③ 価値観の違いを想像する

よく「昔はパワハラなんて日常茶飯事だった」「俺たちは耐えてきた」という話を聞きますが、なぜその時代を過ごした人がパワハラに耐えられたのかと言うと、「自分のやりがいや達成感」を最も重視していたからです。......

一方で、今の若い世代はどうでしょうか。......給与アップにも期待できないどころか、大企業でも倒産したり吸収合併されたりすることが珍しくない現在、今勤めている会社が一〇年後も存在しているのかさえ疑問です。上司からのパワハラに耐えた後の未来が全く見えない状況で、耐えられるわけがないのです。(225頁)

3つ目は、互いの価値観の違いを尊重するという....... 「言うは易く行うは難し」ランキング第1位の言葉ですね。ただやっぱり、「俺がこれで成功してきたから、相手もこれで上手くいくはずだ」という考え方には、気をつけなきゃいけないなーと思います。

実際ね、難しいんですよ。僕も研究とかバイトで後輩の面倒を見るときに、遅刻されたりため口きかれたりとかは別に全然気にならないんですけど、「Ctrl A とか Ctrl Z とか難しいことわかんないです〜〜」と言われると、「いやマジでそれは絶対覚えてゼッッタイ覚えといた方が得だから」的な押しつけは、やっていたように思います。それは本当に、いじわるとかではなくて、「覚えた方がいい」という真の気持ちから言っているつもりだけど、でも「マウス操作派」の価値観を尊重していないですよね。マウスカチカチ派のカチ観。すみません、やっぱり全然尊重できてないですね。

本書でも、こういうところはちゃんと警告されていて、

自分に厳しい人、努力をしてきた人、〜すべきという価値観を多く持っている人は、パワハラをするポテンシャルが高いと言えます。そのため、一般的に高学歴だったり、いわゆる「仕事ができる」と言われたりする人であるほど、要注意です。他者にも当然のように努力や成果を求めていないか、自問する必要があります。(149頁)

ここは、完全に、俺のことかーーーっ!!! でした、、、、いや本当に、気をつけなければなですよね....... 警句として心に留めます。

 

④ 相手の関心に対して関心を持つ

最後。これが一番、重要だと感じたところです。本書の終盤では、パワハラ上司にならない方法として、「相手の関心」に対して関心を持つということが挙げられています(250-252頁)

これは「相手に関心を持つ」こととの対比で用いられています。本書の例を引くと、例えば相手が既婚者かどうかを尋ねて、それだけで「この人は家庭があるから、軽めの仕事の方がいいはずだ」と判断するのは、「相手」に対して関心は持っていても、「相手の関心」に対しては関心を持っていない、ということになります。難しいですね。相手のことを気にかけている分、何らかの関心は持ってくれているのだけれど、ただ「個」としては相手を見ていないという、そういう話になります。属性で大雑把に判断しちゃってるということですね。

これと対になるのが、「相手の関心」に対して関心を持つこと。先ほどの例で言えば、相手に家庭があるかどうかだけでなく、「どんなキャリアを希望していますか?」とまで聞くのが、相手の関心に関心を持つということになります。属性だけではなく、主観も考慮するということですね。本書では、こうしたアプローチについて、「相手の関心に寄り添うと、『一人の人間として見てくれている』と伝わりやすい上に、パワハラだ、あるいはマタハラだと訴えられるリスクを減らすことができます」として(251頁)、上司にとってもメリットがあることが指摘されています。

 

まとめ

......で、いきなりまとめなんですが、今回の記事の結論として、個人的には、この「相手の関心に関心を持つ」ということこそ、よきコミュニケーションなのではないかと思います。相手が何を思っているかに寄り添う、ということですからね。相手の関心に対して「聞き」の姿勢を持ち、かつ、自分の価値観を一方的に押しつけない(相手の価値観を聞き出す)という、これまでのまとめ的要素が詰まっているように思います。かつ、日々の実践としても、だいぶ具体的でもありそうです。相手の関心に積極的に耳を傾けるという、割と実践の方向性が見えるやすいものですからね。

これまでも書いてきたように、意外と、人の話を聞いているようで、実際は相手を型にはめて、こっちが一方的に喋っていること、だいぶあるように思います(そしてそれをもって「話を聞いた」ことにしたとか.....)。まあそういうのはやっぱり、「よきコミュニケーション」ではないですよね。優しいコミュニケーションでもないでしょう。特に権力や先輩パワーを持ったときにやりがちな分、気をつけなければと思います。

そんなわけで、今回の結論としては、よいコミュニケーションとは、まずもって「聞き」の姿勢を持つ事であり、かつ、相手の関心に対して関心を持つことである、としたいと思います。言うて新書を2冊読んだだけなので、あくまで「今回の結論」ということで。今後の探究の末に、もっと色々見えてきたりもすると思います。

僕は現在、新卒3ヶ月という立場ですが、「職場」というものに参入して以降、やはり以前より、色んな意味でコミュニケーションが複雑・多様になってきていると感じます。職場内でのコミュニケーションもあれば、職場外(取引先など)とのやり取りもあり、色んなところで権力の磁場を感じる日々。ただそんな中でも、やはり「人間」と接している以上、誰であっても「個」として見る目を忘れたくないなと思いました。こんな無難な結論でいかがでしょうか、、、

 

 

以上

 

過去最高の長さになったよ

というわけで、読書感想会でした。現在、編集画面の文字数カウンターが、11,430を示しております。過去最長の記事となりました。マジで申し訳ない

普通に2冊消化してるんだから、分割すればいいのにな〜と自分でも思っています。ただ書き始めると止まらなくて、いつもこんな感じです。

ちなみに、『パワハラ上司を科学する』ですが、単に僕が面白いと思った部分をピックアップしただけなので、ぜひ皆さんも実際に読んでみてください。本当に色んな事例・提言が盛りだくさんで、きっと刺さるところがあるはずです。僕が紹介してないところに皆さんにとっての真理が眠っているはずなので、是非本当に、読んでみてください(当サイトのアマゾンリンクを使うと僕にも少しPayが入ります、使ってくれたら感謝しかない)。村田本よりはこっちを読んでほしいかなー。

そんなわけで、今日は長くなったので、この辺にしたいと思います。皆さんも、ぜひ、新書を読んでネットの海に感想を投げてみてはいかがでしょうか。実際理解が深まって楽しいよ!! 皆さんが「このステージ」に来ることを、楽しみにしています、、、、

 

 

 

 

チャリ旅 to 鎌倉 →『ピンポン』聖地巡り

問いかけています。

6/18(日)、6/19(月)と、鎌倉&江ノ島に旅行に行ってきました

↑の画像は建長寺にて。都内出発で、チャリで行って参りました。だいたい片道70kmぐらい。往復約150km、1泊2日のチャリ旅です。

いや6/19(月)って平日じゃん仕事は? って思う方もいr有給使いましたァアアアアアアアアアアア!!!! 年休を使って江ノ島旅行です。これ以上の最高があるか??

というわけで、今回は旅の記録になります。鎌倉&江ノ島に行った目的は2つで、一つは、チャリで海まで遠くに行きたかったこと。もうひとつは漫画『ピンポン』の聖地巡りがしたかったことです。皆さん、ピンポンご存じですか? 漫画・アニメ・映画、全部面白いですよ。

松本大洋作『ピンポン』。いつの間にかアニメがNetflixで観られなくなっていて悲しい。

今回は、1泊2日のチャリ旅の記録です。内容としては、

  1. チャリ旅の経路について
  2. 鎌倉観光の感想
  3. ピンポン聖地巡り!!

という感じ。

全体的に、写真多めにするつもりなので、サッサッッとスクロールする感じで読んでいただければと思います。

都内→鎌倉でチャリ旅したいという方は、何らかの参考になれば幸い。ピンポンの聖地巡りをしたいという方の参考になっても幸い。まだピンポンを知らないよ! という人は、今すぐにピンポンを買って読み終わったらまたこのブログを読みに来て下さい。これは義務です(映画でもいいよ!!)。

というわけで、チャリ旅の経路から順にやっていきます。

 

1.チャリ旅の経路

1日目、往路は東京都内→鎌倉というルートでした。基本的に、ルートは国道1号線→神奈川県道21号線のごく簡単なものとなっています。

www.google.com


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東京駅出発とすると、横浜駅まではひたすら国道1号線を進む。五反田とか蒲田のあたりを通ります。鶴見川を越えた辺りで、1号線はアップダウンが激しくなるので、それを避けるならちょっと南側に迂回するなど。ともかく、広い道を走り続ける感じです。東京タワーが見える以外は、本当に何も無い道で、まあ退屈ではあるんだけれども、広くて走りやすい道ではあります。これがだいたい、25km〜30kmぐらい。

東京タゥア。この辺りの坂は結構きつい。

東神奈川駅のあたりでお昼。出発から2時間半ぐらい。「ヨンドン」というお店で食べる。ハラミが美味しいと噂の店だったが、間違って牛カルビを頼んでしまう(でも美味しかった)

で、ひたすら進んで、横浜を過ぎてからは、県道21号線を走る感じになります。横浜までは、だいたい3時間ぐらい。そして、県道21号線に入ったら、そこをずーっと走り続ければ鎌倉まで行けます。優秀な道だ。

桜木町駅を過ぎた辺りで、21号線に入っていく。

ちょっとわかりにくいけれど、横浜駅から突き進み、桜木町駅を過ぎたら、吉野町駅のあたりに行って、そこから県道21号線に入る感じです。あとは、本当にこれに沿って行くだけ。分かれ道があっても、21号線の方を選んで進めばよし。

ただ注意点として、この道、ガッタガタです。舗装はあんまりされてなし。この21号線がといぅよりは、神奈川県は全体的に道路がガタガタしがちだったように感じました。東京が舗装されすぎなのかもしれない。

そんなわけで、坂があったり交通量が多かったりと、決して楽ちんな道というわけではないのだけれど、「分かりやすい」道ではあると思います。分岐が少ないし、コンビニとかが多くて休憩もしやすいし。あと、神奈川県の雰囲気もちょっとは掴めるかもしれません(ほんとか?)。

鎌倉市に突入。出発からちょうど4時間ぐらい。途中で日焼け止め買ったりとかしてたので、こんなもん?(ちょっと遅い)

そんな具合に突き進んでいくと、北鎌倉のあたりに到着します。

北鎌倉駅。出発から4時間と15分。このあたりは「山」という感じだが、観光客も多かった。

北鎌倉駅から鎌倉駅へと向かう山道。人も車も多し。日曜の鎌倉観光には気をつけて!

道すがら、建長寺に到着。当初行く予定はなかったが、なんかよさげなので立ち寄ってみた。

というわけで、建長寺に到着したので、これを「鎌倉到着」と見なします。そうすると、ここまでだいたい4時間半。上に書いたとおり、休憩や買い物を挟みつつなので、まあまあかなという感じかな。

ここで言いたいのは、都内から鎌倉までチャリで4時間半ぐらいで行けるよ!! ということですね(まあチャリと行ってもロードバイクなんですが)。遠いは遠いけれど、そこまで破壊的な距離ではないのではなかろうか。皆さんも休日の旅行にいかがでしょうか?

まあまともな神経の人なら行かないと思います。

 

2.鎌倉観光!!!

鎌倉観光したので、その記録です。ちなみに、このときはだいたい14時ぐらい。

行ったところは、建長寺鎌倉大仏鶴岡八幡宮、そして稲村ヶ崎の温泉などなど。個人的に一番よかったのは建長寺です。人も少なく、自然豊かで、かつ山の中ゆえ、涼しかったです。庭園も綺麗でございました。ダイジェスト的に振り返ります。

建長寺。このシーズンはあじさいが綺麗でした。あじさいは好きなお花の中でもトップ3に入るよ。

建長寺の庭園の説明。お寺の庭園なのに、寺の後ろ側にある。新し。

庭園。きれいだったし、ベンチがあって座って眺められるのがよかったです。イチャイチャしているカップルもいました。煩悩を消せよ!!

奥の方も山が続いていて、ハイキングルートなんかもあるみたいです。

この日、東京は30度越えだったけど、建長寺内はとても涼しかったです。いい風が吹いていました。「そういえば鎌倉って避暑地にもなってたよな〜〜」ということを思い出したり。

建長寺を出た後も、今まで通り、県道21号線を進んでいきます。そうすると、鶴岡八幡宮を通過して、鎌倉駅に出る感じ。

 

北鎌倉駅を通過し、建長寺の前を通って、鶴岡八幡宮鎌倉駅まで行くルート。県道21号線を走っていれば、それだけで鎌倉観光ができる。

というわけで、15時頃、鎌倉駅のあたりに到着しました。ここからは、大仏と八幡宮を見に行って、稲村ヶ崎の温泉に行き、宿に泊まったという感じです。

 

大仏様。鎌倉の大仏は、本当に大仏しかいない。他の仏像はなく、ただ大仏だけが独り寂しく座っている。代わりにでかい。

稲村ヶ崎の岬。遠くに見える江ノ島!! そしてこのすぐ近くに温泉がある。1500円。結構高い。

鶴岡八幡宮にも行きました。人が多かったです。ちょい失礼だけど、The 観光地の神社という感じ(失礼だ)。

石段を登ると鎌倉の街が見えるよ。

全体的に、カップルがとても多かったです。3枚連続で移っている。そういうこともある。

こんな感じで、1日目の行程は終わり。東京からチャリで鎌倉に来て、しっかり観光もできました。楽しかったです。

感想として、鎌倉巡りは1日あれば結構回れるな〜〜と思いました。東京から日帰りで行くのに、とてもちょうどよいと思います。ただ、人はとんでもなく多いですね。かつては「攻めにくい土地」として名を馳せた鎌倉ですが、今ではカップルたちから怒濤の襲来を受けています。海外からの方も多かったですね。

お泊まりした宿。ペンション グリーングラスロードバイクを室内に置かせてもらえたのがとてもありがたかった。

 

3.江ノ島観光!! ピンポン巡礼

というわけで2日目ですが、江ノ島に行ってきました!! そして漫画『ピンポン』の聖地を巡ってきました。全部に行ってきたというわけではなく、特に好きな場所にだけ行ってきた感じです。

由比ヶ浜江ノ島。海沿いをただひたすら走る。4kmぐらい。

というわけでここからは、漫画『ピンポン』に出てきた場所巡りの記録です。

 

① 「また夏が来るなァ...」

片瀬東浜

松本大洋『ピンポン』(小学館文庫)1巻、p123

片瀬東浜から、江ノ島をバックにしたアングル。漫画内の季節も多分6月ぐらいなので、是非とも撮りたい1枚でした。

ただ実際は、写真の通り、既に海の家が建てられ始めているので、あんまり忠実な形で撮れませんでした。海の家さえ無ければ......

 

 

写真を撮りに来た孔文革「海の家がジャマだよ」

 

 

 

②「次の駅?」「いや....... 次の次」

境川橋梁(江ノ電)。鵜沼駅の手前の辺り。

『ピンポン』(小学館文庫)1巻、p53

1巻の最初の方、ペコとスマイルがチャイナの視察に行くシーンですね。確かアニメの第一話が、この帰りのシーンで終わっていてとても印象的でした。こういう、ちょっと地味な風景でも、「江ノ電乗ってみてー」と思わせるのに十分で、そういうところがすごいな〜〜と思います。

でもチャリ旅なので江ノ電には乗りませんでした。それは次回来たときのお楽しみと言うことで、、、

 

②「月にタッチして帰って来るぐれえ、わけなかったぜ」

片瀬橋

松本大洋『ピンポン』(小学館文庫)2巻、p174

超有名なシーン、ペコが橋から飛び降りるところです。

ここの「橋」がどこかというのは、ちょっと難しくて、というのもこの隣に「弁天橋」というのがあります。そして映画の方で窪塚洋介が飛び降りたのが、この弁天橋でした。

弁天橋。片瀬橋のちょい北にある。

映画『ピンポン』(2002)のI can fly 。

かつ、アニメだと、片瀬橋の反対車線からペコが飛んでいるように見えます。というわけで、漫画、実写、アニメで微妙に飛んでいる位置が違い、ちょっと分かりにくいという話でした(ちなみに、映画の時点だと、この弁天橋にはアーチのようなものがかかっているが、今はもうなくなった様子...... 聖地巡礼は早めに行っておくに越したことなし)

アニメでペコとアクマがだべっているのが、多分この辺(片瀬橋)。

やめよう、月面タッチ。

ここが文庫版だと2巻の真ん中あたりで、こっからペコが覚醒していく流れになります。個人的にここの、「インパルスがもたつく...... 永久記憶が途切れる」「反応が反射に変化してな... 現実に冒されたよ」というセリフとかがすごく好きです。「奇跡なんて言葉、知らなかったよっ」も勿論めちゃくちゃいいけどね。

 

③ 「だからもっかい最初っから...握りっ方から俺に教えてくれろ...」

片瀬諏訪神社・上社

小学館文庫、2巻、p205

ペコの修行編、その1。こちらは江ノ島電鉄江ノ島駅からちょっと北にある、片瀬諏訪神社・上社です。映画でも窪塚洋介がここを全力ダッシュしてました。

漫画だと、オババが「3分切るまで一生これだ」と言ってるんですが、普通に上ると1分かからないぐらいです。カバンのおもりどんだけ重いんだ? あと、映画だとここでペコが膝を痛めていて、ガタッとなってたので「痛そうだなあ」と思いました。

片瀬諏訪神社、上からの眺め。

 

④ 「ピンチの時にはオイラを呼びなっ......」「心の中で3回唱え、」

片瀬諏訪神社・下社

小学館文庫、2巻、p329

さっきのが諏訪神社の上社。そしてこっちが下社。「ヒーロー見参」の神社です。割とピンポンにおいて、全ての始まり的なシーンなのではないかと思います。

こちらの神社、人気がなく静かで、落ち着く場所でした。こういうところにいきなり仮面被った子どもが現れたら怖すぎるなと思いました。

 

おまけ:江ノ島

江ノ島。シーキャンドル。

江ノ島もしっかり行ってきました。ちょっとした異国感があってよかったです。アニメピンポンでは、第6話のクリスマス回で江ノ島がめちゃくちゃ出てきますが、今回はクリスマスシーズンではないので割愛。朝9時ぐらいに行ったので、人もあまりおらず巡りやすかったです。クリスマスに行ったら人混みで死ぬんだろうな。確実に。

シーキャンドル最上階からの眺め。湘南の海よ.....

このシーズンは、やっぱりあじさいが綺麗。

そんなわけで、2日目はピンポンの聖地巡礼&江ノ島観光をしてきました。

漫画・アニメの聖地巡礼的なことをしたのは初めてだったんですが、まあ楽しかったです!!特に鎌倉は、山と海の自然に囲まれ、海沿いのサイクリングも気持ちよく、ちょっとレトロな街並みも、異国に来た気分になれました。まさしく「此処はいい......」というわけですね。全身の細胞も狂喜し、加速せよと命じていました。

ただ得られた教訓として、聖地巡りをするなら早めに、というがあります。さすがに、原作は1996年ぐらいのものなので、景色が変わっているところも多かったです。ので、街並みが移ろわぬうちに巡るべし、というわけですね。

 

 

おしまい

弁天橋と愛車。

というわけで、早い夏を楽しんできました。

まあ色々言ったけれど、やっぱり有休使って旅行するのは最高ですね、、、 今後も定期的にやっていきたいと思います(そしてブログのネタ切れを補いたい)

ただ、東京からのチャリ旅は、街→田舎というよりは、街→街→街→田舎だなとも感じました。チャリ旅の醍醐味に、都会の喧噪を離れて自由にサイクリングできることがあると思いますが、東京発だとなかなかそうはいかない。どこまでも街→街になりがちです。そうすると、景色もあんまり変わらないので、精神的にも疲れが溜まりやすいっす。特に国道沿いをひたすら走っている時なんかはそう。

そんなわけで、次回は、もっと田舎に、もっと自然の溢れる場所に、というのをテーマにやってみたいと思います。皆さんもチャリに乗って、どこまでもどこまでも遠くを目指してみてはいかがでしょうか。楽しいよ!! 江ノ島にタッチして帰ってくるぐれえわけなかったぜ!!と言いつつ本当は結構キツかったです。

 

 

 

 

デコポンの甘さみたいじゃん...... :5月の振り返りタイム!!

も!!梅雨なのか梅雨じゃないのかよくわからない今日、皆さまいかがお過ごしでしょうか。個人的には梅雨、結構好きなので、まだまだこんなもんじゃないぜという感じですね。2週間ぐらい雨が降り続いて欲しい。日本の四季って、もう確かなものは梅雨しか残ってないからね、、、

さて、5月があっという間に終わりました。早いものですね。この5月、皆さんはどのように過ごしていたでしょうか。4月から新しい環境となった人はもう馴染めたでしょうか。それとも一人トイレで飯を食ってるでしょうか。僕はといえば、新しくもう一人姪が生まれたりしました。姪の話って、コミュニケーションのジャブとしてめちゃちょうどいいので、事ある毎にしてしまいます。

そんな本日ですが、毎月恒例、当月の振り返りとなります。5月はですね、全く更新することができず、なんなら当ブログのアクセス数も過去最低だったんじゃないかという感じです。あんまり書くことがないからね。その辺りも含めて、どんな一月だったのか、振り返っていきたいと思います。

だいたい、

  • 仕事の話
  • 読書の話
  • 最近面白かったものなど
  • 今月のプレイリスト
  • 来月の抱負

という感じで行こうと思います。でもあんまり書くことがないので、たぶん短めになります。

 

仕事 〜馴れてきたのでExcelの勉強など〜

皆さん、労働してますか? それとも人間してますか? ......というのは冗談で、僕は労働も人間もしています。とりあえず今のところは、、、

働き始めると、精神の余裕がなくなって、人間性を失っていく的なこともよく言われるけど、仕事については”まあまあ楽しく”できているかなと思います。Webの「記録」としてブログを書いている都合上、こうやって「今はまあまあ楽しい」と書いておくの、重要ですよね。後からこのときはまだ俺って人間だったんだなって思えるので。

以前から書いているように、僕は大学で財務の仕事をしております。財務の仕事、人間同士の熱きコミュニケーションというものはほとんどなく、感情も温度も持たない数字どもを相手にする仕事なので、「何が楽しいの?」という疑問はあるかもしれません。実際、日がな一日パソコンを見つめ、メールでしか人間と触れ合うことはなく、頭の中はいつも伝票と支払いのことでいっぱいなので、仕事そのものが楽しいというわけではないかもしれません。まさに「事務」って感じの仕事なので。

ただ、徐々に自分がパワーアップしていく感覚は楽しいです。先月までは、ひたすらあたふたしているだけだったけど、今は俺、こんなこともできちゃうんだぜ??? 的な。4月は何でもかんでも人に聞いていたのに、5月はもう、ホコリを払うように伝票の整理ができています。そういう、ゲームで言うレベルアップ的な面白さが現段階ではあります(まあ僕が出したやつは9割要修正で返ってくるんだけど.....)

で、実際ですね、例えば僕が今25歳だから、定年を65歳とすると、あと40年、つまり480ヶ月あるということになります(長いな)。60歳ぐらいでだいたい落ち着くと考えても、あと400ヶ月以上あるわけです。ここでは切りのいい数字を取って、「僕の仕事生活は、全体で400ヶ月だ」ということにしておきます(そしてそのうちの2ヶ月が終わった)。

これをポケモンに例えると、ですね、ポケモンのストーリークリアを、まあだいたい40時間としておきます(結構ゆっくりやって)。で、僕は今、「仕事」というストーリーのうち、 2 / 400(ヶ月) 終えたことになっています。大丈夫ですか皆さん。付いてきていますか?? これはですね、ポケモンに当てはめると、40(h)× 1 / 200 、つまり1 / 5(h)12分ということになります。ポケモンに例えるとですね、僕のストーリーはまだ12分しか経っていないんですよ!!

で、この辺って、だいたい基本動作を覚えて、「おぉ〜〜 今作はこんなことできるんだ!」って実感する段階ですよね。僕も今そこにいます。すごい回りくどくなったけど、僕の今の仕事の楽しさというのは、ポケモンの開始12分ぐらいと同じ楽しさだということです。

まあ当然、「お前のやっているゲームはポケモン並に良ゲーなのか??」という疑問はあるだろうけど、そこはそれ、そう思わねえとやってられねえだろ!! という反論もあり得ます。ポケモンというのは単なるもののたとえで、実際は「始まりならではの楽しさがあるかも」ということがわかってもらえれば十分です。

 

ぶっちゃけ何してるの??

前回の記事などで、「どんな仕事をしているのか」という全体的な話を少ししました。ただ、そういうのではなく、もっとミクロな観点で、毎日の業務でどんな作業をしているの? という疑問も出せるはずです。

そのあたりについてはですね、Twitterの方でも書いたけど、日々Excelのセルを結合していますダメだとわかっていながらもやっています。なぜかといえば、紙に印刷しやすくするためです

なんというか、手続上、紙の資料とハンコがまだまだ必要な職場でして、「A4の紙への印刷のしやすさ」としてExcelを使っていたりしています。VLOOKUPで引数を対応させるとかね、そういうことは一切していないよ。

ちなみに、「セルの結合がなぜダメなのか」などは、↓の動画で解説されていたりします(紙に印刷するだけの僕でも、人のExcelのデータいじったり修正したりすることがあるので、あんまよくないなと思ってます)


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余談だけれど、この人のゆっくり解説動画、タメになるし茶番が面白いしで、最近ハマっています。「わちょんのゆっくりiT」というチャンネル。僕もこんなゆっくり動画投稿者になりたいものですね。

 


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↑面白い。似たようなことを僕もちょっと過去にやっていた。

 


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↑神Excelの話も載せておこう。

 

そんなわけでですね、普段どんなことをしているかといえば、Excelで印刷用の資料を作ったりしています。聞く人に聞かれたら親指から小指まで全部折られてもしょうがないんだけど、とにかくそういう「事務仕事」を日々やっております。大学職員になりたい方は参考にしたりしなかったりしてくだしあ。

仕事の話はこんな感じです。またプレイ時間を進めたら、近況を報告したいと思います!!

 

 

読書の初夏!!

5月も、ぼちぼち本を読んでおりました。読み終わったもので言うと、全3冊となります。あと1冊、今半分ぐらい読み進めたのがあるけど、それは6月に繰り越しですね。

この3冊のうち2冊は、ちゃんと近々、感想回を行おうと思ってます。ので、ここでは「何を読んだか」だけ紹介して、「どんな話だったか」というのは、また今度にします。つまり、「読書感想会の次回予告」的な感じですね。

 

① 村田和代『優しいコミュニケーション 「思いやり」の言語学』(2023,岩波新書

読みました。4月に出た新刊ですね。

ぶっちゃけ、微妙かな〜〜〜〜という感じでした。詳細はまた後日(来週ぐらいに)書きたいと思います。

 

② 津野香奈美『パワハラ上司を科学する』(2023,ちくま新書) 

読みました。今年の1月に出た本なので、比較的新しいと思います。

こちら、かなり面白かったです。読んでよかったという感じでした。これも近いうちに紹介したいと思います。

 

③ 平尾昌宏『人生はゲームなのだろうか? <答えのなさそうな問題>に答える哲学』(2022,ちくまプリマー新書

読みました。去年の2月に出た本なので、結構前だな〜という感じ。Kindleで買って読みました。

これはね、まあまあかな〜〜? という感じ。上二つと違って、これは多分、ブログで取り上げることはないので、若干感想を書いておこうと思います。

まず、中高生向けというコンセプトに忠実だなと感じました。語り口がかなりくだけていて、非常に読みやすいと思います。そこがよいところというか、あんまり哲学とかに興味はない人でも、「哲学ではどんな風に議論するのか?」というのがよくわかるように思います。哲学では実験とかができない代わりに、こういうことをやっていくんだ.....というのが丁寧に説明・実演されていました。

ただ逆に、気になったところとしては、ちょっと初心者向けすぎるな〜というのがあります。本書では哲学の手法として、当たり前や常識を疑うということが紹介されるんですよね。ちょっと引用するとこんな感じ。

 こういうとき、科学だったら実験や観察して調べるわけです。分かりやすいやり方です。だけど、今我々が考えているのは、どうもそういったやり方で解決できる問題ではなさそうです。じゃあどうするか?(中略)

  前に出てきた言い方で言えば、「自分の中でまだはっきりと自覚できていないけど、暗黙のうちに〈こうだ!〉って決めてしまっている、思い込んでしまっているというような、隠れた前提を自分で掘り起こしてみる」と言ってもいいです。

平尾昌宏. 人生はゲームなのだろうか? 〈答えのなさそうな問題〉に答える哲学 (Japanese Edition) (pp.97-98). Kindle 版. 

ここで書いてあることは、僕も本当にその通りだな〜と感じます。ただ、この観点から本書を読んでみると、「割と暗黙の前提的に解決しているところ多くない?」と思う箇所がありました。実際はもっと掘り下げて考えられそうなところでも、「まあこれはこうだよね」的に解決されているところが、なくもないかな〜というか。

例えば、「人生はゲームなのか」という問題を考えるときに、本書では、「①ゲームには目的(ゴール)がある。かつ②ゲームにはルールがある」として、「じゃあ人生はどうなのか?」という風に考えます。で、本書では、「①人生には決まった目標はない。② 人生には法や道徳といったルールがある」→「①、②の条件のうち、一つしか満たさない以上(①は満たさないが②は満たす)、人生はゲームではない」という結論が出されています。ざっくり書くとこんな感じ。

ただこれは、個人的には微妙に思って、「人生には法や道徳といったルールがある」という話だって、無人島で生きるロンビンソン・クルーソーとかどうするのかな? と思います。彼の生も「人生」ではあるだろうけど、そこに「ルール」があるのかというと、物理的制約はあるにせよ、「ゲームのルール」的なものはないんじゃないだろうかと。

それで言うと、①の「人生に決まった目標はない」という話も、ロビンソン・クルーソーにとっては「生き抜くこと」が目標であるように、我々人間は皆、「生き抜 survive」という目的をもってこのゲームをプレイしている...... とは言えなくもないかもしれません。いやこれも微妙かもしれないけど、ともかく、こんな感じで、本書は納得のいくところも多かったけど、同時に「そうかあ?」と思うところもありました(他にはマネーゲームの章など、この気持ちが強かった)

そんなわけで、総括すると、想定している読者のレベルが結構低めなのかなと思いました。だからやっぱり、中高生向けというちくまプリマーの理念を体現した一冊だとは思います。哲学・倫理学の入門に触れてみたいという方にはおすすめです。

 

④源川真希『東京史 ——七つのテーマで巨大都市を読み解く』(2023,ちくま新書

読んでいる途中です。これもこの前出たばかりの本で、Kindleでお風呂で読んでます。

感想を書くかはわからないけど、個人的には、東京に住んでなかったら絶対読まない一冊だな〜というのが面白いところです。京都人でこれ読んでる人ゼロ人説。

結構、既に東京に詳しい人向けだなとは感じます。地図を見ながらじゃないとよく分からない感じ。でも、色々勉強になるし、行ってみたい場所も増えるので、いい読書体験だなと思います。

ちなみに、交通網について述べた次の文章、

近代における移動手段としての鉄道と自動車の役割は大きく、鉄道の路線と道路の拡大は、とぎれることなく続く。新橋・横浜間の鉄道開通に始まり、上野から埼玉県の熊谷に鉄道が敷設された。その他、明治中期には新宿から立川を結ぶ線、本所と千葉県の佐倉を結ぶ線などが開通する。さらに明治後期から大正期にかけて、現在の中央線、山手線、京浜東北線の一部などが整備されていった

源川真希. 東京史 ──七つのテーマで巨大都市を読み解く (ちくま新書) (p.50). Kindle 版. 

みなさん、太字の部分、何を言っているかわかりますか? 都会に慣れてる人からすれば、「あーはいはい」という感じかもしれないけど、僕は田舎者なので、地名とかまだよくわかんねえっす、、、

読書については、そんな感じです。本当はもっと読みたかったんだけれど、5月は初っ端に大熱出して寝込んだりして、思うように進められませんでした。6月は頑張って、何冊か読みつつ読書感想も書こうと思います!!

 

最近面白かったもの!!

漫画

だいぶ長く書いているので、巻き気味でいきます。最近面白かったものについて。

5月はひとつ、めちゃくちゃ面白い漫画に出会いました。なんだと思う? なあ、なんだと思う?? 

正解は、乃木坂太郎先生による、『夏目アラタの結婚』です。この漫画、快活クラブで読んだけど、個人的にめちゃくちゃ面白いなと思ってます。

↑既刊10巻。意外とすぐ読めるよ。

ざっくり言うと、「結婚がテーマのミステリー」という感じなんですが、「結婚」の話も、「ミステリー」のパートも、どっちもとても面白いです。もうひとつ、児童虐待というのもテーマの一つになっていて、それが結婚の方にもミステリーの方にも働いていて、よくできてるな〜〜と思います。

今のところ、「俺の中でこの漫画がすごい 2023」で一位です。最新刊まで読んだけど、もうあと2巻ぐらいで終わりかな〜〜という感じがするので、読んでいない人はお早めに! 映画化もするとの噂。

 

音楽

皆さま、今回の記事のタイトル、なんのことかわかりますか? すみません、分かって当然ですよね...... みんな聴いてるもんな。スピッツの新アルバムが出ましたね。

↑17th アルバム 『ひみつスタジオ』

正直言うと、結構よかったです。僕はスピッツ、好きなんですが、実はアルバム「見っけ」以降、あんまりハマれてないんですよね。「醒めない」までが好きというか。ちなみに一番好きなアルバムは「名前を付けてやる」だよ。

そんなわけで、最近のスピッツはあんまりハマれないな〜と思っていたところ、今回の 『ひみつスタジオ』は結構よかったです

特によかったのが、「オバケのロックバンド」と、「めぐりめぐって」です。「オバケのロックバンド」はファンからすると熱い仕掛けがあるし、「めぐりめぐって」は、なんとなく以前からのスピッツぽいなーと感じるところがありました。ノリノリな感じなのもよいね。あと、「手鞠」も割と好きです。

そんなわけで、5月はスピッツの新アルバムが出たので、ちょっと嬉しかったです。今後、映画「水は海に向かって流れる」の主題歌もやるらしいので(漫画読んだよ!!)、それも楽しみにしています。

 

 

最後は今月のプレイリスト!!!

 鴨が...... 好きだ......


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5月は、割とたくさん聴きました。20曲、57分です。快活で漫画読んでるときに聴きまくってたよ。

もう音楽の話はしているので、手短に紹介すると、Beach Fossils というバンドが改めてよいなと感じました。

↑5月に出たep。「Run To The Moon」と「Dare Me」が特によい。

 


www.youtube.com

 

最近は、徒歩通勤も健康的だなと感じているので(普段はチャリ通)、意外とたくさん歩いたりしています。そういうとき、「今月のプレイリスト」があると心強い味方となるので、皆さんも作ってみてはいかがでしょうか。

 

 

 

以上!!

5月の振り返りとしては、こんな感じです。今更ですが、平日夜にガーッと書いているので、誤字・読みにくい箇所などは、何分ご容赦ください。

ちなみに、来る6月の抱負は、ブログを3回更新するです。読書感想 + 面白記事 + 月の振り返り、とできればいいけど、面白記事はたぶん無理だな。またリブ子とハカセとかやりたいんだけども.......

そんな感じで、明日も仕事なので、今日はこのあたりで解散です。最後まで読んでくださった方、いつもお付き合いいただきありがとうございます。今後は月2回以上更新するよう頑張りますので、なにとぞ、なにとぞよろしくお願いいたします...... それでは!!

 

 

 

 

はてなブログさんにTwitterで紹介していただきました。ちょっと恥ずかしいですね。ありがとうございます。

 

 

財務のお仕事と、読書の日々の振り返り:4月はもう去った......

ども!! 熱いのか寒いのかよくわからないこの頃、皆さまいかがお過ごしでしょうか。服、何着ればいいのか謎ですよね。僕はもうさすがにヒートテックはしまいましたよ。皆さんはどうですか?

 

↑4月半ば、横浜に行ったときの写真。雲がいい感じですね。

 

さて、本当にあっという間ですが、4月が終わってしまいましたよ!! 皆さん!! 人生史上、一番短く感じた1ヶ月だったかもしれません。働き始めて、多くの人と新たに知り合い、色んなことがありました。だからこそ、振り返りが大事だと心得ます。

この4月を一言で振り返ると、意外と仕事はいい感じで、読書も結構がんばれた、となると思います。前回の記事でも書いたけど、現状はそれなりに、仕事の面は余裕のある生活を送れています。

そしてこの4月は、読書についても、これまでにない新たな楽しみ方を見つけられたように思います。その辺りについても振り返っていきます。お待ちかね、プレイリストの紹介もあるよ!!

 

 

 

仕事!!

皆さん、正直なところ僕の仕事生活、本当に興味ありますか? ない? 無かったらごめんだけど、まあ簡単に振り返っていきます。

何をしているのかだいたい分かってきた

betweeeeeen.hateblo.jp

前回の記事では、「OJTという名の現場ぶちこみ投入で、自分が何してるか本当は全然理解してない」という話をしました。その続きになりますが、この頃、自分が何をしているのかだいたい分かってきました! 1ヶ月かけてようやくですね。ちなみにこれって普通なんですかね? どうなんでしょう。

で、それを一言で言うと、自分の場合は「監査との闘い」になると思います。監査って皆さん、ご存じですか? お金の記録をちゃんと付けてるか、なんか知らん連中が調べに来るイベントなんですけど......(詳しくは僕も知らない)。その知らん連中との闘いが、僕の仕事内容の中核になっていると思います。

で、もちろん「闘い」と言っても物理攻撃でボコボコにするわけではないですよ。要は、監査に耐えられるだけの書類をちゃんと作ろう、という感じです。当然、不正を見抜かれないようになんとか誤魔化そうという話ではなく、「監査が来ても何も困らないぐらい、公正で誠実な会計処理をして、この社会に対する責任をしっかり果たすんだ」という感じです。そう書くとめちゃくちゃ立派だな!!

僕は某国立大学で財務系のお仕事をしているわけですが(最近、こういうのはあんまり明かさない方がいいんだろうなと感じるけど、でもやっぱりブログは自由に書きたいので、怒られるまではこんな感じで行きます)、前提として、国立大学法人って国から結構な額のお金をもらってるんですよね。国民の血税によって、研究なり教育なりをしているとも言えるわけです。勿論、税金以外の予算もたくさんあるけど、それはいったん置いておいて...... ともかく、税金が投入されている以上、そのお金がどんな風に使われたのかをしっかり記録して、公正な用途で使われていることをしっかり示していかなければならないわけです。

で、そのときに例えば、もし教授とかが「実験に必要だから」と言いつつ、実はその金で盛大に飲み会してた(実験は行ってなかった)とかだと、「いやそれ税金だからな!!」となるわけです。
あるいは教授が、年間300万の予算を付けて、研究室に秘書を雇います...... と言いつつ、実はその秘書が教授のお母さんで、しかも何の業務もさせずにお金だけ受け取ってたりしたら、「お前...... 税金を私物化すな!!」となるわけです。だからこそ、実験器具を買ったというなら、その研究室に出向いて、ちゃんと納入しているかを確かめたり(あるいはもう、こっちでその器具を発注しちゃうとかもある)、秘書を雇うと言うなら、派遣会社とかに連絡を取って、こちら側でその人材を調達したりだとか、そういうことをするわけです。僕の仕事は大まかに言えばそんな感じですな。

こういうの、研究者からすれば「いちいちめんどくせよ!!」という感じかもしれませんが、まあ仕方ないっすよね......  税金が投入されていて、何より監査があるんですよ、監査が。僕はまだ「監査」というものが何なのかよくわかってないけど、我々にとって最も恐ろしいもので、恐怖の象徴ということは、この1ヶ月でなんとなく理解しました。

仕事については、そんな感じです。

あと、財務の仕事として、未払金の計上とかしています。皆さん、「未払金の計上」ってどんなことか分かりますか?

試しに検索してみると、次のような説明が出てきます。

 

support.yayoi-kk.co.jp

商品の購入やサービスの提供を受けた月の翌月に代金が支払われるケースで、普段代金が支払われた月で経費の仕訳をしている場合、決算月の処理には注意が必要です。
決算月に商品の購入やサービスの提供を受けたものは、その会計期間の経費として計上すべきですが、代金が支払われた月で経費の仕訳を行うと翌年度(翌期)の経費となります。
そのため、決算月に商品の購入やサービスの提供を受けたものは、経費の未払計上をします。
具体的には、以下のように仕訳します。

【例】
12月の電気代12,567円が、翌年1月に普通預金から支払われる

【仕訳】
・12月に電気代を未払計上するときの仕訳

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
水道光熱費 12,567円 未払金 12,567円 12月電気代


・1月に電気代を支払ったときの仕訳

借方勘定科目  借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
未払金 12,567円 普通預金 12,567円 12月電気代

 

 

こういうのね、一月前ならちんぷんかんぷんだっただろうけど、今は何言ってるかだいたいわかるようになってきました。「そうだよね〜」という感じです。それがこの1ヶ月の成果ですね!!

 

読書について

この4月、意外と読書を頑張れました。今は定時で絶対帰るマンをやっていて、平日夜が結構暇です。ので、よく図書館に行ったりしています。

あと、Kindle paperwhiteを買い直しました。以前は、2021年に買ったモデルを使ってたんですが、これが本当にゴミカスOSでして、ストレスの塊だったんですが、新モデルは結構いい感じです! 動作のもっさり感がだいぶ減りました。で、これで毎日、お風呂読書を継続しています。

↑結構いい感じです。先代が酷すぎたのもあるが......

そんなわけで、4月に読み終えた本を、本当に簡単に紹介します。まあたった2冊なんですけどね。

 

1.ジェイコブ・ソール著、村井章子訳『帳簿の世界史』(2015,文春文庫)

前回の記事でも紹介したこちらの本、ちゃんと読み切りました。全13章で370ページぐらいあるので、読み切るのが大変でした。でもめちゃくちゃ面白かったです。

『帳簿の世界史』という邦題の通り、帳簿を付けること、すなわち「会計」によって、歴史がどのように動いてきたかを追う内容になっています。全13章のうち、第11章でようやく「アメリカで鉄道開通」(1860年頃)なので、だいぶ中近世の話が多めです。11章までは本当に、高校で世界史やってたからギリ分かるな〜という感じで、メディチ家とかネッケルとかコルベールとかが出てきて懐かしいです(ちなみにセンターは日本史と世界史で受けたよ)

12章が、20世紀頃の「会計」がフィクションでどう描かれていたかについてで、『クリスマス・キャロル』のスクルージの話とか出てくるので、結構読みやすいです。13章は、リーマンショックがなぜ防げなかったかとかの話で、これも現代に通じるところがあるので、面白く読めます。ので、そんなに世界史好きじゃないよという人は、この12・13章だけ読むのでもいいかもしれません

内容的には、前回も紹介した通り、会計と倫理、そして政治との繋がりとなっています。会計を行う上では、強い職業倫理が求められて、その倫理観が文化的に根付いている体制ほど、歴史を見ると政治的に安定していた、という感じ。この、職業倫理→政治の安定という話は、今までにあんまり見たことのない切り口だったので、とても面白かったです。
あともう一つ面白かったのが、人々は「会計士」に対して、ある種の憧れやかっこよさを抱くと同時に、信用できなさもしっかり感じてるんだ、という話です。お金を緻密に管理する人間は、勤勉・節約家と讃えられることもあれば、守銭奴・拝金主義と罵られることもあるはず。そのあたりの二面性や矛盾を、絵画や小説を題材に読み解いているのも「はわ〜〜〜」という感じでした。

特に印象に残っているのが、会計士に向けられた批判の一つで、「もはや会計士は公平な審判者としての役割を忘れ、法律すれすれのリスキーな会計技術を駆使するだけの人間になってるよ」というものです(350頁)。会計をする上で、法の趣旨や精神を果たそうとするのではなく、ギリギリ違法にならないラインを見つけて力業でなんとかしようとするっていうのは、僕も仕事上、「なんかわかるな.....」という感じです。なんというか、違法じゃないからセーフっていう感覚がね、段々とよく分かるようになってきてます。

その点、本書ではアメリカの超著名な会計士アーサー・アンダーセンを紹介した箇所で、次のように書かれています。

アンダーセンは職業倫理を重んじ、監査人が考えなければならないのは何よりもまず投資家のニーズに応えることだとし、「会計士は財務報告の公正性を保つために、判断と行動に絶対的な独立性を確保しなければならない」と主張する。そして、「シカゴ中の金を積んだところで」自分が不正確あるいは不正だと感じた帳簿にサインさせることはできない、たとえそれで大手顧客を失うことになっても、と断言した。(343頁、太字は引用者)

絶対に公正な審判者であり続けようという姿勢、これね、カッコイイですよね。僕もこういう、職業倫理を身につけたいと思いました。social justiceの人間でありたいですね!!

 

 

2.椎名美智『「させていただく」の使い方 日本語と敬語のゆくえ』(2022,角川新書)

2冊目。こちら、お風呂Kindle読書で読みました。読みやすかったし、内容的にも大変面白かったです。

その名の通り、敬語研究(「させていただく」研究)の本ですね。探究する問いとして、次の3つが挙げられています。

(1)人々はなぜ「させていただく」を便利だと感じるのか?
(2)人々はなぜ「させていただく」に違和感を覚えるのか?
(3)日本語の敬語の変化の中で、どのような流れがあったから、「させていただく」が好まれるに至ったのか?

椎名 美智. 「させていただく」の使い方 日本語と敬語のゆくえ (Japanese Edition) (p.77). Kindle 版. 

「させていただく」についての便利さ、違和感、そして変遷の3つですね。「正しい敬語の使い方を教えるよ」的な内容ではなくて、「私たちはこの『させていただく』を多用することによって、その実何をしようとしてるのか?」的な話となってます。

僕も最近、仕事でメールを書く機会が増えました。で、「させていただこうと思います」とかの回りくどい表現をよく使っちゃってます。だからこそ、こんなに敬語を飾りまくって、俺たちは結局何をしようとしてるんだ?? という話は、大変面白く読めました。

で、本書で紹介されているのが、言語による「遠隔化」と「近接化」という効果です。例えば敬語を使うと、相手との関係性や心の距離が遠くなり、「遠隔化」が起こる。逆にタメ語を使うと、相手との距離感が近くなり、「近接化」が起こる。そのように、敬語というのは、相手との心の距離感の調整のために使われるんだという話がされています。

そもそも敬語とは、尊い相手に触れないように距離をとるために使う言葉です。つまり、私たちは相手に対する敬意を距離感で示しているわけです。敬意が大きければ大きいほど距離を大きくとることになります。遠ざかることを「遠隔化」というので、敬語には遠隔化作用があると言えます。

椎名 美智. 「させていただく」の使い方 日本語と敬語のゆくえ (Japanese Edition) (p.84). Kindle 版. 太字は引用者による。

私たちはこのように、敬語を遠隔化の道具として、タメ語を近接化の道具として使っています。これまで敬語を使っていたのに、急に使わないで話すと相対的に近づくことになり、馴れ馴れしい感じがします。逆に、これまでタメ語を使っていたのに敬語を使うと、距離ができてよそよそしく水臭い感じがします。敬語とタメ語を相手や場面に応じて臨機応変に使い分けることによって、私たちは相手との距離を調節しているのです。

椎名 美智. 「させていただく」の使い方 日本語と敬語のゆくえ (Japanese Edition) (p.84). Kindle 版. 太字は引用者による。

この「距離感の調整」というのが、個人的にかなり納得でした。これは「させていただく」に限らず、色んなところで使っていると思います。例えば、「〜〜なんすよ」という言い方は、ちょっと馴れ感を出しつつも、他方で丁寧感も出していて、絶妙に相手との距離を測る言葉だなあと思います。4月から社会人始めて、色んな人と会う機会が増えたので、確かにそこでこういうことやってるなというのを感じました。

もうひとつ、印象的だったのが、現代の敬語は必ずしも、相手に対して敬意を示していないという話です。これが本書の核心的な内容になるんですが、じゃあ我々は敬語を使って何をしているのかと言えば、それによって自らの丁寧さ・慎ましさをアピールしているんだという話です。

用法が変化している「させていただく」の使用状況を観察するには、敬語全体の時代的変化も関連づける必要があると思います。第五章で調査結果を総括する際に考察していきますが、私たちの敬語使用が動作主や動作の向かう相手に対して敬意を示す従来の伝統的な敬語から、コミュニケーションの相手、つまり聞き手を意識して、自分が丁寧に話していることを示すタイプの敬語へと傾いてきているのではないかということです。

椎名 美智. 「させていただく」の使い方 日本語と敬語のゆくえ (Japanese Edition) (p.84). Kindle 版. 太字は引用者による。

こんな感じで、実際のデータとかを参照しながら、「させていただく」が相手への敬意を示すというよりは、むしろ自身の丁寧さを示すために使われていることが論じられます。詳しい分析については本書を読むべし。

この「自身の丁寧さのアピール」というのも、かなり納得のいく話でした。僕もコテコテの敬語を使うとき、相手のことを考えるというよりは、「自分がどう見られるか?」という方向に意識が行っているように思います。で、あまりにも相手がこういう用法を使っている時には、確かに「させていただく」に対して違和感みたいなのも生じるなあと思いました。お前、自己防衛のためだけに敬語を使ってるやろ的な......

そしてまあ、当ブログでも基本的に、敬語(丁寧語)を使って書いているわけです。これも本当に、距離感の調整と自身の丁寧さのアピール、両方やってるなと思いました。丁寧語を使うことで、読者に対して一定の距離感を保ちつつ、かつ「俺は独りよがりな文章を書いてるんじゃなくて、ちゃんと読んでる人のことを考えてるんだぜ」というアピールも行ってるなあと、そう思います。
個人的に、「だ・である」系の日記が苦手なんですが、あれってなんとなく、断定口調で、読者のことを全く気にしない感じが出ている気がするんですよね。お前らがいてもいなくても、俺の文章には関係ないぜ的な。で、そういうことを避けるために、僕自身は、読み手をどこかで想定しているような、「です・ます」系の文章を使っているなあと思います。この「思います」もどこかそういう感じですよね。

そんなわけで、言葉の使い方に目を向けるっていうのは、結構面白いなと思った話でした。

村田和代『優しいコミュニケーション 「思いやり」の言語学』(2023,岩波新書

今は↑のような、社会言語学という分野の本も読んでいるので、これも読み終わったら感想を書きたいところです。

 

読書の新しい楽しみ方?

最後にちょっとだけ、最近の読書観について。働き始めてから、以前より、本を読むのが楽しくなったように思います。というより、本を読むときの「楽しみ方」が変わりました。これは最近気付いた変化で、うまく文章化できるかわからんし、だいぶポエミーになってしまってますが、一応書いておこうと思います。

以前より、読書の楽しみ方が変わりまして、この世界を好きになるために本を読むようになったと思います。どういうこと?? どういうことなんですか??

社会人になってから思うのは、(これは知り合いの多くが同じことを言っていたけど)今後の人生のあらましが、なんとなく定まったものように見えてくる、ということです。学生の時は、これからの自分の人生がどうなるか分からず、色んな可能性が見えてました。ただ社会人になると、「だいたいこうだな」というのが分かってくるという話です。もちろん、実際は色んなことが起きて、予想も期待も日々裏切られるのだろうけど、でもやっぱり「だいたいこうなんだろうな〜」という未来予想図は持ってしまいます。

そうすると、次に思うのが、何のために生きるのか? ということで、未来がだいたい(朧気でも)見えてしまうと、「じゃあ、その人生を生きる意味ってあるのかな?」と感じてしまいます。生きる意味、意義、ですね。誰しも、色んなフェーズでこれを真剣に考えると思うけど、社会人になった瞬間、その瞬間は特に、これを悶々と考える契機になると思います。だいたい「60過ぎまで働いてその後死ぬんだな」というビジョンが見えてくるし、「分かりきった未来を生きる意味ある?」ともなります。

で、そこで僕が思う「生きる意味」ですが、、、 この世界は不思議に満ちていて、知れば知るほど面白いから、全然死んでる場合じゃねえ!! と、このところは考えています。「死んでる場合じゃないから生きる」っていう、どこかで聞いたことのあるセリフですね。「この世界が好きだから生きる」と言ってもいいですよ!! おめでたい奴ですか? まあそうかもね!!

当然、面白いことと同時に、理不尽や糞みたいな、というか不条理で不条理を煮た地獄汁みたいなのを飲まされること多いけれど...... でもこの世界って、本当に、知れば知るほど不思議が増えて、そこは最高に面白いと思います。

で、話が一周して戻ってきて、そういう世界の面白さを知るために、読書ってイイよね、、、という着地です。気になる本を読むと、この世界の不思議の解明に、一歩近づけると思います。そうした読書の楽しみ方を、この頃感じているところです。

これが「以前と違う」というのは、院生をやっているときは、もっとこう、読書を何かに役立てようと気持ちが滾っていたように思います。研究に役立てようとか、必要な知識を身につけようとか、そんな具合で。あのときも読書は楽しんでいたけど、もっとこう、常に頭の中に「論敵」がいて、そいつと戦うために本を読んでいた感じです。その「論敵」は、先行研究だったり、身近な教授・院生だったりしたけども、ともかく、どこか切羽詰まった読書をしていたように思います。

そういうのが今はなくなって、もっとこう、「世界を好きになるために」本を読んでいるんだと、少しはそう言えるようになってきています。これがどういうことかというと皆さん、身近な読書量の半端ない院生を思い浮かべてもらって、その人が、「俺はこの世界を好きになるために本を読んでいるんだ」と言うかというと、おそらく、絶対に言わないですよ、たぶん。どちらかというと誰かを殺すために本を読んでるような奴等だからな。あるいはこの世界をぶっ壊すために。それも大事だけど、お仕事を始めてからは、なんかそういう破壊感情がなくなったように思います。

そんなわけで、最近はもうちょっと、違う角度から読書を楽しめるようになってきているという話でした。ポエミーな時間終わり!! ご静聴あざました!!

 

 

4月のプレイリスト

毎月恒例、その月のプレイリストとなります。ただ、今月はあんまりよい感じじゃなかったね。13曲、36分です。

このサムネの場所がどこか分かったらすごい。

通勤をチャリにしていると、あまり音楽を聴く時間がありません。そういうことも相俟って、今月はいい感じの曲をdigれませんでした。

印象に残っているのを一つ挙げるなら、susquachというバンドの「spin the words」かな。

open.spotify.com

susquatch、全然知らなかったけど、めちゃいいですね。これを期に聞こうと思います。ちなみに日本のバンドですよ!!

もうひとつ、このプレイリストにはないですが、4月にリピートしていた曲で、the marshmallow kisses「The Best Days We Used To Have」です。


www.youtube.com

marshmallow kissesというバンド、覚えてますか? 実は先月の記事でも紹介してますよ!! これ、アルバム全体がめっちゃいいんですよね。

この曲の歌詞で、「Don't let our chances turn to regret」というのがあって、意味は「私たちのチャンスを後悔に変えないで」というシンプルなものなんですが、そのシンプルさがめっちゃいいな〜〜と思います。シンプルなのが、結局響く、時もある...... 今がそのときなんだ。

 

 

 

以上!!!

です。月のまとめにしては長くなりましたが、こんな感じです。

読書欲が高まっているので、また近々、2週間に1回ぐらいは、更新したいなと思っています。色んな新書を読んでいきたいところ。そんな感じで、当ブログも頑張らさせていただくので、これからもどうか何卒よろしくお願いいたします。もうかつてのような深夜更新はしないけどな!!

 

 

あいだた on Twitter: "4月の振り返りです。結構たくさん書いてます。 財務のお仕事と、読書の日々の振り返り:4月はもう去った...... - 浅瀬でぱちゃぱちゃ日和 https://t.co/1C8qDLPKsY" / Twitter

 

 

 

 

 

 

働き始めて2週間!! OJTと帳簿の世界史

ども!! 春の陽気に満ちあふれる今日、皆様いかがお過ごしでしょうか。暖かくないですか!? 東京は近頃、最高23度ぐらいの日々が続いています。日中ずっと狭いオフィスでパソコンに向き合ってるしかない「社会人」という身分がとにかく憎い季節です。

4月15日現在、新年度が始まって、約2週間となりました。早いのか遅いのか。この4月、既に新しい出会いなどがあったりもしたと思います。そのとき、この春に別れを迎えた人に対して、「あいつ、今頃どうしてんのかな......」と、思いを馳せることはあったでしょうか? ない? 全くない? 特に僕に対して、どうですか? まあ「ない」かもしれませんが、僕は僕で、この場を借りて新年度の活動報告を行っていきたいと思います。社会人、働き始めて2週間の近況報告となります。

 

働き始めてどう?

4月3日から働き始めて、既に10日間の実労働を終えてきました。毎日、9時出勤で、一応定時が17時45分という感じです(1時間休憩ありの7時間45分労働)。で、今のところの、社会人を迎えてみての感想ですが、

 

 

まあ、正直、

 

 

✝余裕✝

 

 

ですね。

 

調子に乗ってすみません。でも本当に、「思ったより余裕があるな」というのが、現時点での感想です。

 

で、だからこそ、つまり余裕がある今だからこそ、ブログの更新をやっておこうという話です。今のうちに、働いて2週間の感想を振り返ってみたいと思います。もし仕事が忙しくなってきたら、多分休日もブログどころではなくなるのではと思うので(そんなことしてる暇あったらもっと何かこう....... 何かしてると書こうと思ったけど、やっぱりブログ書いてるかもしれないですね、余裕がある今だからこそ、ここまでの記録を残そうという感じ。とりあえず現状、働き始めの2週間、どんな感じだったのかというのを書いておこうと思います。

で、「お前の社会人生活なんて微塵も興味ねーよ!!」という人もおるかもしれないけど、これからはそういう記事が増えそうなので、お付き合いいただければ幸いです。

 

何の仕事してるの?

一応、ざっくりとは、国立大学の財務系の仕事に就いてます。ただ、なんというか今は、本当にただひたすら上司に言われたとおりにパソコンにデータを打ち込んでるだけです。そうして、何らかの書類を作って、どこかの偉い人に提出しております。毎日、だいたいそんな感じ。

正直なところですね、本当に、自分が何をしているのか全然理解してないです。哲学者のジョン・サールがですね、「中国語の部屋」という思考実験を紹介してまして、「中国語が全く分からない人間が、中国語が本当に分からないんだけれども、渡されたマニュアルどーりにタスクをこなすことで、外部から見ればまるで『中国語を理解して行動しているように見える』というとき、この人間は実際に中国語を『理解』していることになるのか?」というものです。で、まさに今の自分もそんな感じです。中国語の部屋ならぬ、財務会計の部屋ですね。財務・会計の仕事をしているらしいが、実際はそれが何なのか全然理解しておらず、渡されたものを記号的に処理しているだけとなっています。

ja.wikipedia.org

 

この時期、財務系の仕事はどこも忙しいようで、年度の切り替わりで予算関連がややこしいことになってるみたいです。で、僕の上司としても、とにかく書類の処理を終わらせないといけないので、「説明はあと!! とにかく作れ作れ作れ!!」という感じっぽいです。現状「何の作業をしているのか」の総論的な説明はあまりなく、とにかく「よくわからんけどこれを埋めていけばいいのね......」という、ぶっつけで各論をこなしていく感じとなっています。

 

新入社員とOJT

で、この「ぶっつけ感」はもしかしたら、新卒社員あるあるなのやもしれません。一方で、最初の2ヶ月ぐらいはみっちり研修を重ねて、そのあとで配属が決められる会社もあるけれど、他方で、初日から配属先に飛ばされて、ひたすら実務に関わりながら覚えていくというスタイルもあるのだと思います。僕は完全に後者のタイプでした。いきなり戦場に放り出され、落ちてる武器を拾いながらなんとか戦っている感じです。ちなみに今は、ひたすら前任者のやりかけの作業を引き継いでいるらしい。何が何だか全然分かってないけど.......

こういう、いきなり現場にぶち込まれるタイプ、よく言えばOJTなのかなと思います。一応説明しておくと、OJTというのはOn the Job Trainingの略で、要は「仕事に携わりながら、それが研修にもなる」ということですね。就活中、ちっちゃめの企業を受けたときは、これが魔法の言葉のように唱えられていました。まあ、体系的な研修制度とかを備えていないところが言いがちなのかなとも思います。オンザ・ジョブ・トレーニングと言うと聞こえはいいけれど、実際はこれ「お前が・自分で・適当に」とかですからね(ググったらこういうことはたくさん言われている)。基本的には放任されて、あくまで必要最低限の説明しか受けられない感じですな。

そんなわけでですね、未だに、自分が何をしているのかわかっておらず、「前年度の参考にここを埋めといてね」ということの繰り返しをしています。最初に総論を示してくれる、民法のパンデクテン方式が懐かしいな〜〜とか思ってます。

で、最初に「余裕だ」と言いましたが、このOJTの影響でですね、とにかく残業が少ないというのがあります。10日間出勤したけど、残業時間は合計で2時間という感じ。基本的に定時で帰れています。

.......なんでかというと、上司からの指示がなければ何もできないからですね。自分一人でできることが、机をピカピカに磨くことぐらいしかない。で、上司も、そんな僕に手取足取り教えるよりは、「自分でやった方が早いわ」となってるんじゃないかなと思います。ので、部署的には繁忙期のはずだけど、やれることがないから早々に帰ってる感じですね。これはもう本当にしょうがない。

というわけで、現状は18時ごろに退勤して、そのまま区の図書館に行って読書をするぐらいには余裕のある日々です。ちなみに、これってどれぐらい普通なんしょう?? 「働き始めなんだから、定時に帰れて当たり前では?」という意見もあれば、「いや、働き始めといえども、普通に残業2時間ぐらいはするよ」という意見、どっちも目にしています。あなたはどっち派!? ひとまず、どちらにしろ、「余裕を持って過ごせている期間」があることは、大変よいことだなと思います。この日々を大切に抱きしめたい。

 

最近読んでる本

「図書館に行ってる」と書きましたが、もちろん本も読んでます。今現在、財務の仕事をしているということもあって、↓の本を読んだりしています。

帳簿の世界史

帳簿の世界史

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ジェイコブ・ソール『帳簿の世界史』(文藝春秋、2015)

アダム・スミスカール・マルクスマックス・ウェーバー.......。彼らが口を揃えて主張していた「帳簿」の力とは、一体何なのか。これまでの歴史家たちが見逃してきた「帳簿の世界史」を、会計と歴史のプロフェッショナルが、始めて紐解く。
(本書のカバー紹介文より)

この本ね、まだ途中だけど、面白いです。「帳簿」という、お金の出入りを記録する媒体が、どのように出現してきて、そして歴史の中でどのような役割を果たしてきたかという内容になってます。本当に世界史ですな。

特に面白いなと思ったのが、「会計」(account)というのは「責任」(accountability)なんだという話が初っ端に出てきたところですね。しっかり帳簿を付けるということは、外部に対して「責任を果たす」ということでもあるんだけれど、中世の王は「俺が責任を負うのは、神に対してだけだ!!」と言って帳簿を付けなかったりして、その結果として財政がズタボロになり国が崩壊したそうです。面白いですね。あと、帳簿を付けるのには、緻密な簿記のスキルだけでなく、不正に抗おうとする職業倫理も求められたそうで、その辺も、倫理を少しは学んできた人間として、興味深いな〜〜と思うところです。

本書からちょっとだけ引用すると、

会計と責任の相互作用は壊れやすく、しかもそれが一企業どころか一国の運命を決定づけることがある。したがって会計の歴史は、単に景気の変動や数字の増減の話ではなく、人間と政治の物語である。会計に熟達し、文化に根付かせながらも、往々にして恐れを忘れてしまい、不可避的に危機に見舞われることの繰り返しだ。この長い歴史を振り返ると、会計もそれに伴う責任も日々実践しなければならないにもかかわらず、その継続はじつにむずかしいことがわかる。会計は財政と政治の安定に欠かせない要素だが、信じがたいほど困難で、脆く、やり方によっては危険にもなる——
(本書、18頁、太字は引用者)

こんな感じで、会計にまつわる「倫理(責任)」と「政治」についてが論じられています。これがオモシレえんだ!!

で、この本、自分が財務に関わることがなければ、決して読むことのなかったものだと思います。かつ、自分が倫理や法や政治というものを勉強してこなければ、決して読むことのなかったものだとも思っています。今までの積み重ねがあってこそ、こういう本に手を付けていると言いますか......

何が言いたいかというと、僕はもう院生ではないし、研究者になるのはだいぶ昔に諦めたけれど、それでも何か問題にぶつかったとき、そこへのアプローチの仕方は昔から変わらないなということです。できるだけ自分の興味関心と引きつけながら、先行研究を読んで理解の糸口を見つけていく....... このスタイルが、これからの僕にとっても「正攻法」であり続けるんじゃないかと思います。

まぁつまり、大学院で育んだ魂が生きているよ、ということです。これからも、何か全く新しいことをやるにしても、学術書を読む精神を忘れずに頑張っていきたいなと思います。

ちなみに、この本が言うには、会計においては「複式簿記」というのが大変な大発明だったらしいですよ!! この本読んでから気付いたけど、僕も職場で複式簿記使ってます。あと、本書曰く、会計の歴史は常に「不正への誘惑に抗おうとする職業倫理の歴史」だったそうです。僕も、不正を断固として許さない強固な職業倫理を持ちながら、頑張っていこうと思います。

 

 

 

以上!!!

簡単な更新になったけど、今日はこの辺にしたいと思います。たぶんまた、月末になったら振り返り記事などを書く、はず。

今のところは、本当に今のところは、「社会人、思ったより余裕だな」というのが正直なところです。僕の実家にいる3歳の姪は、このところ毎朝「幼稚園に生きたくない」と泣きじゃくるらしいですが、僕は今はそうはなっていません。これからもそうならないよう、神と仏に祈る毎日です。

最後に、僕は元気にやっているよということで、もし皆さんも「新年度こんな感じだよ」というのがあれば、↓のフォームに書いてみてください。僕への苦情とか、不満とか、「お前本当に.......」というのがあれば、それも匿名で送ってもらって大丈夫です(怖いけど)。そんなわけで、今後ともよろしくお願いします。それでは。

 

 

暇な人は答えていって下さい。

 

 

 

 

 



 

 

 

 

 

3月の終わり、そして学生生活の終わり......:今月の振り返り記事

ども!! 新学期、そして新年度が近づくこの頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。もう3月31日ですよ!! 明日から4月、そして2023年度になるという、恐ろしい現実が待っています。恐ろしすぎて涙しか出てこない。

そんな今日は、3月の振り返り記事です。あっという間だった3月、僕らは何をしていただろうか...... そしていかなる希望を胸にこの先歩いていくのだろうか...... というところです。罪を重ねながらものうのうと生きている毎日を振り返ります。あと、皆さんお待ちかね、3月のプレイリストについても後半でご紹介したいと思います。

 

3月の振り返り

東京の楽しいスポット!!

2月の20日に東京に引っ越してきたので、もう地味に40日近く経っています。ただ、途中実家に帰省したりもしていたので、暮らしてる期間はジャスト1ヶ月ぐらいですね。もう、京都に住んでいた頃が、本当にはるか昔に思えてきます。懐かしいのう。

で、東京での生活ですが、以前にも書いた通り、とても楽しいです。僕は文京区という家賃がバカみてえにたけえところに住んでいるんですが、チャリを15分ほど走らせれば、上野にも後楽園にも行けるので、暇つぶしに事欠きません。あとは電車もまあまあ使いやすい立地なので、ちょっと離れたところでも遊びに行きやすいです。

で、3月の振り返りも兼ねて、最近行ってみてよかった場所を紹介してみようと思います。

 

小石川植物園(文京区)

 

文京区、茗荷谷駅近くにある植物園です。500円で入れる。ここめっちゃよかったですね。

よく東京は「コンクリートジャングル」なんて揶揄されますが、この場所は↑の写真の通り、ガチもんのジャングルっぽさがありました。それなりに広くて、植物も色んなタイプが生えています。

この植物園、またの名を東京大学大学院理学系研究科附属植物園」。東大の植物系の研究施設を、そのまま一般に公開している形のものです。温室とかもあります。非常に安らぐよ。。。

↑この日は3月1日だったので、梅が咲いてました。

ベンチとかも多数あって、本を読んだりとかでも過ごせます。気分はさながら、『金色のガッシュ』の高嶺清麿ですね。最初期の方の話。中学校サボって植物園で本読んでたとかオシャレですよね。

僕も社会人で疲れ切ったら、こういうところに来てリフレッシュしたいと思います。植物になりたい、とか思うようになるのだろうか。

 

不忍池台東区

2つ目は上野駅から歩いてすぐ、不忍池(しのばずのいけ)です。上野公園と隣接する形であります。

ここでは、池を眺めて、ぼーっとすることができます。ベンチもたくさんあるので、座って、ぼーっとすることができます。桜の季節は混んでいるけど、そうじゃないときは人も少なめでいい感じです。静かだし、読書とかにも向いてました。優雅だな〜〜〜

......ちなみに、ここでぼーっとしながら、僕が何を眺めているかわかりますか?

 

ヒントはぼーっとしながら、です。

 

 

皆さん!! 今日も楽しいですね!!

 


↑別アングル。人がめちゃくちゃ多い。

ちなみに、混んでるときはマジのマジに混んでます。上野公園に向かう道では、屋台が出たりもしているので、お祭り気分を楽しみたい方によいかもしれません。すげえ子どもたちがはしゃいでました。

上野公園も、いい場所なんだけれど、いかんせんこのシーズンは人が多すぎる。桜を見に行ったはずなのに、人間を見に来たのかなと思うぐらい人で溢れてます。視界の6割が人間なんだ。

 

皇居外苑千代田区

3つ目(最後)は皇居外苑です。今日行ってきました。ここもよかったですね〜〜

東京駅の西側の出口から出て、まっすぐ行くと辿り付けます。今日はなんか、乾通りの一般公開というやつで、中を探索することができました。普段がどんな感じなのかはわかんないです。

この皇居外苑の周り、一通り見てみたんですが、思ったのは土地の使い方が大胆だな!! ということ。東京駅の真ん前でありながら、かなーり広く土地を使って、でけえ公園が広がっています。入る際に手荷物検査とかあったので、普通の公園とはちょっと違うけど、それでもマジ広い憩いの場ではあると思います。

これに比べたら、名古屋駅も、京都駅も、ゴミゴミしすぎですな!! 駅前に余裕がなさ過ぎる。ただ、こっちは道路も広かったし、なんか広場とかベンチもあったので、意外と土地を大胆に使ってるんだな〜〜と思いました。

そんなわけで、東京、意外と自然が豊かです。人混みとか地下鉄とか、疲れる要素もあるけれど、同じぐらい癒し要素もありました。他にも新宿御苑とかすごいらしいので行ってみたいですね。

 

実家で姪と戯れた

他にも、3月の思い出として、実家に帰省したことがあります。新居にいつまでもWi-Fiが通らなかったので、一度実家のお世話になりました。実家に帰って、5km先の快活クラブに入り浸ったりしていた。

で、僕の実家には、現在3歳の姪(姉の子ども)がいまして、4月から保育園に通う予定らしいんですが、それまでは実家で面倒見る必要があります。姉夫婦が働きに出ていることもあり、普段は僕の母親(姪にとってはおばあちゃん)が面倒見ています。そこにこの度、叔父である僕も加わってですね、子育ての無料体験版みたいなことをしてきました。

まあ、、、、めちゃくちゃ大変でしたね。このぐらいの子どもって、まだ「定型のリアクション」が大好きなようで、向こうが何かしてきたら、だいたい毎回同じリアクションで返すことになります。例えば、「アンパンチーー!!」と言われたら、必ず「ぐあーーっっ!!」と返したり、「隠れるから見つけてーー!!」と言われたら、必ず(場所が分かりきってても)「どこだ〜〜?」と返す、などです。これをね、本当にね、100回は繰り返すんですよ。100は言い過ぎか。でもとにかく、向こうが飽きるまでやる。それが大変でした。

まあでも、誰にでもそういう時期はあったんだよな...... と思うと感慨深いですよね。僕やあなた、そして僕とあなたの父や母だけでなく、岸田首相にもきっと同じような時期があったんだろうなとか。アニメ『こち亀』のテーマソングの歌詞に、「誰でも一度は子どもだったけどみんな忘れてる〜♪」ていうのがあったんですけど、そういうのをなんか思い出しました。

あとは、姪の様子についても何か書こうかと思いましたが、小さい子どもの行いをネット上に記録として残すのは倫理的にどうなんだろうなとの思いがないわけではないので、この辺にしておきます。

 

本を読んで過ごした

あとは3月、だいたい本を読んで過ごしていました。

実は先日、ついに配属が明らかになりまして、僕は何か財務の仕事をするらしいです。財務?? 家計簿すらろくに付けたことのない僕が大丈夫なんでしょうか...... 

それでまあ、少しは勉強しておこうと思い、財務・会計に関する本を一冊読みました。それがこちら。

山田真哉『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』(2005,光文社新書)

この本ですね、非常に面白かったです。まず、ページ数少ない上に、文字が大きめなので、2,3日ですぐ読めました。かつ、我々の日常の身近な例から「会計」の仕事について教えてくれるので、とてもわかりやすかったです。☆5つ!!!

「財務」と「会計」がどれぐらい違うのかはわかりませんが...... どちらもお金の流れを読んで、次の戦略を立てるってところが同じなようです。そんな高度なことが僕にできるのだろうかと、既にだいぶ弱腰なんですが、頑張ります。

ちなみに、もう一冊、有斐閣アルマの『財務・会計入門』も読んでるんですが、、、

こっちは難しすぎて、現状何言ってるかわかんないです。本当に大丈夫か?

 

あとは現在、最後の「暇」の期間であるため、この本も読んでます。

國分功一郎『暇と退屈の倫理学』(2022,新潮文庫)

「2022年、東大・京大で一番読まれた本!!」と話題の一冊ですね。正確には「両大学の生協で、売り上げが一位だった書籍」とのことで、本当に「読まれている」のかは分からないと思います。買ってるだけかもしれねえもんな!!

面白いし、大変勉強になるんですが、ちょっと独特な文体のせいもあって、「ドはまり」という感じではないです。ので、感想とかも特に書かないかも。ただ、「なるほどね〜〜」と思うところは多々あるので、読んでいて面白くはあります。うん。

3月に読んでいる本はこんな感じです。あとは前回と前々回のブログで書いたとおり、労働法についてや、大学関連の事柄について調べていました。

もしかしたらこの3月は、人生で最も「自由に本が読める」期間だったのかもしれません。次のタイミングは多分老後なので...... ただ、現状は特に後悔とかはなく、まあまあたくさん読めてよかったという感じです。今後も読書の習慣は続けていきたいですね!!

 

 

3月のプレイリスト

お待ちかねーーー!!!! 3月のプレイリストの時間です。待ってた人おる? 多分おらんけど、今月もやっていきます。

今月のプレイリストはこんな感じ。

open.spotify.com

22曲、1時間9分と、過去最長ぐらいの長さになっています。今月はいい曲が多かった。

特によかった曲を紹介すると、まず一つ目が、

 

Everyone Else Is Ahead, Far Ahead / The Marshmallow Kisses


www.youtube.com

The Marshmallow Kissesというバンドの「Everyone Else Is Ahead, Far Ahead」という曲です。2分42秒の短い曲ですが、めっちゃいいですね。特に途中のキーボード? がよい。

歌詞もちょっと暗い感じでいいんですよね。最後のところ、「A piece of cake, piece of cake. But I failed」って繰り返してて、このネガティブさが、くぅーーっ!! って感じです。

もう1曲紹介すると、

 

Stay with Me / the Fur.


www.youtube.com

the Fur.というバンドの、「Stay with Me」とかもよかったです。この曲だけでなく、the Fur.というバンド自体がよいですね。他の曲も聴いてみている最中です。

3月も、聴く余裕があったのでたくさん聴けましたが、4月以降はどうなるやらという感じですね。電車通勤だったら、通勤しながら聴けると思うんですが、僕はチャリ通の予定なのでどうなるやら。まあでも、これからもたくさんdigっていきたいです。digるって死語じゃないよね?

 

 

以上!!

以上、この3月の振り返りでした。ちょっと普段より浅めかもしれないけど、こんなもんだと思います。

最後にひとつ忘れていました。そう、4月以降の抱負ですね。

4月の抱負ですが、ひとまず、

 

 

人に舐めた態度を取らない

 

 

これで行こうと思います。いや、それは4月の目標じゃなくて人生全体で意識しろよというのは、本当にその通りなんですが...... とりあえず、この4月は特に気をつけたいと思います。初対面が増える時期なので。

どうも、自分のクセとして、相手との距離を縮めようとして若干舐めたことを吐く癖があるように思います(このブログでも、舐めたことをたくさん言っているはず.....)。ので、気をつけたいなと思いました。4月の目標、調子に乗らず、慎ましく、ですね!!

ちなみに、2022年度の抱負ですが、↓の記事によると、

betweeeeeen.hateblo.jp

でした。

まあどっこいどっこいですね。そんなわけで、これからも、少しずつ成長していきたいと思います。

今日は以上です。次の更新、いつになるか正直わからないんですが、楽しみにしてていただけるとありがたいです。また必ず戻ってくるので。それでは!!

 

 

 

 

ガチ労働者になる前に労働法について学ぶ会:水町勇一郎『労働法入門』など

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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*元ネタ:皆川亮二『ARMS』(小学館

第1巻、3頁より

 

 



 

 

労働法の勉強をしてみようの会

 

 

はい!! というわけで、冒頭のクソ茶番に付き合ってくださった皆様方、ありがとうございます。今日はご覧の通り、労働法について少し学んでみようの会となっています。

ついに来週から働き始める私ですが、先日、大学の惨状について語る系の記事を書きました。で、その中で、職員に退職を強要する超絶パワハラ研修というものを取り上げました。どこかのコンサルを雇って、「研修」という名の下に、人格否定をしまくって自主退職させようとした案件ですね。詳しくは↓の記事を参照。かなりショッキングな内容ですな!!

president.jp

この記事を読んだときの感想は、もし自分がこういう目に遭ったらどうすればいいのか? ということでした。おそらく、基本的には辞めるか耐えるかの2択になりそうですが、ただ辞めるにしても、職を失うわけだからその先ちゃんと生きていけるか不安だし(借金とかあるかもしれないし)、耐えるにしても、そんな職場に居続けて本当にやっていけるのか? というのはあると思います。

で、これから頑張って働いていく身として、もし我々「労働者」を守る盾のようなものがあるのなら、それは知っておきたいところです。我々は、誰の、どんなことから守られているのか。逆に、単に守られることを越えて、使用者側と差し違えるための矛のようなものがあるのなら、それも知っておきたいところです。漫画『からくりサーカス』で言うと、「逃げる」「逃げない」の選択肢を越えて、第三の「闘う」が生まれるような、そんな感じですね(3巻あたりまでめちゃくちゃ面白いですよね)。

そういうわけで、前置きが長くなりましたが、本日は労働法についてちゃんと知っておこうよ!! の回です。「ちゃんと」とは言っても、判例を覚えたり条文の解釈をしたりとかではなくて、あくまで「教養」としてですが...... 労働法の成り立ちや、それがどんな仕組みで動いているのかは押さえておきたいところです。「労働者」という身分は、いかなる権利を有しているのか、そしてなぜそんな権利を持っているのか、というところですね。

ちなみに、僕は法学部の出身ですが、見事に労働法の授業は取ってなかったです。多分他のなんかの授業と被っててそっちを優先していた。そんなわけで、ほぼ知識ゼロですが、頑張っていきたいと思います。

 

水町勇一郎『労働法入門』を読みました

で、今回読んでみたのがこちら。先ほども画像で挙げましたが、岩波新書『労働法入門 新版』となります。

水町勇一郎『労働法入門 新版』(岩波新書、2019)

労働法入門系の本、実務家向けに書かれていて、あんまりガチの初学者向けじゃないことも多いんですが、こちらの本はかなり初学者向け(教養寄り)と思います。労働法の成立の歴史から、日本における特色、2018年の「働き方改革」のあれこれなども踏まえていて、なんかバランスがいいように感じます。

特に...... 皆さん、労働協約とか就業規則という言葉、知っていたりちゃんと説明できたりしますか?  僕は大変恥ずかしながら、労働協約とか知らんかったし、就業規則も「なんか、こう、いろいろ定まってるやつ」ぐらいの認識でした。で、他の労働法入門系の本を読んだときに、これらの単語が何の説明もなく使われたりしていたのだけれど(「当然知ってるよね?」的な)、本書ではちゃんと解説してくれていました。いとありがたし。そういう意味でも、しっかり初学者向けだと思います。

そんなわけで、今回は本書を使って、そもそも労働法とはどんなものかというのを確認していきたいと思います。労働法は、どんな風に成立し、どんなことをしてくれているのか。特に、僕個人としては、まずやつらが何をしてくれるのかということと、そしてなぜそんなことをしてくれるのか、というのが気になります。

 

 

そもそも労働法って?

そもそも労働法って何なんでしょうか? なんなんでしょうね??

「いや、『労働法』という法律は存在しなくて、実際には労働基準法、労働契約法、労働組合法、男女雇用機会均等法など複数の法律の総称であって……」というごちゃごちゃした指摘は置いといて、ごく簡単に言えば、それは労働者保護のための法律、と言えるように思います。例えば、労働基準法の第1条では、

第一条 労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。

ということを宣言しています。「人たるに値する生活」、いいですね。もちろん、単なる労働者保護だけではなく、労働関係の様々なことを定めてくれているのだけれど、中核的な理念としては「労働者保護」があるのだと言ってよさげな感じがします。

で、じゃあなぜそんな法律があるのか? というところで、本書『労働法入門』の説明を借りると(1-8頁)........ まず、今日の意味での労働法が生まれたのは、19世紀であるらしい。19世紀に入る前、1789年のフランス市民革命などによって、欧州の方で「個人の自由」という考え方が確立します。これと同時に、「契約の自由」という考え方も確立。伝統的な共同体とかから離れて、もう個人の自由な契約でやっちゃおうぜ!! という機運が高まります。

そして、この市民革命とほぼ同時期に、イギリスで産業革命が勃発。大規模な工業化が進展します。その結果としてどうなったかというと、「契約の自由」の名のもとに、非常に劣悪な条件で工場で勤務させられる労働者が増加してしまいました。超低賃金で1日12時間労働、さらには危険な環境で勤務させられることも普通にあり、労働者の貧困や健康問題が拡大していきます。で、それが単なる個人の問題を越えて、社会全体の問題となっていったわけです。そうすると、労働者の働き方について、ちゃんと法律等によって対処しなければ!! となり、労働や雇用の在り方に法が介入する形で、労働法が生まれた流れです。これが非常にざっくりした説明。

ここで面白いのは、労働に関しては、個人の自由(=契約の自由)に完全に委ねていてはダメだと考えられたことですね。なぜに、労働は個人の自由に任せっきりではダメで、法などが介入せねばならぬのか。本書ではそのことを、次の3つの点から説明しています(9-10頁)

第一に、労働契約においては、単なる「物」や「土地」などの交換を越えて、労働者自身の身体を取引の対象に入れていること。本書の言い方を借りれば、「契約の内容によっては、取引の対象とされた労働者という人間そのもの、その肉体や精神が侵害されてしまうことが」あり得ます(9頁)。で、たとえ本人の同意に基づいていたとしても、その者が肉体的・精神的に危険な労働に置かれることを社会的に容認していいのか、が問題になったそうです。

ここで、まあ、別にいいんじゃない? と思った方もいるかもしれません。が、第二の点として、労働者は使用者(会社・雇用主)に比べ経済的に弱い立場に立たされがちということがあります。会社の方は、資本があるので今日明日食うに困るということはないだろうけど、労働者の側からすれば、今日働かねば明日死ぬということもあり得ます。我らは「自分の身」一つ以外に何も持ってないので、それを切り売りせざるを得ないということですね。そうした力の不均衡の下だと、使用者から超低賃金・劣悪労働を提示されても、労働者はそれを断ることができなかったりするわけで、そこで「同意に基づく契約」とか言ってもというところです。あと、そういうのに任せておくとあっという間に社会問題になってしまうわけで。

そして第三に、労働者は働くときに自由を奪われがちということが挙げられています。労働者は、使用者の指揮や命令の下で働くので、その間は彼ら自身の「自由」が奪われているとも言えるとのこと。で、本書ではこの3つの観点から、労働については「個人」の自由に任せっきりではダメで、「労働者」という集団に対する保護が必要になったとされています。

 

「集団」という発明

で!! この、今さらっと書いた、労働者という「集団」というのが、非常に重要なポイントとなっています。そしてとても面白いところだとも思います。

元はと言えば、市民革命によって、一度「個人の自由」というものが確立したわけです。ただ同時に、そうやって個人の自由に任せておくと、色々と問題が起こることも顕在化したわけで、そこで改めて「労働者」という集団的括りが用いられます。本書ではこれを「集団の発明」と表現しています(11頁)

では、そうした「集団」を発明して、何がなされたかというと、次の二つのことが挙げられています(11-12頁)

1つ目が、労働者への「集団的保護」です。例としては、労働時間の規制や社会保険制度などが挙げられています。これらは労働者に対して、一律に適用されるものであり、彼らを「集団」として捉え、それを保護する制度となっています。あとで見るように、これらが「一律に」適用されるということは、個人の個別の契約や合意をも上回る効果を持ちます。

2つ目が、ストライキなどの団体行動を取る「集団的自由」の保障。団結して行動することが保障されています。例えば、劣悪な労働条件を提示されたとき、自分一人が抵抗したところで労働者の待遇は何も改善しないけれど、集団で抵抗すれば大きな力になります。以前は、こうした団体行動が団結罪といった罪に問われていたらしいですが、それが認められていくようになったという話。本書の言い方をそのまま持ってくると、「これは、個人の自由のもとで実際上自由を奪われていた労働者に対し、集団として自由を行使することを認め、労使の事実上の力関係の差を是正しようとするものであった」とのこと(11頁)。これはなんというか、非常に労働法らしい話だなーと思いました。

そんなわけで、ここまでをまとめると、労働法の性格というのは、個人の自由な契約に干渉し、労働者を「集団」として捉え、それを保護し、また団結して行動する権利を認めるもの、と言えると思います。で、なぜそんなことをしているのかと言えば、そもそも労働者が経済的に弱い立場にあり、自身の身体を契約の対象にして自由も委ねるような存在だから、となりそうです。まあ確かに、明らかにパワーバランスは使用者の方が上なので、なんらかの介入によって労働者の側もアゲとかないとなんだなと思います。

......ちなみに、ここまでの話は、あくまで労働法の成立過程の話。実際、かつての工場労働の時代と違い、今の世の中で労働者を「集団」として捉えることは、結構難しいように感じます。サービス業とか色んな業種が増えたし、働き方もますます多様になっているので。もちろん、本書もこのことに触れていて、「従来の定型的なモデルを前提とした集団的・画一的な保護・規制は、社会の多様で複雑な変化に十分に対応できないものとなっていった」としています(20頁)。ただ、その一方で、今でも「契約」や「同意」の下で、過酷な労働や不安定な雇用を強いられている者は多数おり、確かに新しい問題も増えたけれど、労働法の伝統的な問題もそのまま残存しているともされています(22頁)。要するに、時代が変われど、労働者保護という理念はこれからも当然必要だろうという話です。

 

労働法はどう働いているの?

本日は「労働法の基礎知識」的な回にしようと思っているんですが、そこでもうひとつ触れておきたいのが、労働法はどう働いているのか? という話。本書では、これについて労働法の4つの法源というのが紹介されています(52,53頁)。労働法が実際に動くときは、次の4つの何かしらが問題になっているぞ、ということですね。

1つ目が、シンプルに法律労働基準法や労働契約法などですね。例えば、労働基準法で、1週間の労働時間の上限が40時間と定められているなどですね。ちなみに、こうした労働法は強行法規としての性格を持ち、個人の自由を上回る効力を発揮するとのこと。例えば、使用者と労働者が互いに合意して、「週の労働時間は100時間としようぜ!!」という契約を交わしていたとしても、こうした契約は無効となります。本書を引用すると、「当事者の合意の有無や内容にかかわらず当事者を規律する」(42頁)という性格を持っています。

2つ目が、労働契約。何月何日から働きますとか、こういう期限で働きますとか、そういうものですね。まあこれもわかりやすいと思います。

そして3つ目が、労働協約。「労働協約って何?」というと、本書の説明をそのまま持ってくれば、「労働組合と会社との間で締結される労働条件などに関する合意・協定のこと」だそう(44頁)。さっきも書いたとおり、労働法においては、労働者という「集団」で行動&交渉する自由が認められています。で、そうした集団(労働組合)が会社から獲得した「合意」にも、法的な力が認められて、ちゃんと会社側を縛るルールとなってくれるそうです。例えば、労働者個人と会社との契約では、「ボーナスは月給の2ヶ月分」となっていても、労働協約にて「ボーナスは月給の3ヶ月分だ!!!」となっていれば、ちゃんとこの労働者も3ヶ月分のボーナスをもらえるなどなど(力関係的に、労働協約>労働契約となっている)。

最後に、4つ目が就業規則就業規則は、会社側が定める職場のルールのことで、これも労働者に集団的に作用します。非常に広範な内容が定められていて、賃金や賞与や退職について、その会社でのルールが示されています。詳しくは自分の職場のものをチェーック!! 正直、僕もまだ働いてないので、どういうものかはあんまりわかってないです。ともかく、法律や労働組合だけでなく、会社側も労働についてのルールを設定しているという話ですね。

で、労働が法的な問題となるときは、以上の4つ、すなわち①法律、②労働契約、③労働協約、④就業規則、のどれかが必ず関わっているとされています。ちなみに、強さとしては、法律>労働協約就業規則>労働契約の順番だそう。引用を持ってくると、次のような感じです。

働く人と会社の間の関係では、これらの四つの法源のなかのどれかによって根拠づけられた権利や義務となることによってはじめて、労働者が使用者に、または使用者が労働者に、法的な請求をすることが可能になる。逆にいうと、これらの四つの法源のどれによっても根拠づけられていないことについては、裁判所の力を借りてその実現を図ることはできない(法的にいうと「請求の根拠を欠く」ということになる)。労働法とは、これらの①〜④の法源に支えられた権利と義務の体系ということもできる。(53頁、太字は引用者)

これはなんというか、読んだときに、結構大事だな!! と思いました。というのも、我々が法律に頼りたくなるのは、なんかしら理不尽な目に遭ったときだと思います。これは本当に自分が耐えなければいけない問題なのか...... 実際は相手の方が間違っているのではないか....... とか、そういう状況ですね。

で、僕がここ1年間いた倫理学の領域では、こういうの、相手の「不正さ」を論証することが大事、とされていたような気がします。功利主義とか権利論とかを使って、「そもそも労働者を単なる『手段』として利用することは道徳的に正当化されず......」という風にやっていたと思います。

ただ、法の世界はあくまで「具体的」なものである、というのがやっぱり面白いなところだな〜と感じます。こうやって①〜④の法源というのが示され、そして「ここに該当しなきゃ、そもそも請求の根拠欠くから!!」とされている。そこがなんというか、清々しくてよいですね。ちゃんとルールが明文化されていて、なによりもまずそこが問題となる。それはつまり、自分が何か理不尽な目に遭っていそうなときは、ともかくこれを確認すべしというのがわかりやすいということでもあると思います。

あと、この①〜④の力関係の中で、「労働契約」が最も力が弱いとされているのも、面白いなと思いました。これも倫理学との比較ですが、倫理学では「個人の同意」というのは、それはそれは大きな力を持っているように思います。ただ、労働法においては、パターナリスティックな介入が割と平然と許されていて、それは成立の趣旨などからもそうなのかもしれないけれど、倫理学とは違うな〜〜と思ったところでした。僕も元は法学部だったはずなのに、いつの間にこういう思考に.........

まあでも、労働法の仕組みについては、だいたいこんな感じです。本当はもっといろいろ複雑なんですが、僕に説明できる範囲を超えるので、この辺にしておきます。4つの法源で動いているよ! というのが分かればひとまずOKだと思います!!

 

労働法は「力」か?

だいぶ字数が多くなってきたので、そろそろ巻きに入る形で...... 最後にこの「労働法は『力』なのか」というトピックで。冒頭の茶番で、漫画『ARMS』のジャヴァウォックの如く労働法を登場させたわけですが、実際に労働法は、何らかの助けになるんでしょうか。そして、なるとしたらどんな感じなのか。

今回、この『労働法入門』の他に、何冊か労働関連の本を読んだんですが、濱口圭一郎『若者と労働』という本に、面白い記述がありました。あとがきから引用です。

実は一点、極めて重要でありながら[本書で]語られないままとなっていた問題があります。それは、働く場で自分の、あるいは自分たちの権利を守るために必要な労働法や労働者の権利に関わる知識が、肝心の働く人々、とりわけ若い人々にほとんど教えられることもなく、放置されているということです

濱口桂一郎. 若者と労働 「入社」の仕組みから解きほぐす (Japanese Edition) (p.227). Kindle 版.[]内、太字は引用者 

労働基準法にこう書いてあるなどと会社に文句を言う馬鹿な奴は真っ当な正社員になれません。

労働基準法?上等だ。お前は一生面倒をみてもらいたくないということだな。一生面倒を見てもらいたいのなら、ぐたぐた言うな」

というのが、暗黙の(時には明示の)社会的文法でした。つまり、労働法など下手に勉強しないこと、労働者の権利など下手に振り回さないことこそが、定年までの職業人生において利益を最大化するために必要なことだったわけです

濱口桂一郎. 若者と労働 「入社」の仕組みから解きほぐす (Japanese Edition) (p.228). Kindle 版. 太字は引用者

ここに書いてあることも、まあぶっちゃけわかるでござるよという感じで、労働法を学ぶことは、一方で自分の身を守ることでありながら、他方で、定年まで過ごす「会社」というものに不和をもたらし得るものでもあるはずです。先日、来週から働く職場から、『社会人1年目の教科書』(ダイヤモンド社という本が送られてきたんですが、まあ当然、労働法の話は一切振れられておりませんでした。代わりに「演芸会は死ぬ気でやれ」「脳に負荷をかけよ」とかが書いてあるわけですが.......

↑こちら。まあ、大事ではあるとは思う。全然面白くなかったけど......

そんなわけで、本当に労働法を学ぶことが「力」になるのか? というのは、問われうることだとは思います。いや、絶対に力にはなるんだとは思うけれど、正直なところ、まだ働いてもいない人間が労働法を学ぶことで「力を得た!!」とイキがってていいのかという話ですね。こういうところには、否定的な人も多いのではないかと思います。

ただ、これについて思うところを2つほど述べて、本日は締めとしたいと思います。

1つ目は、水町『労働法入門』に書かれていることでもありますが、あくまで労働法は、労働者という「集団」を相手にしたもの。そこには「集団という発明」があったわけです。それすなわち、労働法の問題は、単に自分だけの問題だけではなく、同じような状況の他の誰かの問題でもありうるということです。

例えば、本書では、「権利を守り、公正な社会を築くために」という節で、次のようなことが書かれています。

不条理な事態に直面したときに、泣き寝入りしたのでは自分の権利や信念は守れない。それだけでなく、法と乖離したい実態を容認することは、会社側に法は守らなくてもよい、さらには、法を守っていては激しい競争に生き残れないという意識を植え付け、公正な競争の前提自体が損なわれる事態を生む。例えば、違法なサービズ残業をさせないと、同様に違法なことをしている他の会社と対等に競争できないという状況を生み出したりするのである。それは、現場で働いている人たちの人間性を蝕み、結局、そのような組織や社会は長続きしないという結果に陥る。このままでは、日本の会社の多くや日本の社会そのものがそういう状態になりかねない。(230頁、太字は引用者による)

この熱いメッセージ、よいですよね。他にも本書では、「国家によって権利や自由が保障されていたとしても、それが侵害されている自分の状態を黙認してしまうことは、間接的に他人の権利や自由が侵害される、すなわち他人を同様の状況に追い込んでしまうことにもつながる」と書かれています(243頁)

要するに、単に自分一人が耐え忍べばそれで解決、とも限らないということだと思います。法を外れた状況が常態化すれば、より多くの人が不幸になり得るし、逆に自分が自分の被っている不正に立ち向かうことで、他の誰かの状態が改善することもありそうだ、ということです。

もうひとつ言いたかったのは、やっぱりこういう「法」や「制度」がある以上、それは使った方がいいだろうということですね。これは本当にシンプルで、「あるなら使おうよ」という話です。

労働法の成立の歴史などを見るように、「集団の発明」という話もありましたが、現状の法や制度は、誰かが頑張った結果としてあるものだと思います。そういうものを作った人としては、同じような悲しみ・苦しみを生まないようにと頑張ってきたはずなので、それがあるのに使わないとなれば、「いやなんでよ? あるんだから使ってよ!!」となるはず...... 生活保護とかにも同じこと思ったりするんですが、誰もが使えるように「努力して」作られてきたもののはずなので、なんかこう、制度に欠陥があるとかならまだしも、単に「遠慮して」使わないというのは、よくないんじゃないかと思います。その人の頑張りが否定されてしまうというか......

そんなわけでですね、ぶっちゃけ労働法、日本社会においてはあんまりウケがよくないイメージがあるし、それを学んだ労働者というのもいまいち歓迎されなさそうだけど、でもやっぱり使っていくべきだろうなと思います。それは、上に書いたとおり、単に自分の身を守ることだけでなく、他者の状況の改善にもつながるし(あるいは改悪を阻止できたりする)、そして何より、誰かが頑張って作ってくれたんだから、使わないとダメだろとも思います。後者は完全に僕個人の感情的な話だけど、なんというかまあ、そんな風に思います。我々の「権利」として保障されているわけだしね。

 

 

 

以上!!

今日は「1万字以内」という縛りを自分に課していたため、だいたいこんな感じになります。全然書けていないところも正直たくさんあるけれど、それは各自、本書『労働法入門』を読んで学んでもらうということで。この本、バリ面白かったので、読むべし。

最後に、今更なんですが、現在の労働問題は、なにより非正規労働者に集中しているなと思いました。正社員もブラック労働の問題とかあるけど、やっぱり中心的問題は、非正規の人の地位の低さにあるように思います(色んな本でこれが触れられているし、政策の重点もここに置かれている)。そんなわけで、正規の人よりも非正規の人にとってこそ、労働法は武器になるんだなとも思います。

1週間後には働いているということが、全く実感の湧かないこの頃ですが、これからも頑張っていきたいと思います。とりあえず、こんな深夜更新(現在 am 2:12)はやめにしたいところですな!! そんな感じです。

 

 

 

 

 

 

↑ちなみに、この本も読んだけれど、なんか色々微妙だったので、水町本の方が個人的にはおすすめです。