先日、当ブログにもGoogleアナリティクスを入れてみた。
Googleアナリティクスというのは、サイト内での行動や、どういうルートでサイトにアクセスしたか、何分滞在して、何ページ見たかなどを可視化したもの。顧客の分析に使える無料ツールである。ブログをやっている人にとっては多分お馴染みのもの。
こんな感じで閲覧できる
そしてこのツール、怖いぐらいにいろいろ見ることができる。アクセスした時間はもちろんのこと、どのデバイスを使っているか、どの市町村から来てるか、どのルートでたどり着いたかなど(Twitterか検索か直リンかなど)。新規ユーザーなのかリピーターなのかもわかるし、僕のだとわからないが、頑張れば年齢や性別も推定できるらしい。あとは、どのページに着陸して、次にどこを開き、最終的にどこで離脱して、それまでに何分かかったかなどもわかる。わかりすぎだろ。
そして、弱小個人ブログが、無料ツールでここまでできるということは、、、大手のサイトやメディアについては言うに及ばず。より細かい情報を集めているだろうし、さらに体系的な分析をしているはずである。
何が怖いかと言えば、「クリック一つで」ここまでわかるということだ。会員情報とかを入力していなくても、サイトにアクセスした時点でいろんな情報が可視化されている。そしてこういうアナリティクスは、我々が日常的に見ているどのサイトも、少なからず入れているはず。ということは、我々は日々他人から「見られている」ということでもある。日常的なクリックぽちぽちが実は見知らぬ誰かに繋がっているのだ。これはなんというか、すげえなって思った(語彙力)。
で、一つ一つの情報は、確かに大したことは無い。「大阪からアクセスしました」とかそれだけである。ので、それだけで個人情報を抜かれたとかするのは大げさなのだが、その一つ一つが集積すると、具体的な人物を描けるようになったりする。こういうのをモザイク・アプローチと呼ぶ。
masahiroito.hatenablog.com↑参考。
これは本当に例えばの話、自分のブログがTwitterでリツイートされていたとする。「このサイト、初めて見たけどめっちゃ面白い‼」などなど。で、仮にGoogleアナリティクスをチェックして、その日の新規ユーザーが一人だけだった場合、、、 その新しいアクセス=「ツイートした人のアクセス」である可能性が非常に高い。ので、そのアクセスのみに着目すれば、その人が豊田市からアクセスし、デバイスとしてXperiaを使っていて、Chromeから閲覧し、午前10時から11時にかけて滞在していた、などのいろいろがわかるし、設定次第では年齢や性別も推定できる。Twitterのアカウントに書かれている情報と組み合わせれば、より詳細に分析できるだろう。
これはなかなか、すげえなって思う。クリック一つが与える情報は、思ったよりも大きいのではないかということ。
で、普通こういうデータは、ブログ運営のために活かされる。よく来る層に合わせて広告をカスタマイズしたり、逆に来ていない層を狙って、投稿時間を変えてみるなど。特に個人情報を使って何かしたりだとか、そういうことは行われていないと思う(多分)。
・・・のだが、世の中には個人情報マニアと呼ばれる人たちがいる。他人の個人情報を集めること、それ自体を喜びとする者たちである。こういう人たちは、サイト設計を変更するだとか、もっと多くの客層を呼び込もうだとか、そういうことは考えない。ただ個人情報を集めるのが楽しいので、そのためだけに集めるのである。
で、実は僕の知り合いでも、この個人情報マニアがいる。ので、今日はちょっとだけ話をしに来てもらった。個人情報収集歴7年のAさんです。
もう7年になるんですね。よろしくお願いします。
...筆者:さっそくですが、Aさんにとって個人情報を集める喜びとは?
「相手はこっちのこと知らないのに、こっちはお前を知っているぞ」という、一方的な優越感が得られます。一種の覗き癖みたいなものかもしれません。相手を支配している感覚になれます。
...本当にあった怖い話だ。眺めているだけで楽しい?
はい。眺めているだけで楽しいです。知っていることが大事なのです。悪用とかはしていません。
...そんなAさん、今となっては個人情報収集癖をやめたと聞きました。そのきっかけとは?
もともと、他人の個人情報を集め始めたのは、コミュニケーションがうまくいかないことのストレスから来ていました。他人と上手く話せないので、その人のTwitterを覗き見することで、一方的に相手のことを知ってやろうということです。
ただ、それでは健全なコミュニケーションは一生築けません。その点に気づき、個人情報も断ちました。禁酒ならぬ、禁個情(きんこじょう)です。
...良かった、本当に良かった。ちなみに、どのように個人情報を集めていましたか?
最もメジャーな手段は、Twitterアカウントの特定です。性別・出身高校・大学などがわかれば比較的簡単です。本人が特定に繋がる情報を発信していなくても、周りの鍵なしアカウントのいいねや言動からある程度察せます。
他にはシンプルに、相手の名前をググるなど..... ちなみに、今のzoomミーティングは、我々にとって個人情報の宝庫です。フルネームがわかる上、顔まで見れてしまうので。僕の知り合いのBさんも、zoomで見かけた名前を片っ端からググっているといっていました。
...ヤバすぎる人いますね。特に指示が出されない限り、フルネームを漢字表記で書くのはやめたほうがよさそうですね。
そうですね。カタカナやアルファベットにするのがベターです。
...Aさんが今、容易に個人情報を集められる現代社会に伝えたいこととは?
まず、我々のような存在の認知です。世の中には、グッズを集める感覚で、個人情報を収集する人間がいます。これは本当にいます。それが喜びだからです。悪用されることはないかもしれませんが、気持ち悪いという人は対策をしましょう。
対策としては、できるだけ情報を隠すことが大切です。zoomでフルネームは避け、TwitterやインスタはHNかつ鍵アカにするのが一番でしょう。ただ、自分が隠していても、「はぴおめ!」などのリプライが来ていれば、第三者はそこから誕生日を察せます。その点も注意が必要です。
ちなみに、アドブロックを工夫すれば、Googleアナリティクスに対抗することもできるらしいです。自分のアクセスを収集されないよう設定するなど。
...私も気を付けたいと思います。Aさん、貴重なお話をありがとうございました。
さようなら。
Aさんの他にも、現代の個人情報の在り方に警鐘を鳴らす人はそれなりにいる。僕の知っている人だと、有名なのが憲法学者の山本龍彦先生。著書の『AIと憲法』でこういう話をしていたと思う。
これは山本氏が書いていたことだが、現代の情報社会、私たちは、自身の個人情報すら自分でうまく管理できていない。よくわからんところで企業に個人情報が渡っていたり、Web上にも足跡がぺたぺた残っていたりする。この足跡から個人を特定できるようになる日も、そう遠くないかもしれない。
あとはまあ、自分がサイトを運営するようになって気づいたことだが、、、クリック先の人間は、あなたのことを見ています。どこからやってきて、どんな行動を取ったのかなど。「深淵をのぞき込むとき....」云々ではないが、自分がサイトを見ているようで、実は向こうからも見られていたんだなと実感した。そのため、最近はクリック一つもちょっと慎重になっている。
というお話でした。特にオチとかはなく、ちょっとした問題意識を書いて見た感じです。アクセスするだけでいろんな属性がわかる。これ、すごいことになってるなと思います。
協力:Aさん
別れ際に彼は、「出会ったらまず相手の名前をググる。そういう時代が近いかもしれない.....」と言っていました。そうならんことを祈る。