浅瀬でぱちゃぱちゃ日和

全部日記です。大学院でいろいろやってました。今もなんだかんだ大学にいます。

理想の就活世界

こんばんは。

 

betweeeeeen.hateblo.jp

 

この間、上の記事を書きました。内容としては「就活つらいし、楽しくないんだけど、どうにかならんの?」というもの。より詳細には、企業への具体的興味があるわけでもないのに、それなりの暮らしを得るためには、この不毛なゲームに参加せざるを得なくて大変だという話です。

ただ、これを書いたあと、深く、深く反省いたしました。どれくらい深くかというと、津軽海峡並の深さです。というのも、上の記事、現状の在り方に文句を言うだけで、じゃあどんな仕組みなら満足するの? という点に答えていなかったからです。ちなみに津軽海峡の水深は450mぐらいです。

で、今日はその辺を踏まえて、僕の理想の就活世界を述べたいと思います。言うまでもないことだけれど、これも『カスの就活観シリーズ』の一つです。ので、あの、あんまり大真面目に受け取らないでください。所詮はカスが申していることなので......

 

<過去作>

 

 

理想の就活世界

私には夢がある。それは、邪悪な学歴差別主義者たちのいる、競争至上主義や上司への盲目的信仰を主張する社長のいるITベンチャー業界でさえも、いつの日か、その会社でさえ、企業の人事が就活生と兄弟姉妹として手をつなげるようになるという夢である。

マーティン・ルーサー・キング・ジュニア(1963)

ちなみに、こうやって偉人の人権演説をネタにするのって、どうなんですかね。僕はよくないと思いながらもやってしまっています。→元ネタはこちら。

 

パワーバランスの調整

現実世界に対して一番思うのは、企業と就活生のパワーバランスを調整すべしということです。もっと言うと、企業には認められているけれど、就活生には認められていないような諸々の特権は、是正すべきであって、より互いに対等な場で争いましょうという感じです。対等な場というのは、相互批判が可能な場という意味。

例えば「誠実さ」について。これ、就活生に対しては愚直なまでに要求されるのに対して、企業の側は、多少の無礼を働いても許されるような現状があるように思います。その典型としては「サイレントお祈り」など。サイレントというのは、不採用通知を送らないことで、これをやられた学生の側は、就活スケジュールが狂ったりするので大変です。

採用結果を通知しないこと、それそのものが問題というよりは、こうした企業の「不誠実さ」が問題だと思います。そして、それがある種黙認されているような現状も、同様によろしくない。就活生の不誠実さには「不採用」という制裁が加えられるのに対して、企業のそれには何もおとがめがなく、むしろ「仕方のないもの」として受け入れられているような非対称性が、ここには存在します。

サイレントはわかりやすい例だけど、僕としてはもっと細かい不満もある。例えばそれは就活サイトの企業の採用ページで、特にキレイでご立派な抽象ワードを並び立てただけのページなど。我々就活生に対しては、「曖昧な言葉を使わずに、自分の言葉で考えてみて?」とか「20代はどんな環境でどんな経験を積んでどんな成長をしたい?」とか具体性を求めてくるくせに、企業の側は「ニッポンを明るくします!」とか「みんなにワクワク感を届ける」とか言ってくるの、シンプルにダブスタだと思う。実際そういう紹介文、読んでも何やってる企業か全然わからんし、具体的なイメージも何も湧いてこない(だから説明会に行かざるを得ないが、あれはそういう戦術なのだろうか)。そしてそういう企業説明は、一部の例外的なものというわけではなく、リクナビを覗けば無限に存在するし、ネットのメシウマ系漫画広告と同じぐらいには目にするものである。仮に我々が、「私は御社での仕事を通じて、ニッポンを明るくしたいです!」とか答えたら、どう思いうのだろうか。

一言で言うなら、就活生に対して要求することは、自分たちにはそれ以上に強く課してほしいものである。この辺の非対称性とか、片方にのみ過酷な要求が課されているのは、パワーバランスの偏りを感じるところ。

他にも、「選考には関係ない」という体を装ってばっちり選考しているものなど、不誠実な態度については、枚挙にいとまが無い。僕は経験したことないけど、企業のOBに訪問したら、実はそれも選考の対象に入っていたというのは、往々にしてあるらしい。ただ、僕は経験したことないので、あんま強くは言えないです。

 

もっと正直になろうよ

僕は、はっきり間違って居りました。おわびを申し上げます。僕は、あなたに対して完璧の人間になろうと、我慾を張っていただけのことだったのです。僕たち、さびしく無力なのだから、他になんにもできないのだから、せめて言葉だけでも、誠実こめてお贈りするのが、まことの、謙譲の美しい生きかたである、と僕はいまでは信じています。

太宰治「葉桜と魔笛

*太宰の『葉桜と魔笛』は、数ページでサクッと読める上に、非常にいい話なので、おすすめです。青空文庫で読めます。

思うに、企業の側も、ちょっと取り繕いすぎなのでは? というきらいがある。ぶっちゃけて言えば、御社、「そんなに大したことやってないでしょ」というか...... すみません、それは言い過ぎでした。

ただ、採用ページにひたすら美辞麗句を並べるよりは、もう少し実直なメッセージを打ち出したほうが、お互いのためにもなるんじゃないかと思う。就活生からしたら、その方が企業の実態もわかりやすいので。現状、就活サイトや企業のHPだけでは、実態が非常に掴みにくいという厄介さがある。

 

いっそのこと、企業も思い切って、自分のダメなところをさらけ出すというのはどうだろうか。例えば、、、

 

 

喜ぶ会社員たちのイラスト

我が社では社員同士の仲も良く、顧客からの満足度も業界トップクラス!

育休の取得率もバッチリだし、男女差別とかのない自由な空気の中、日々社員たちが自己研鑽を積みつつ充実した生活をもぎ取ってるよ!

 

寝転がってスマホを使う人のイラスト(男性会社員)

って言ったってさ、実際は業界全体に成長の見込みはないし、まあなんとなくの惰性で、なんとなくの生活を送ってる社員ばっかよ。成長したい若手なら、もうとっくに転職しちまってるしねえ。

でもさあ、それもまたいいんじゃない? 生きてゆくことなんてさきっと、人に笑われるぐらいがちょうどいいって、ほら、えっとあれ誰だっけ。まあ誰かも言ってた。

 

企業戦士のイラスト

確かにおれだってさ、輝ける企業戦士、こういう時期もあったよ? 就活中だってさ、バリキャリの未来描いて面接に挑んだりしたもんだぜ。

 

でもさあ、実際入社してみたら、こういう瞬間も度々あったし、

 

泣きながら歩く会社員のイラスト(男性)

正直一年目なんてこんなもんよ? 営業行かされては、取引先から「君の言ってること、うまく言えないけど、なんか違うということだけはわかる(笑)」とか言われてさ。

そんで会社戻ってからも、上司にひたすらネチネチなじられてさ。ひたすら頭ごなしに人格否定するおっさん、どこにでもいるし、わが社も例外ではないわけよ。

 

やる気のない会社員のイラスト(男性)

まあでも今は一段落して、こんな感じ。「成長」という言葉は遠ざかるばかりで、気付けばiDeCoのことばっか調べてるよ。あれほんとにお得なのかねえ。

まあ今は、怒られねえ程度につらつらやってるし、それなりに幸せよ。

綺麗事並べてもさ、企業の実態なんて、結局そんなもんなわけですよ。表に出してるのは、偽りのハリボテよ。

 

でもさ、、、

 

同僚を励ます人のイラスト(男性会社員)

お前だって、同じようなことしてただろ?

俺、知ってるよ。君が3年生の時、いかにも楽しそ〜〜〜なテニスサークルに見せといて、実は新歓期終わってからは1年にひたすら球拾いさせていたこととかも。飲み会に来ない後輩に対して、「会員としての自覚が足りない」って責めたてていたこととかもさ。

 

飲み会で煽られる人のイラスト(女性・一気)

「副サークル長で、後輩からも頼りにされてました」ってESに書いてあるけどさ。

飲み会で毎度うざい絡みしちゃって、陰で後輩に「飲みのときだけ態度でかくなる先輩」って軽蔑されてたのも、俺ちゃんと知ってるからさ......

取り返しのつかない過ちの一つや二つぐらい、誰にでもあるよな、そんなもんだろう。

 

つまりさ、 

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つまり、俺たち実は、みんな一緒なんだって。

わかるだろ? みんな、一緒なんだってさ。

君が瞬きで隠した痛みその想いを、俺たちは知っているから。

 

だから、、、

 

ハワイの夕日のイラスト

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走ろうぜ!! あの夕日に向かってよぉ!!

 

ってならねえか。ならねえよな。急に変なこと始めて申し訳ないです。

こういうのはある種、お互いに「大したことない」人間であることを認めたフェアな世界観であって、悪くないと思うんだけどね。こういうのも、一つぐらいあってよい気はする。

 

不均衡なパワーバランスは問題か?

ここまで、理想の就活世界に向けて、パワーバランスの非対称性を問題としてきた。非対称性の例としては、就活生に対しては許されないことが、企業に対しては平然と許されていたり。他にも、選考過程の不透明さだとか、「選ぶ側」としての傲りなんかも指摘できるかもしれない。

ただ、そういうの、本当に問題なのか? と問うことはできるはず。というのも、企業が特権を持っていて、パワーバランスに偏りがあったとしても、それはある種当然のことであって、そこを問題視しても何も始まらないのではないか。事実社会は今の仕組みで十分うまく回っているのであって、そこに不満を言う一部の落ちこぼれの戯れ言など、聞くだけ無駄ということはあり得る。

とはいえ、そこを考慮したとしてもなお、理想世界に向けて改善できそうなところはあるように思う。例えば、「サイレントお祈り」は、今の日本の経済状態を保つために、必ずしも必要なことだろうか。むしろ若き就活生たちの心を傷つけて、逆の方向に向かわせてはいないだろうか。本当にそれが必要なのか? というのは、常に問いうる疑問だと思う。

具体性に欠ける企業紹介文も、僕としては、改善の余地ありだと思う。「こういうキラキラワードをちりばめておけば、若者たちは食いついてくれるだろう」と思っているのかもしれないが、それは単に怠慢である。具体的イメージを抱ける説明文にする方が、お互いのためになると思うし。そうである以上、就活生にのみ「具体性」を要求する実質的根拠はないだろうし、企業側だけにそれが許される理由も、あまりないと思う。

あとはまあ、本当に日本社会が今の就活システムで”うまくいっている”のかは、留保も必要である。学者の先生方からは常に疑問に付されているし。疑問に付すのが先生方の仕事であるので、そのことを根拠に直ちに”うまくいっていない”と主張するわけではないのだが、ともかく、色々言われ続けているよということ。

 

軋む社会---教育・仕事・若者の現在 (河出文庫)

軋む社会---教育・仕事・若者の現在 (河出文庫)

  • 作者:本田 由紀
  • 発売日: 2011/06/04
  • メディア: 文庫
 

 本田先生曰く、社会は「軋んで」おります。

だから、直ちに「就活生と企業の不均衡は当たり前でしょ(ゆえに、パワーバランスの改善なんてしなくてよい)」とするのは、性急であるよということ。現にあるシステムにしても、本当にそれが必要なことなのかは、議論の余地があると思います。

あとは、「そういう企業が嫌なら、そもそも選ばなければよいだけ」というのも当然あるけど、その結果として僕は今無職ルートを進みかけているでござるよ。上記のような企業が他を埋め尽くすほどに存在するということと、これがあくまで僕の「理想の就活世界」の話であるということには留意されたし。

 

具体的にどうすんの?

で、結局、僕の望む理想の就活世界は、就活生と企業のパワーバランスの不均衡が(完全ではないにせよ)解消された世界です。具体的には、就活生に対して望むこと(具体性など)は、まず自分たちが率先してやってくれとか、就活生に望まないこと(不誠実な態度など)は、自分たちもしないように気を付けてくれという感じです。

もう少し踏み込んで一番思うのは、採用したい人物像をより明確にしてほしいです。「企業理念に共感できる人」とか「協調性のある人」とかじゃなくて、具体的に「○○の経験と△△以上の語学力を持つ者で、何々の実務経験があり、30分以上の面接でもよどみなく受け答えできる者」とか、それぐらい示してほしい。そこまでを求めなくても「10分から15分人事と話して、基本的な受け答えができる人」とか。これでも曖昧さは残っているけど、「元気でコミュニケーション能力のある人!」とかよりは断然マシである。

そしてその求める人物像と、実際の採用プロセスについて、明確な連関を示してほしい。例えば、それこそ「元気でコミュ力ある人求む!」と募集ページに書きつつ、なぜWebテストと書類だけで落とすのか、とか。「論理的思考のある人」求むと書きつつ、なぜ適正検査やESで落としたのかなど。あの面接のどの質問で、自分が「求める人物像」に届いていないと判断したのかわかるようにするとかも。そうした、求める像とそれを測るプロセスの連続性を明確にするのが、ある種の”誠実さ”だと、私は思います。

もしそういう、具体的な「採用したい人物像」を打ち出せないなら、それこそもう誰でも採用すればいいんじゃない? と思う。それができない、何か一貫した採用基準を持っているというなら、それを我々にも示してほしいところ。一応、我々も、人生がかかった挑戦であるので、、、 できるだけフェアな場、相互批判が可能な場で争えたら幸いです。

 

最後に一つだけ、これはどこかで聞いた話だが、日本は結構労働者の権利が強固であって、企業側は一度採用してしまうと、気軽に首が切れないらしい。だからこそ採用には慎重になるし、ヤバいやつが来てしまったら大変である。これだけ複雑な選考プロセスを設けているのには、そうした理由があるらしい。

ただまあ...... 労働者の権利がしっかり守られているのであれば、「就活生の権利」的なものを打ち出すのって、どうですかね? 例えば、選考結果をしっかり知らされる権利(サイレントをされない権利)とか、選考プロセスを開示する権利とか。それはさすがに、今度はパワーバランスを就活生の側に寄せすぎかもしれんけど。でも、検討の余地してみても面白いかもしれない。すでにそういう議論あるかもわからんが。

 

不満ばかりの就活

長々と書きました。

あくまでこれも、カスの就活観の一つです。ので、「そういうわがままをごねるカスもいるんだなあ」ぐらいの認識でも構いません。多分、多数派の声ではないので、、、

とはいえ、日本に企業は300万から400万ほどあるんだし、こんな100人に1人か1000人に1人のカスの願望を聞き入れてくれるところも、あっていいんじゃないか、ダメだろうかと思っている。

特に、前掲の本田『軋む社会』のように、現状の就活の問題性を説く議論は、だいたい社会の「構造」の話になりがちである。「今の社会は〜」とか「日本の労働市場は〜」といった具合に、どうしても主語が大きくなってしまう。まあ社会学なのでしょうがないけど。

ただ、僕が今回声高にごねたのは、個々の企業の倫理観(誠実さ)である。社会のシステムの在り方とか、そういう大きな話はしていない。ので、小さい範囲でも、どこかに声が届くといいなあと思う。というわけでどなたか、この苦しみから僕を救ってください。

 

そんな感じです。

いつもとちょっと違うテイストにしたけど、楽しんでもらえただろうか。

就活って、大変だけど、文句を言っても仕方ないんですよ。ただ、文句を言っても仕方ないけど、どうせ言うなら具体的にと思って、今回こんなこと書きました。

 

ラーメン注文してから待ってる時間の、暇つぶしになれば幸いです。

僕が書いていることなんて、それぐらいしか役に立たないので。

 

以上です。