浅瀬でぱちゃぱちゃ日和

全部日記です。大学院でいろいろやってます。

”フツー”になれない悲しみ:漫画「ヒメアノ〜ル」読みました

こんばんは。今日も今日とて、最近読んだものの感想です。

 

みなさん、「ふつうの人生」、どう思いますか?

ふつーに働いてふつーに結婚して、それなりに子ども産んで育てて最後は老後を迎えるという、まあ「普通」としか言い様のない一生です(最近はそれすら難しそうだけど)。嫌な言い方すれば「有象無象」「凡人の一生」というか。何事にも守りに入って、小さ〜〜く生きて小さ〜〜〜な喜びを大切にするような生涯です。

そういうので十分だっていう人もいれば、そんなん理解できねえっていう人もいると思います。今日はその辺の話。

 

漫画「ヒメアノ〜ル」について

この間、古谷実の漫画ヒメアノ〜ルを読みました。全6巻。映画化もされている作品。U-NEXTのポイントが貯まってたので、サクッと読んできました。

古谷実といえば、「行け! 稲中卓球部」が有名ですね。あっちは完全にギャグ漫画らしいですが(しかも卓球をしない)、今回紹介するのはこっち。

 

 

見るからに暗そ〜〜な表紙してますね。まあ、暗いです。

ちなみに、映画は漫画と違って、かなりホラーテイストになっているらしい。普通にめっちゃ怖いとのこと。オチとか設定もだいぶ違うらしい。濱田岳が主演。

eiga.com

 

まあ僕は映画を見ていないので、今日はこの漫画の感想などなど。

この漫画、すげえよかっったっったったっったたったたです。狂ってるところはとにかく笑えるし、抉ってくるところは本当に深く抉ってくる..... 2010年頃の作品で、新しいものというわけではないけど、読むべし。

今日は簡単にあらすじだけ紹介して、あとは特によかったなあというところを書いていこうと思います。

 

あらすじ

主人公は清掃員の岡田君。25歳、100%童貞。彼女もいなければ金もない。そして彼は、同じことを繰り返すだけの毎日にうんざりしている。判で押したように変化のない日々。ただ床を磨いて、ガムを剥がして、ゴミを捨てるだけ。一日は途方もなく長く感じるのに、一週間はあっという間に過ぎていく、、、

そんな無意味さに耐えられなくなって、ある日仕事の同僚、安藤さんに声をかける。安藤さんは自分より年上のおじさんで、コミュ力もあんまりなさそうだった。このおじさんはどうやって、日々の無意味さに耐えているのだろう、、、そう気になって、夕飯に誘ってみた。

安藤さんの答えはシンプルだった。「俺は恋をしている」と。愛する人がいるから、この人生という大海原を渡っていける」んだと。彼は行きつけのカフェの店員(ユカちゃん)に恋をしていた。それは一方的な恋心に過ぎないのだが、安藤さんにとってはそれが生きる喜びらしい。

で、岡田は安藤さんに頼まれて、そのユカちゃんに彼氏がいないかをチェックさせられることになる。話を聞くと、ユカちゃんは現在ストーカーに悩まされているらしい。そしてそのストーカーとは、偶然にも岡田の高校の同級生、森田君であった。岡田はふと、森田君が高校時代に壮絶ないじめに遭っていたことを思い出す、、、

 

まあ大体こんな感じです。主要な登場人物は、岡田君、安藤さん、ユカちゃん、森田の4人。基本的なストーリーは、非モテマックスの人生を送ってきた主人公岡田と安藤さんが、大切な人に出会い、恋の喜びに目覚め、人生の幸福にたどり着くというもの。単なるラブコメというわけではなくて、登場人物が非モテをこじらせすぎてるのが面白いですね。恋をすると100%傷つくから、もう傷つかないように「不恋の誓い」を立てるところとか、見てて笑えるしおもしれえです。

で、そんなほのぼのラブコメの裏側で、不穏な空気が漂います。あらすじの最後に出てきた森田というストーカー、実はこれが、殺人でしか快楽を得られない、マジモンのシリアルキラーなんですよね。ユカちゃんをストーキングしてるのも、当然殺すためです。主人公たちが恋の喜びとか抜かしてる背後に、常に森田というサイコパスがうろついている、かなり歪な作品になっています。

この辺の雰囲気はまあ、映画の予告編を見るとわかりやすいかもしれない。

 

 ”フツー”になれない悲しみ

以下、ちょっとだけネタバレ含みます。

実はこの漫画、ふつうに読めば主人公は岡田君。なんだけれど、彼の出番は終盤になるほど減っていく。代わりに、異常者である森田の出番が非常に多くなるし、物語を動かすのもこの男である。もはや彼が主役と言っても過言ではないぐらい、というか、この漫画、普通に森田が主人公なんだろうなと思う。シリアルキラーであるにもかかわらず、その心理描写は非常に丁寧で、最終話を飾るのも彼である。

で、どこに焦点が当てられているかというと、森田の抱く”悲しみ”なんですね。森田は本当にどうしようもない人間で、行き当たりばったりで人を殺すヤベーやつ。殺し方も相当雑で、とりあえず殺して、とりあえずサラダ油買ってきて、火つけて証拠消すという感じ。そんな人間の”悲しみ”とかに目を向けるのは、人殺しに同情を示すようで、ちょっと危うい感じはする。のだが、本作はそれをやっている(映画だと改変されたらしい)

どんな悲しみかと言えば、それが今回のタイトル、”フツー”になれない悲しみです。森田は自分が異常者であることを自覚している。彼は人を絞め殺すことでしか気持ちよさを得られず、それがもう、人生の唯一の喜びになっている。壮絶ないじめにあったという悲しい過去を背負ってはいるのだが、彼の人殺しの嗜好は、その過去によってもたらされたものではないという。つまり先天的なもので、森田が自分の異常さに気付いたのは中学生のときだった。

 

何かね.... 今、急に思い出したよ....

 中学の時の帰りにさ..... オレは完全に...”フツーじゃない”って....気付いた日のこと....

 

すげぇ悔しかったよ.....マジで.....

 

もう本当に悔しくて... その場で死にたくなった...... 泣いちゃったよ...... *1

 

この直前に森田は、夢の中で病院(脳外科?)に行き、医師にこう尋ねている。「オレは本当に...... ”フツー”の人間に戻れますかね?」 。医師の答えは「現状ではなんとも言えないね〜〜」というものだったが、ここからもまあ、森田が本当は”フツー”になることを望んでいたのがわかる。

 

で、この作品、主人公サイドの岡田君と安藤さんは、”フツー”の生活を送りつつ、”フツー”の喜びを見つけていくという話になっているんですね。その喜びとは、彼らにとっては「恋の成就」だったわけだけど、裏の主人公の森田にとってのそれは「女性を絞め殺すこと」である。だから、岡田やら安藤さんと違って、森田だけは決して普通の喜びが手に入らない(幸せになってはいけない)存在となっている。彼自身はフツーであることを望んでたわけだから、そこがまあ悲しい。

あと、森田は、殺人に快楽を感じることは、歌が上手いとか足が速いとかってことと同じなんじゃないかと言っている。自分は運悪く「殺し」になってしまっただけで、誰だって好きなこととか得意なことが、こっち側になっていた可能性はあっただろうと。それは完全に運の問題なのだと。だから森田は、自分が「病気」と呼ばれることに嫌悪感を覚えるし、勝手な線引きに憤っている。

 

まぁ要するにさ、オレはこの世に”病気”って言葉自体....いらないと思うんだよ? だって意味ないだろ? 何か....歩いてる人に「歩いてますね」って言ってるみたいだ.....

 

運悪く普通じゃなくなった人もいっぱいいるのに そんな人に病気って言ったら可哀想だろ? オレはその バカみたいな簡単さとクソ共の残酷さに....超ムカついてんだな

 

病気になる原因も何にもわかってない連中に....それっぽい病名つけられて...... 「じゃあしょーがない」「あいつはダメだ」って....強引に安心されちゃうんだぜ? どう思う? 何かズルくねぇか?*2

 

よくもまあ、こんなに殺人鬼の内面描写ができるものだと思うけど、、、ちなみにこの辺の森田の心情は、元少年A(酒鬼薔薇)の著書『絶歌』でも言及されているらしい。曰く、自分と重なる部分がある、とのこと。

 

何が言いたいかというと、

僕もこの森田の心情、まあなんとなーーーーーくわかります。これ、別のところでは、「みんなの中で、一番醜い人間は自分なんじゃないかと悩んでいる」とかと表現されていて、その気持ちも割と理解できる。自分って......周りの人間と違うんだなって気付いたときの孤独感とか。自分の悲しみとか辛さを共有できる人って、もしかしてこの地球上に一人もいないのかって思ったときの、暗闇に突き放された感じとかね。そういうときは僕も、自分の”フツー”になれなさを嘆いたりします。大抵は寝て起きたら治ったりしてるけど。

....で、たまにね、Twitterの世界の片隅とか個人のブログを見ていると、やたら孤独であることでイキってる人とか見かけるんですよ。人と違っていることとか、凡百と同じ人生を送っていないことをアイデンティティにしているというか。特に、Twitterで哲学系とか学問系のアカウントがよくオススメに出てくることもあって、こういう人を割と見かけます(noteにもいたかな)。

でね、まあいいんですよ。自分が「普通じゃない」ことを喧伝したり、それを誇りにしていたとしても。全然いいと思います。ただ僕は、そういうのを見ると、こういう人たちは”フツー”になれない悲しみに絶望したこととかないんだろうかと、不思議に思ったりするという話。僕が思うに、人生で一番悲しいことって、つらい気持ちを誰にも理解されないこととか、ただの一人として自分の味方になってくれないことだと思うんですよね。誰に尋ねても「お前が悪い」「お前がおかしい」と言われる状態というか。かっこよく英語で言うと I'm completely alone...... っていうやつですよ(さあ誰のセリフでしょう!?→ヒント:夏)。

そんなわけで僕も、フツーの生活というか、結婚して家族持って老後を迎えるとかの、俗っぽい幸せを素直に追い求めたりしています。だって僕もみんなと同じ「普通」になりたいから、、、 そんな悲しい願いが、この漫画「ヒメアノ〜ル」には表れていて、めちゃくちゃよい作品だなと思いました。

そんな感じです。

 

 

今日もいっぱい書いたよ!!

PCだとこんなもんでしょって思えるけど、スマホで見たら文字びっしりでビックリしています。

 

ちなみに、今日みたいな(いつもしている)書き方って、どうなんですかね。最近ちょっと悩んだりしています。

というのも僕の場合、漫画とか本とかを紹介するにしても、最終的には自分の言いたいことに引きつけてしまうんですよね(今回もそう)。だから、純粋な読書感想とか書評とかにはなってないし、あくまで「日記」の粋を出ないなあって。「お前の思ってることとかどうでもいいから、シンプルに作品を紹介してくれよ」っていう人もいるだろうし。そう、最後は結局自分語りなんですよねぇ、、、 これはどうなんだろうとか考えます。

何日もブログやってるけど、異様に読者が増えないのは、そういうこともあるのかなとか。でも、このスタイル好きなので、多分このままやっていきます、、、

 

 

そんな感じ。多分次回は、これで書きます。

 

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以上。集団感染に、気を付けて。

 

 

 

 

 

*1:第6巻、p179,180。実際の漫画の絵を見た方が絶対良いので、読むべし

*2:第6巻、p55,6