こんばんは。今日はタイトルの通り、小説についてです。
僕は昔、文学小僧でした。大学1年ぐらいまでです。あのときはまだ、授業の合間の10分休憩も小説を貪っていました。伊坂幸太郎から太宰治、京極夏彦からフローベールまで、実に幅広く読んでいたものです。そのおかげでまるっきりコミュ力を失いましたが、、、
で、今となっては、まるっきり小説を読まなくなってしまった。理由としては、長くて疲れるから。カスかな? でも、しょうがないんです。院生という身分上、暇があるなら学術書を読めという話になるし、仮に小説を読むとなっても、やっぱり研究に役立つものがよいということになってしまう。そういう読書ジレンマも抱えているわけです。これは多分、院生あるあるなはず。
文学の授業を受けてきた
で、新学期ということで、いろいろと講義が始まった今日この頃。僕は現在M2で、D進する予定もないため、これが最後の学生生活ということになる。
学際系の学科にいるということもあり、卒業前にいろんな授業を取っておこうと思った。幅広い分野が受けられるというのが、この学科の強みなので。
で、この間、文学の講義に出てきた。タイトルは、『《愛と喪失》の英米文学』である(かっこよすぎんか?)。そこで初回の授業に参加してきたのだが、、、
正直、めちゃくちゃ感化されたというか、改めて、文学というものをちゃんとやらなきゃなと強く思いました。初回の授業から、めちゃくちゃ感動しっぱなしであった。内容としては、村上春樹の「パン屋再襲撃」を読むというものだったのだが、文学の世界の深さと自分の矮小さを非常に切実に実感しました。僕はクソ雑魚です。
久しぶりに他科目の授業を受けると、我が身を振り返っての反省点が多かった。例えば僕は、「いろんな人の見識を聞こう」という観点で、ネットの言説をあれこれチェックしたりしていた。togetterやらブクマやら。だが、その前にまず、小説を読むべきであったと反省しました。あっちの方が、より深い生き方なり人間観なりが出ているため。我々はネットの有象無象より、小説を読むべきですよ本当に。
そして他にも、自分は多少、小説を「わかる」方だと思っていたが、その実かなり浅い見方をしていたことを反省した。本場の文学教授とか、すっっっげえ深い見方をしているんだなあって、切に実感しました。これについては、よい教授に出会えたというのもあるかもしれないけど、ともかく、文学という世界には無限の宇宙が広がっていて、ネットだとかなんだとかを見る前に、まずはもっとそこに向き合うべきだということを実感しました。本当に。
というわけで近頃は、「もっと小説を読まねばなあ、、、」ということを反省しております。ちょうど、お風呂で読むKindle本にも困っていたので、これからは小説を読もうと思います。
おすすめの小説について
で、みなさんのおすすめの小説について教えてほしいなって思ってます。
僕は長い間、小説から距離を取っていたので、あんまり読みたい本とかが思い浮かばない。強いて言うなら「82年生まれ キム・ジヨン」とかなのだが、これも結局は、研究上の関心が強い。この本、フェミニズム文学とか言われているので、読んでおくべきなんだろうなあとか。こういうのは文学様に対して不純な態度であるので、土下座して謝るべきだと思う。
他にも、カズオ・イシグロの「忘れられた巨人」とかも読んでみたいけど、、、これもぶっちゃけ、昔読んだ学術書で紹介されていたから、というところが大きい。そういうの抜きにして、今はもっと、純粋に文学を楽しみたいのである。今の僕は!
というわけで、Googleフォームを作ってみました。
あなたのおすすめの小説について、↑からいくらでも回答してください、というものである。 まあヤジとかも歓迎です。本当に誰でも、なんか書いてくれれば嬉しいです。
ただ、いきなりおすすめを教えろといわれても難しいかもしれない。その点で、一応僕の好みの小説についても、一通り書いておこうと思います。
僕の好きな小説たち
私、めちゃくちゃ読書家というわけではないけれど、それでもいろいろ読んできた。その中での、個人的ベストたちを紹介します。
太宰治
太宰はやっぱり、よいね。よいっす。高校時代にハマったけれど、やっぱりこの作家は素晴らしいと思います。個人的には「斜陽」が一番好きで、他には「葉」「猿面冠者」「駆込み訴え」辺りが好きですね。太宰といえば「人間失格」みたいなところあるけど、やっぱり斜陽が一番ですよ。
けれども、私たちは、古い道徳とどこまでも争い、太陽のように生きるつもりです
この一文だけでも、思い返すと泣けてくる。「人は恋と革命のために生まれてきた」とかもね。
豊かな心を取り戻すため、太宰、もう一回読み返そうと思いました。
尾崎翠
尾崎翠の小説は、馬鹿っぽくてめちゃくちゃ好きです。特に好きなのが、「第七官界彷徨」と「地下室アントンの一夜」。
私はひとつ、人間の第七官に響くような詩を書いてやりましょう。
第七官界っていうのが意味不明だし、地下室アントンっていうのも訳分からん。ただ、読んでいるときは面白いし、読後感がやたら爽やかなんですよ。「読んでいる人を楽しませよう」精神に溢れていると思います。
文体としては森見登美彦に若干似てる気がする。が、明治時代からこれをやっていたのがすごい。多くの人に勧めたい一冊です(僕のバイト先の先輩で尾崎翠を研究してた人がいたが、結局会話することなく卒業されてしまった。非常にもったいない、、、)
「失恋したら風に吹かれろ。風は悲しい心を洗ってくれるだろう」
書きながらちょーっとだけ読み返してみたけど、やっぱりよい小説だと思う。なにより読んでいて楽しい。読んでいて愉快な文章は、それだけで幸福である。幸福ですよ!!
三木卓
三木卓の小説は、エグい。「男性特有の苦悩」、その一点を深掘りしている作家だと思う。個人的には特に「炎に追われて」がおすすめである(「巣の中で」も素晴らしいけど)。↑のミッドワイフの家に収録されているので、読むべし。最初に読んだのは高3のときと思うが、今でもなお僕が影響を受け続けている作品である。
これがわたしがしなければならなかったことだ。それを今実現した。
どうでもいいけど、昔の僕は、小説や新書で気に入ったフレーズをツイートしていたんですね。わざわざアカウントを作って。そのアカウントが、今になって非常に役立っています。「ああ、昔の僕は、こういうことで感動していたんだなあ」とか、「割といいところ拾ってるじゃん」的な。せっかくなのでここでも紹介しておこう。気に入ったフレーズをツイートしてたアカウントである。
私が苦しんでいた昨夜も、それは暗い空間を突進していた。酸素のないオーロラの発生する酷薄な空間だ。すごい。わたしはそう思った。
— だっだだ (@insane00at) August 22, 2016
こんな感じ。
他にも色々言っていて、見返すと面白い。
わたしはただ、目をさまして、ふと昨夜の、自分がもう愛していないと思っていたお前、お前の方でももう私を愛してはいまいと思っていたお前、そのお前との思いがけない、不思議な愛撫を思い出して、そのためにのみ私は泣いていたのだ……
— だっだだ (@insane00at) October 26, 2016
↑がその一例。これは多分、堀辰雄「麦藁帽子」からの引用かな。堀辰雄も、よいよね。恋愛の切なさが伝わってきます。
ナボコフ
ナボコフの「ロリータ」は、やっぱり傑作です。英文学(露文学?)に詳しくない僕でも、ちゃんと感動できたし、もし詳しかったならより細かいネタまで拾えるし。これは本当に、4回も5回も読んだ作品です。
「ロリコン」の語源にもなったこの作品。結局は「小児性愛」というところよりも、「いびつな愛」というところに焦点が置かれていると思います。ゆがんだ愛情、決して叶わない欲望、云々.....
そういえば僕は最近、「恋心を抱くこと、それそのものが罪」という考えをしているのですが(恋は罪悪と「こころ」の先生も言っていた)、その原点はここに見られるかもしれない。もう一回、読み返すベき作品かもなあ。
色褪せて卑しめられ、他人の子供でお腹が大きくなってはいても、やはりまだ灰色の瞳をして、まだ煤のように黒い睫毛で、まだ鳶色でアーモンド色の、まだカルメンシータ、まだ私のものなのだ。
私はおまえを愛した。私は五本足の怪物のくせに、おまえを愛したのだ。なるほど私はあさましく、獣じみて、下劣で、何とでも言ってくれればいいけれども、それでも私はおまえを愛していたのだ、愛していたのだ!
— だっだだ (@insane00at) June 6, 2017
ちなみに、以前海外に行ったときに、ばっちり原書も買ってきました。それぐらいには好き。
その他
他に本棚にあった本の一部を、雑に紹介していきます。
夢野久作も、もうちょっとちゃんと読みたいと思っています。
向田邦子、マジでいいですよね。本当に好きです。今日挙げた中では、一番人に勧めたい作品かもしれない。特に「思い出トランプ」は、さくっと読めるわりに、めちゃくちゃ深いので。
あんまり、現代の作家で好きな人がいないんですが、強いて言うなら重松清な気がします。「エイジ」「ナイフ」は、中学の時に読んで、めちゃくちゃ衝撃が大きかった。今度読み返そう。
他には、京極夏彦とか好きでした。あんまり人気ないけど、「覗き小平次」が好きです。
織田作之助・坂口安吾も好きなんだけど、ジャンルとしては太宰と被ってしまうからね。いわゆる、デカダンス。
そんな感じで
す。やっぱり、古い小説家に偏っているというか、根本に太宰があるような気がします。まあ、太宰は偉大だからしょうがない(尊敬はできないけど、、、)。
個人的には、人間の弱さ・しょうもなさみたいなところに焦点を当てた作品が好きです。立派になりたいけど、そうはなりきれない人間像というか、、、 そもそも、そうした弱さを描けるというのが、文学の強みな気がします。たとえ醜く浅ましくあったとしても、それが真性の人間の姿というか、、、
も少し弱くなれ。文学者ならば弱くなれ。
— だっだだ (@insane00at) May 4, 2017
昔の僕もそう言っている。これは多分、太宰の「如我是門」からの引用かな。「弱さ」こそが文学の証な気がします。
そうはいっても、やっぱりいろんな小説を読みたいとは思っています。ので、その辺に関しては遠慮無く、おすすめの小説を教えてください。「人の弱さ」的なところが出ていると嬉しいけど、そうでなくても歓迎です。あと、上で挙がってない作家については「読んでない」と見做してもらって大丈夫です。本棚にあったのは一通り紹介したので。
ちなみに、ここで挙げられた小説は、なんらかの手段で全部ちゃんと読もうと思います。そしてできるだけ感想も書きます。ので、みなさんどんどん書いていってください。これは本当に遠慮なく、マジで。
今日はそんな感じ。
文学の授業に出て、「小説を読まねば」と思ったこの頃でした。回答よろしくお願いします。「影響を受けた一冊」であるほど嬉しいです。